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クリスマス
十二月
ーーーーーー
教会から一番近いと、トマスが全員を屋敷に誘った。夜10時近くになっており、お腹も空いている。
グラフトン公爵邸に着くと、直ぐに食堂に案内された。食堂は、白漆喰の壁に巨大なタペストリーが飾られていた。夜会に訪れた際の図案とは異なり、4枚のタペストリーで一つの物語になっている。
アイラはタペストリーに近付き、夢中でそれを眺めていた。
「気に入ったかい? これはこの屋敷を建てた時、陛下からお祝いにと賜った物でね。亡くなられた母君が、婚礼の際に公国からお持ちになられた貴重な品なんだ」
「とても素晴らしいです。公国は織物が盛んだと聞きます。とても優秀な染物師や織工が大勢いて、技を競い合っているとか」
「我が国でも頑張っている様だが、まだ公国には及ばないからね」
ホットワインと様々な料理が、巨大なテーブルに並べられた。豚のロースト、孔雀やホロホロ鳥、アスパラガスのサラダと数種類のリンゴのデザート。
「凄いご馳走ですね」
「アルフレッドの屋敷を出る時に、連絡しておいたんだ。みんなでお祝い出来ればと思ってね」
料理を全て並べ終え、使用人が出ていった。
「ソフィアとウィルソンも座りなさい。今日は無礼講だ」
「料理もこの通り全部並べたから、呼ばない限り誰も入ってこない。安心して座ると良いよ」
二人は暫く悩んでいたが、アイラが頷くと渋々並んで腰掛けた。
ワインで乾杯し、料理を取り分ける。暖炉の火がパチパチと弾け、静かに会話が続けられた。
「そう言えば、王妃様のお茶会はどうだった?」
突然、アルフレッドが問いかけた。
「陛下も王妃様もとても素晴らしい方でした。リリアーナ様にもお会いしてご挨拶させて頂きました。とても緊張していたので、トマス様が来てくださってホッとしました」
「リリアーナは、花壇の中に隠れていたらしい。アイラをびっくりさせることが出来たと喜んでた」
「陛下は随分と、気を揉んでおられる様だね。まぁ、2年も世捨て人の様に暮らしておられたトマス様が、ここに来て漸く目覚めたんだから仕方ないだろうね」
「アルフレッド、世捨て人とは酷いですね。夜会にも参加していましたし、公務も行っていたのに」
「最近の夜会では、ご令嬢達が張り切っていますね。まだチャンスには巡り会えていない様だが」
アイラは王妃の言葉を思い出し、じわりと冷や汗をかいてしまう。陛下と王妃の誤解は、解けているのだろうかと不安になる。
今日教会で、離婚手続きをした事に気付かれないと良いのだが。手続きの時期を、間違ってしまったかもしれない。
アルフレッドがにっこり笑って言った。
「アイラ。離婚の手続きは、無事に済んだのかな?」
「ごふっ」
食べていた物を、喉に詰まらせてしまった。
「しっ失礼しました」
アイラは慌てて謝る。
「ジファール侯爵、タイミングにお気をつけ下さい。今のはわざとですよね」
ウィルソンが横目で睨む。
「いや。なんだかアイラが、焦っている様に見えたのでね。ちょっと揶揄ってみたんだ」
「アイラは離婚したんだ?」
「は、はい。あの元々そのつもりだったので、領地に戻る前に片付けしまおうかと」
「ではあっと言う間に、陛下にも伝わるだろうね」
「陛下はお忙しい方ですし、私の事などで無駄なお時間を使われることはないと」
「ウィルソン。アイラは本気で言っているのだろう?」
「残念ながら。アイラ様は仕事と勉強ばかりで、その他の事はとんと疎い方ですので」
「ウィルソン? 酷すぎません?」
「事実ですが? ソフィアも同じ意見だと思いますよ」
「ウィルソン、私に振らないで頂けませんか? 返事に困ります」
「さて、本題に入るかな? 胴元の話は、中々興味深かった」
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教会から一番近いと、トマスが全員を屋敷に誘った。夜10時近くになっており、お腹も空いている。
グラフトン公爵邸に着くと、直ぐに食堂に案内された。食堂は、白漆喰の壁に巨大なタペストリーが飾られていた。夜会に訪れた際の図案とは異なり、4枚のタペストリーで一つの物語になっている。
アイラはタペストリーに近付き、夢中でそれを眺めていた。
「気に入ったかい? これはこの屋敷を建てた時、陛下からお祝いにと賜った物でね。亡くなられた母君が、婚礼の際に公国からお持ちになられた貴重な品なんだ」
「とても素晴らしいです。公国は織物が盛んだと聞きます。とても優秀な染物師や織工が大勢いて、技を競い合っているとか」
「我が国でも頑張っている様だが、まだ公国には及ばないからね」
ホットワインと様々な料理が、巨大なテーブルに並べられた。豚のロースト、孔雀やホロホロ鳥、アスパラガスのサラダと数種類のリンゴのデザート。
「凄いご馳走ですね」
「アルフレッドの屋敷を出る時に、連絡しておいたんだ。みんなでお祝い出来ればと思ってね」
料理を全て並べ終え、使用人が出ていった。
「ソフィアとウィルソンも座りなさい。今日は無礼講だ」
「料理もこの通り全部並べたから、呼ばない限り誰も入ってこない。安心して座ると良いよ」
二人は暫く悩んでいたが、アイラが頷くと渋々並んで腰掛けた。
ワインで乾杯し、料理を取り分ける。暖炉の火がパチパチと弾け、静かに会話が続けられた。
「そう言えば、王妃様のお茶会はどうだった?」
突然、アルフレッドが問いかけた。
「陛下も王妃様もとても素晴らしい方でした。リリアーナ様にもお会いしてご挨拶させて頂きました。とても緊張していたので、トマス様が来てくださってホッとしました」
「リリアーナは、花壇の中に隠れていたらしい。アイラをびっくりさせることが出来たと喜んでた」
「陛下は随分と、気を揉んでおられる様だね。まぁ、2年も世捨て人の様に暮らしておられたトマス様が、ここに来て漸く目覚めたんだから仕方ないだろうね」
「アルフレッド、世捨て人とは酷いですね。夜会にも参加していましたし、公務も行っていたのに」
「最近の夜会では、ご令嬢達が張り切っていますね。まだチャンスには巡り会えていない様だが」
アイラは王妃の言葉を思い出し、じわりと冷や汗をかいてしまう。陛下と王妃の誤解は、解けているのだろうかと不安になる。
今日教会で、離婚手続きをした事に気付かれないと良いのだが。手続きの時期を、間違ってしまったかもしれない。
アルフレッドがにっこり笑って言った。
「アイラ。離婚の手続きは、無事に済んだのかな?」
「ごふっ」
食べていた物を、喉に詰まらせてしまった。
「しっ失礼しました」
アイラは慌てて謝る。
「ジファール侯爵、タイミングにお気をつけ下さい。今のはわざとですよね」
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「いや。なんだかアイラが、焦っている様に見えたのでね。ちょっと揶揄ってみたんだ」
「アイラは離婚したんだ?」
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「ウィルソン。アイラは本気で言っているのだろう?」
「残念ながら。アイラ様は仕事と勉強ばかりで、その他の事はとんと疎い方ですので」
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