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仲間
十一月
ーーーーーー
隣に座ったトマスがアイラの手を取り話しかけた。
「ここには誰も近付かない。安心して話して欲しい」
トマスとアルフレッドは信用できる。でも話して良いのだろうか? もしウィルソンが、ストックトン侯爵の部屋に忍び込んで捕まっていたら? 自分の屋敷で犯罪行為が行われた事を、アルフレッドはどう思うだろう。
「何でもありません。思ったより疲れていたみたいです。お部屋に下がらせていただいても宜しいでしょうか?」
「私達には言い難い事・・。そう言えば、今日の午後ストックトン侯爵宛に急ぎの手紙が届いたね」
思わずアルフレッドの顔を見たアイラは真っ青になった。アルフレッドは瞬きもせず、アイラを見つめている。その眼光の鋭さに、
「申し訳ありません、そろそろお部屋に」
立ち上がろうとするが、トマスが手を握ったまま離してくれない。
「トマス様、あの」
「アイラは今日は終日私達と一緒にいた。とすると、ウィルソンか」
アルフレッドが呟く。
「何のことでしょうか。仰っていることが分かりません」
「ウィルソンが、手紙の内容を調べに行って戻ってこない」
アルフレッドはまるで知っていたかのように断定する。何も言えなくなったアイラに、
「ストックトン侯爵が何か企んでる事は知っている。それも随分前から」
「アルフレッド様!」
「彼の領地経営は、かなり前からうまく行ってなくてね。いくつかの新規事業に手を出しては、失敗を繰り返している。そこに去年の冷害がトドメをさしたようだ。もちろん一般には知られていないがね」
「侯爵の領地とアイラの領地は、地理的にとてもよく似ているって気付いてるかい?」
トマスが話す。
「侯爵は、領地に新規事業を誘致しようとしては、失敗を繰り返している。前伯爵はそれと同じ事をして成功している。順番は逆だけどね」
「・・お父様が成功させたのを見て、侯爵が真似を?」
「王都までの移動距離、気候や特産品。全てがとても似ている。前伯爵は、農産物や羊の改良と王都までの街道の整備。販売ルートの確保と工場立ち上げ。全てを成功させ、多くの貴族が賞賛している」
「デイビッドとの婚姻が、何故伯爵家にきたか知っているかい?」
アイラは黙って首を振る。
「亡くなられた侯爵夫人はとても素晴らしい方でね、アイラの母上とはとても仲が良かったんだ。アイラが生まれたばかりの頃から、侯爵夫人からデイビッドとの婚約の話を持ち込まれていたんだが、お父上はなんだかんだと話をはぐらかしておられた」
「格上の貴族からの話だからね、断り切れなくなったのもあったんだろう」
「それでお父上は、爵位その他の全てをアイラに継がせる条件で縁談を受けた」
「お父様は、侯爵やデイビッドを信じておられなかったのですね」
「ウィルソンはどこにいる?」
「分かりません。帰ってきたならソフィアが連絡をくれているはずです」
「ちっ」アルフレッドが舌打ちをする。
「ヘマをするなんて、ウィルソンらしくない」
「ウィルソンは今、私とソフィア以外誰も信用できないんです」
「使用人の中に敵がいると言うことか」
「7月に屋敷に侵入した者がいて、使用人の誰かが手を貸したとしか」
「お父上達の事故の事を調べているんだろう?」
「デイビッドが誰かを使って、馬車に細工した事は分かっています。先日帰って来た時、執務室から彼が盗んだメモが、ストックトン侯爵に渡った事も分かりました」
「危険を冒してまで、侯爵の手紙を調べに行ったのは何故?」
「馬車に細工をする為にデイビッドが雇ったのと同じ男が、侯爵にメモを渡した事が分かったのです。多分ウィルソンは、手紙の内容によっては侯爵がその男と、接触する可能性もあると考えたのではないかと」
「その男と言う事は、単独犯だと考えているんだね。その男に関して何か分かっている事は?」
「茶髪でグレーの目、小柄で猫背。その男に会った人は皆、気持ち悪い男だったと言っています」
アルフレッドは、手の中のワイングラスを見つめて黙り込んでいる。
「まずはウィルソンだね。彼を見つけてお仕置きをしなければ」
「?」
「そうだね。アイラに心配をかけたんだから」
「あの、ウィルソンが無事であればそれで十分なので」
「それでは甘すぎる。今後の事を考えて、厳しくした方がいい。それと屋敷に手紙を届けに来た者について調べてみよう。アイラはもう休みなさい。ウィルソンは必ず無事に連れてくるから」
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隣に座ったトマスがアイラの手を取り話しかけた。
「ここには誰も近付かない。安心して話して欲しい」
トマスとアルフレッドは信用できる。でも話して良いのだろうか? もしウィルソンが、ストックトン侯爵の部屋に忍び込んで捕まっていたら? 自分の屋敷で犯罪行為が行われた事を、アルフレッドはどう思うだろう。
「何でもありません。思ったより疲れていたみたいです。お部屋に下がらせていただいても宜しいでしょうか?」
「私達には言い難い事・・。そう言えば、今日の午後ストックトン侯爵宛に急ぎの手紙が届いたね」
思わずアルフレッドの顔を見たアイラは真っ青になった。アルフレッドは瞬きもせず、アイラを見つめている。その眼光の鋭さに、
「申し訳ありません、そろそろお部屋に」
立ち上がろうとするが、トマスが手を握ったまま離してくれない。
「トマス様、あの」
「アイラは今日は終日私達と一緒にいた。とすると、ウィルソンか」
アルフレッドが呟く。
「何のことでしょうか。仰っていることが分かりません」
「ウィルソンが、手紙の内容を調べに行って戻ってこない」
アルフレッドはまるで知っていたかのように断定する。何も言えなくなったアイラに、
「ストックトン侯爵が何か企んでる事は知っている。それも随分前から」
「アルフレッド様!」
「彼の領地経営は、かなり前からうまく行ってなくてね。いくつかの新規事業に手を出しては、失敗を繰り返している。そこに去年の冷害がトドメをさしたようだ。もちろん一般には知られていないがね」
「侯爵の領地とアイラの領地は、地理的にとてもよく似ているって気付いてるかい?」
トマスが話す。
「侯爵は、領地に新規事業を誘致しようとしては、失敗を繰り返している。前伯爵はそれと同じ事をして成功している。順番は逆だけどね」
「・・お父様が成功させたのを見て、侯爵が真似を?」
「王都までの移動距離、気候や特産品。全てがとても似ている。前伯爵は、農産物や羊の改良と王都までの街道の整備。販売ルートの確保と工場立ち上げ。全てを成功させ、多くの貴族が賞賛している」
「デイビッドとの婚姻が、何故伯爵家にきたか知っているかい?」
アイラは黙って首を振る。
「亡くなられた侯爵夫人はとても素晴らしい方でね、アイラの母上とはとても仲が良かったんだ。アイラが生まれたばかりの頃から、侯爵夫人からデイビッドとの婚約の話を持ち込まれていたんだが、お父上はなんだかんだと話をはぐらかしておられた」
「格上の貴族からの話だからね、断り切れなくなったのもあったんだろう」
「それでお父上は、爵位その他の全てをアイラに継がせる条件で縁談を受けた」
「お父様は、侯爵やデイビッドを信じておられなかったのですね」
「ウィルソンはどこにいる?」
「分かりません。帰ってきたならソフィアが連絡をくれているはずです」
「ちっ」アルフレッドが舌打ちをする。
「ヘマをするなんて、ウィルソンらしくない」
「ウィルソンは今、私とソフィア以外誰も信用できないんです」
「使用人の中に敵がいると言うことか」
「7月に屋敷に侵入した者がいて、使用人の誰かが手を貸したとしか」
「お父上達の事故の事を調べているんだろう?」
「デイビッドが誰かを使って、馬車に細工した事は分かっています。先日帰って来た時、執務室から彼が盗んだメモが、ストックトン侯爵に渡った事も分かりました」
「危険を冒してまで、侯爵の手紙を調べに行ったのは何故?」
「馬車に細工をする為にデイビッドが雇ったのと同じ男が、侯爵にメモを渡した事が分かったのです。多分ウィルソンは、手紙の内容によっては侯爵がその男と、接触する可能性もあると考えたのではないかと」
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「茶髪でグレーの目、小柄で猫背。その男に会った人は皆、気持ち悪い男だったと言っています」
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「?」
「そうだね。アイラに心配をかけたんだから」
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