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理由
十二月
ーーーーーー
暖炉の火が赤々と燃えている。アイラは暖炉の前に座り込んで、じっと火を見つめていた。
デイビッドは結局、何も話さず帰って行った。今回はこれでいい。今頃デイビッドは懸命に作戦を練っている筈だから。
デイビッドはかなり切羽詰まっている様だった。多分近いうちにまたやってくるだろう。その時は話を聞き出せる。
「アイラ様、まだお休みになられないのですか?」
「シンディとブリジットは見つかった?」
「はい、父親の男爵の所に戻っていました。護衛をつけて、ロンメルの保養地に行かせました」
黙ったまま暖炉の火を見つめていたアイラが、小声で話しかけた。
「ねぇウィルソン、侯爵は何が狙いなのかしら」
「デイビッドとの結婚の条件が、爵位その他全てを私が継ぐ事。お父様からそう言われても、それでも結婚させたかったのよね。何でかしら? 侯爵にとってのメリットって何?」
「ジファール侯爵の話では、ストックトン侯爵は資金繰りがかなり厳しいと。調査員の話でも同じでした。シンディともう一度話してみましたが、結婚した当初は既に苦しくなっていたみたいです。侯爵は隠していたそうですが、シンディはこの結婚は失敗だったと思ったと。調査員には侯爵の過去を、もう少し遡って調べる様に言ってあります」
「婚約した頃は順調だったとしたら?」
「想像でしかありませんが、後見人狙いと言う可能性があるのではないでしょうか」
「後見人? つまりデイビッドと私の子供の後見人狙い?」
「アイラ様の後見人も含めてです。女性で授爵した方はあまりおられませんから、アイラ様では上手くいかないと考えていたのではないでしょうか」
「確かに、女性が爵位を受け継いだ場合は、必ずランド・スチュワードを置いているわね」
「はい。エジャートン家の様に、女領主様が執務に携わっている家はありません」
「だから、全てを私が受け継いでも構わなかったのね。知ってるかしら、デイビッドは計算が苦手なのよ。侯爵からしたら、領地経営の出来ない息子が継いでも私が継いでも同じだった」
「出来の悪い息子か、仕事の出来ない義娘か。ところが侯爵の予想に反して、アイラ様は領地をしっかりと管理されています」
「各地の代官とか優秀な人が沢山いるもの。お父様のお陰ね」
「大旦那様は先を見通す目をお持ちでした」
「ウィルソンがアルフレッド様の従者をしたのも?」
「・・それは」
「ウィルソン、お願い」
「・・私が志願しました。当時、大旦那様はギータかヘンリーを従者として、ジファール侯爵に鍛えてもらうおつもりでした」
ウィルソンの顔が赤く見えるのは、暖炉の火のせいだろうか?
「大旦那様に・・アイラ様を護るのは私だと、他の誰にも譲らないと言いました。大旦那様はお前には執事の仕事があるからと、随分渋っておいででした。でも、もし駄目なら」
「もし駄目なら?」
「アイラ様を連れて逃げると」
多分アイラの顔も真っ赤になっているだろう。
「ウィルソン、私」
「私の勝手な想いなので、どうか忘れてください」
「知っていると思うけど、お父様達の事とか全てが明らかになったら離婚するつもりなの。白い結婚だから、教会に行ったら直ぐ離婚できるし」
「アイラ様には、もっと相応しい方がいらっしゃいます。周りの全ての人がそう思っています」
「でも離婚したら傷物って言われるのよ? 誰も相手になんてしてくれないわ」
「ソフィアの言葉を借りたら、馬の先にぶら下げた人参より危険だそうですよ」
「ふふっ、何それ」
「離婚した途端、大勢の求婚者が群がるからです」
「そうなったらウィルソンはどうするの?」
「全部の求婚者を徹底的に調べます。次は必ず、アイラ様を幸せにしてくださる方を見つけます」
「先ずは、犯人を捕まえなくちゃ。そうしたらやっとデイビッドから解放される」
「はい、必ず」
「傷が治るまで注意してね。今度無茶をしたら、ソフィアと2人でお尻を引っ叩きます。覚えておいてね」
「ご心配をおかけして、申し訳ありません」
「本当に、次にあんな事があったら耐えられないと思うわ」
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暖炉の火が赤々と燃えている。アイラは暖炉の前に座り込んで、じっと火を見つめていた。
デイビッドは結局、何も話さず帰って行った。今回はこれでいい。今頃デイビッドは懸命に作戦を練っている筈だから。
デイビッドはかなり切羽詰まっている様だった。多分近いうちにまたやってくるだろう。その時は話を聞き出せる。
「アイラ様、まだお休みになられないのですか?」
「シンディとブリジットは見つかった?」
「はい、父親の男爵の所に戻っていました。護衛をつけて、ロンメルの保養地に行かせました」
黙ったまま暖炉の火を見つめていたアイラが、小声で話しかけた。
「ねぇウィルソン、侯爵は何が狙いなのかしら」
「デイビッドとの結婚の条件が、爵位その他全てを私が継ぐ事。お父様からそう言われても、それでも結婚させたかったのよね。何でかしら? 侯爵にとってのメリットって何?」
「ジファール侯爵の話では、ストックトン侯爵は資金繰りがかなり厳しいと。調査員の話でも同じでした。シンディともう一度話してみましたが、結婚した当初は既に苦しくなっていたみたいです。侯爵は隠していたそうですが、シンディはこの結婚は失敗だったと思ったと。調査員には侯爵の過去を、もう少し遡って調べる様に言ってあります」
「婚約した頃は順調だったとしたら?」
「想像でしかありませんが、後見人狙いと言う可能性があるのではないでしょうか」
「後見人? つまりデイビッドと私の子供の後見人狙い?」
「アイラ様の後見人も含めてです。女性で授爵した方はあまりおられませんから、アイラ様では上手くいかないと考えていたのではないでしょうか」
「確かに、女性が爵位を受け継いだ場合は、必ずランド・スチュワードを置いているわね」
「はい。エジャートン家の様に、女領主様が執務に携わっている家はありません」
「だから、全てを私が受け継いでも構わなかったのね。知ってるかしら、デイビッドは計算が苦手なのよ。侯爵からしたら、領地経営の出来ない息子が継いでも私が継いでも同じだった」
「出来の悪い息子か、仕事の出来ない義娘か。ところが侯爵の予想に反して、アイラ様は領地をしっかりと管理されています」
「各地の代官とか優秀な人が沢山いるもの。お父様のお陰ね」
「大旦那様は先を見通す目をお持ちでした」
「ウィルソンがアルフレッド様の従者をしたのも?」
「・・それは」
「ウィルソン、お願い」
「・・私が志願しました。当時、大旦那様はギータかヘンリーを従者として、ジファール侯爵に鍛えてもらうおつもりでした」
ウィルソンの顔が赤く見えるのは、暖炉の火のせいだろうか?
「大旦那様に・・アイラ様を護るのは私だと、他の誰にも譲らないと言いました。大旦那様はお前には執事の仕事があるからと、随分渋っておいででした。でも、もし駄目なら」
「もし駄目なら?」
「アイラ様を連れて逃げると」
多分アイラの顔も真っ赤になっているだろう。
「ウィルソン、私」
「私の勝手な想いなので、どうか忘れてください」
「知っていると思うけど、お父様達の事とか全てが明らかになったら離婚するつもりなの。白い結婚だから、教会に行ったら直ぐ離婚できるし」
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「でも離婚したら傷物って言われるのよ? 誰も相手になんてしてくれないわ」
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「はい、必ず」
「傷が治るまで注意してね。今度無茶をしたら、ソフィアと2人でお尻を引っ叩きます。覚えておいてね」
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