【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

との

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怪我

十一月

ーーーーーー

 部屋に戻ったが、やはりウィルソンは戻っていない。
「ソフィア、ヘンリーとエドムントはどうしてる?」
「エドムントは待機しています。ヘンリーは、手紙を届けに来た者を追っています」

「アルフレッド様がウィルソンを見つけて下さるって」
「ジファール侯爵様なら、屋敷内の事もこの辺りの様子もお詳しいですね。きっとウィルソンを見つけてくださいます」


 寝巻きの上にナイトガウンを羽織り、部屋の中を彷徨くアイラ。
「アイラ様、ちょっと厨房に行ってまいりますね」
「?」
「屋敷内で何かあれば、使用人たちが噂話をしていると思うので、ちょっと様子を見てきます」
「気を付けてね。絶対に無理はしないで」

 ソフィアが出ていくと、部屋の静けさがアイラの不安をますます掻き立てる。暫くしてソフィアが戻って来たが、特に変わった様子は見られなかったようだった。その後も何も変わりなく、夜がふけていった。


 明け方近くに、テラスの方で小さな音がした。アイラが慌てて駆け寄ろうとすると、ソフィアが止めた。テラスのガラスを叩く音がする。そっと近づいてカーテンの隙間から覗くと、男が3人立っている。

「ウィルソン!」

 急いで窓を開けると、男達が部屋に入ってきた。ウィルソンはヘンリーの肩にもたれかかり、1人では立っていられないようだ。顔色も酷く青褪めていて、洋服があちこち破れ泥だらけになっている。

「怪我をしてるの? ヘンリー、ウィルソンをベッドに寝かせて。ソフィア、タオルとお湯を」
「アイラ、落ち着いて。ウィルソンは大丈夫だから」
「アルフレッド様、一体何が?」


「ウィルソンの手当てをしてから話そう。それ程大きな傷ではないはずだし、ウィルソンは頑丈だから大丈夫。直ぐに起き上がって仕事をしたがるよ。しかし、この歳になって木登りをするとは思わなかったな」
「私1人ではウィルソンを担ぎ上げられなくて、ジファール侯爵様が手伝って下さいました」
「テラスの横にオークの大木があってラッキーだったのか、侵入の危険を考えるべきなのか悩むところだね」

 ヘンリーがウィルソンの上着とシャツを破り、二の腕の切り傷にタオルを当て止血する。ソフィアが濡らしたタオルで顔や手を拭いていく。

「ヘンリー、私の部屋はわかるかな? 従僕のジャスティンに、ウイスキーと針と糸をもらって来てくれ。縫った方が良さそうだ」

 アイラがヘンリーと交代した。


 アルフレッドがウィルソンを覗き込んで、
「ウィルソン、狸寝入りか? 起きているんだろう?」
「・・」
 青褪めていたウィルソンの顔が、所々赤くなっていく。
「ウィルソン?」
「アイラ、ウィルソンの傷口をぎゅっと握りしめてやるんだ」
「ジファール侯爵は相変わらず人が悪いですね」
「狸寝入りして、アイラに看病してもらおうとするお前が悪い」
「羞恥心ってご存知ですか?」
「アイラに心配をかけた挙句、怪我をして担ぎ込まれるとか。情けないの間違いだろう」

「アイラ様、申し訳ありません。油断してしまいました」
「帰って来てくれて良かったです。アルフレッド様、ありがとうございます」

 ヘンリーが戻ってきた。ウィルソンにウイスキーを飲ませて、傷を消毒する。アイラが針に糸を通して、
「かなり痛いと思うので口にタオルを」
「アイラ様が縫うのですか?」
「ええ、覚悟してくださいね」
「ウィルソン、少しくらい男らしい所を見せろよ」

 ウィルソンは眉間に皺を寄せて冷や汗をかきながら、呻き声ひとつ上げず最後まで耐え切った。もう一度ウイスキーを飲ませると、ウィルソンはうつらうつらしはじめた。

「ヘンリー、何があったの?」
「今日の午後、ストックトン侯爵に手紙を届けに来た男を尾行しました。奴は街道を暫く走った後、隣町の宿屋に入って酒を飲みはじめ、夜まで動きませんでした。9時過ぎくらいに出てきた男は、ここに戻って来て屋敷の脇の雑木林に入って行きました。
暫くしてストックトン侯爵が来たのですが、男の話を聞いた侯爵は酷く怒っているようでした。そこへウィルソンが突然現れて、2人に声をかけたんです」

「「何て無茶な事を!」」

「ウィルソンは手紙を持ってきた男に近づいて行って、もみ合いになって怪我を」

「信じられない。ウィルソン、私にはいつも慎重にしろって言う癖に」
「やっぱりさっき、傷を握りしめてやればよかったんです。無謀にも程があります」
「ソフィア、そいつは勘弁してくれ」
「もう一針、余分に縫うんだったわ」
「アイラ様・・」


「手紙の男は、間違いなくリューベックの男でした。ストックトン侯爵と一緒にいる時に、あいつを捕まえられたらと。怪我をしたのは失敗ですが、顔ははっきり確認しました」

「ストックトン侯爵は、手紙を読んだ後、かなり機嫌が悪くなったようだ。相当気に入らない内容だったみたいで、くしゃくしゃに丸めて灰皿で燃やしたそうだ」

「シンディが私と接触したと書かれていました」
「ウィルソン! 手紙の中身を知ってるの?」
「シンディがウィルソンに接触。何かを手渡していた。10時に裏の雑木林と書いてありました」
「何で途中で戻ってこなかったの? アイラ様あんたの事心配して大変だったんだから」
「そこは・・ちょっとへまをして、侯爵の部屋から出られなくなった」

「多分ストックトン侯爵は、夜のうちに出発するだろう。念の為うちのものに後をつけさせる。ちなみに、男の方は既に後をつけさせている」
感想 10

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