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ビクター
十二月 一部暴力シーンがあります
ーーーーーー
宿の中で大きな音がした。その音を合図に、2人の男が宿屋の入り口を封鎖した。入り口横の窓にも男が張り付く。
「はじまったようだね」
「あの人達、全然気付きませんでした。ごく普通の街の方だと」
「後で彼らに言っておこう。偽装はとても上手くいっていたようだって」
ビクターが暴れているのか、宿の中から大きな音が何度も聞こえて来る。
「そっちだ! 窓から飛び降りやがった」
「気をつけろ! フレイルを持ってるぞ」
宿の右手から声が聞こえた。宿の周りにいた男達が一斉に走り出した。
後退りする男達の輪の中に、ビクターがいた。太い棒と棘のついた鉄球が鎖で繋がれた武器を振り回している。アイラも見たことがある、昔脱穀用に使われていた農具だ。
ビクターはフレイルを両手で振り回し、周りの男達を威嚇しながら少しずつ表通りに出てきた。
「不味いな、これほど大勢だと銃が使えん」
宿屋の入り口から男達が走り出してきて、ビクターを十重二十重に取り囲む。ウィルソンが輪の中に走り込んでいくのが見えた。
「どけぇ、退きやがれ。邪魔すんな、おらぁ」
ビクターが威嚇する。
銃が使えない男達は皆、ロングソードを構えているがビクターに近寄れずにいる。
アイラが馬車の反対側のドアを開けて、屋根に登り叫んだ。
「ビクター、こっちよ」
突然の女の叫び声に、思わずビクターと周りの男達が馬車の方を見た時、
「ぐぇっ」
複数の男がビクターの隙を突いて斬りかかった。
「くっそぉ、てめぇ」
ビクターは腹や足を何ヶ所も切られ、フレイルを振り回せなくなった。フレイルを投げ捨てて、ナイフを取り出し暴れようとしたが、取り押さえられ拘束された。
屋根から降りて、馬車の中に戻った。ソフィアの溜息が聞こえる。
「アイラ様、やっぱり大人しくは出来ませんでしたね」
「はっはっは、帰ったらウィルソンに大目玉をくらいそうだ」
アルフレッドの屋敷には、デイビッドを収監しているため、ビクターはグラフトン公爵邸の地下牢に収監された。ストックトン侯爵を捕まえるまでは、誰も信用出来ない。
アイラ達は屋敷に戻ったが、ウィルソンはグラフトン公爵邸へビクターを連行して行った。アイラは応接室で、アルフレッドと一緒に軽食を取った。
「屋根に登るとは思わなかった。アイラといると奇想天外の出来事ばかりで、毎日が楽しそうだ。ソフィアやウィルソンが羨ましい」
「あの時は必死だったので、何も考えてなくて。またウィルソンが、青筋立てて怒る姿が目に浮かびます」
アイラはチラチラとソフィアを見ている。
「お助けするのは無理ですよ。ウィルソンが帰ってきたら、私は部屋に下がらせて頂きます」
応接室のドアが勢いよく開かれ、壁にぶつかって派手な音を立てた。アルフレッドはいつも通りの優雅な仕草でティーカップを置き、ソフィアは静かに部屋の隅に下がる。
「おかえりなさい、ウィルソン。ビクターは無事に収監できましたか? トマス様はいらっしゃった?」
「・・アイラ様」
青筋を立てたウィルソンが、仁王立ちで両手を握ったり開いたりしている。余りの怒りに言葉が続かなくなっているようだ。
「アイラ様」
「何かしら?」
「・・」
「ウィルソン、ごめんなさい。大人しくしてるつもりだったのよ。本当に」
「・・」
「その、気がついたら体が動いていたと言うか」
「・・」
「今回は本当に何もしないって決めてたの。でもほら、ウィルソンが宿から駆け出してきて、輪の中に入っていった途端ビクターの怒鳴り声が聞こえて。気がついたら屋根の上で叫んでたの」
「・・」
「ついうっかり」
「ぷっ「はっはっは」」
「アイラ、途中まで上手に謝れていたが、最後で失敗だな」
ウィルソンがその場にしゃがみ込んで頭を下げた。
「はぁ、俺いつか禿げる。多分間違いない」
アイラはウィルソンの前にしゃがみ込んで、顔を覗き込んだ。
「ウィルソン? 怪我はありませんか?」
「大丈夫です。誰かさんのお陰でビクターに隙ができたので」
アイラが目を輝かせる。
「良かった。役に立ったんですね」
ウィルソンがジト目でアイラを見た。
「ごめんなさい。何でもないわ」
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宿の中で大きな音がした。その音を合図に、2人の男が宿屋の入り口を封鎖した。入り口横の窓にも男が張り付く。
「はじまったようだね」
「あの人達、全然気付きませんでした。ごく普通の街の方だと」
「後で彼らに言っておこう。偽装はとても上手くいっていたようだって」
ビクターが暴れているのか、宿の中から大きな音が何度も聞こえて来る。
「そっちだ! 窓から飛び降りやがった」
「気をつけろ! フレイルを持ってるぞ」
宿の右手から声が聞こえた。宿の周りにいた男達が一斉に走り出した。
後退りする男達の輪の中に、ビクターがいた。太い棒と棘のついた鉄球が鎖で繋がれた武器を振り回している。アイラも見たことがある、昔脱穀用に使われていた農具だ。
ビクターはフレイルを両手で振り回し、周りの男達を威嚇しながら少しずつ表通りに出てきた。
「不味いな、これほど大勢だと銃が使えん」
宿屋の入り口から男達が走り出してきて、ビクターを十重二十重に取り囲む。ウィルソンが輪の中に走り込んでいくのが見えた。
「どけぇ、退きやがれ。邪魔すんな、おらぁ」
ビクターが威嚇する。
銃が使えない男達は皆、ロングソードを構えているがビクターに近寄れずにいる。
アイラが馬車の反対側のドアを開けて、屋根に登り叫んだ。
「ビクター、こっちよ」
突然の女の叫び声に、思わずビクターと周りの男達が馬車の方を見た時、
「ぐぇっ」
複数の男がビクターの隙を突いて斬りかかった。
「くっそぉ、てめぇ」
ビクターは腹や足を何ヶ所も切られ、フレイルを振り回せなくなった。フレイルを投げ捨てて、ナイフを取り出し暴れようとしたが、取り押さえられ拘束された。
屋根から降りて、馬車の中に戻った。ソフィアの溜息が聞こえる。
「アイラ様、やっぱり大人しくは出来ませんでしたね」
「はっはっは、帰ったらウィルソンに大目玉をくらいそうだ」
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アイラ達は屋敷に戻ったが、ウィルソンはグラフトン公爵邸へビクターを連行して行った。アイラは応接室で、アルフレッドと一緒に軽食を取った。
「屋根に登るとは思わなかった。アイラといると奇想天外の出来事ばかりで、毎日が楽しそうだ。ソフィアやウィルソンが羨ましい」
「あの時は必死だったので、何も考えてなくて。またウィルソンが、青筋立てて怒る姿が目に浮かびます」
アイラはチラチラとソフィアを見ている。
「お助けするのは無理ですよ。ウィルソンが帰ってきたら、私は部屋に下がらせて頂きます」
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「おかえりなさい、ウィルソン。ビクターは無事に収監できましたか? トマス様はいらっしゃった?」
「・・アイラ様」
青筋を立てたウィルソンが、仁王立ちで両手を握ったり開いたりしている。余りの怒りに言葉が続かなくなっているようだ。
「アイラ様」
「何かしら?」
「・・」
「ウィルソン、ごめんなさい。大人しくしてるつもりだったのよ。本当に」
「・・」
「その、気がついたら体が動いていたと言うか」
「・・」
「今回は本当に何もしないって決めてたの。でもほら、ウィルソンが宿から駆け出してきて、輪の中に入っていった途端ビクターの怒鳴り声が聞こえて。気がついたら屋根の上で叫んでたの」
「・・」
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