【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

との

文字の大きさ
83 / 89

皇子

一月

ーーーーーー

 雲一つなく晴れ渡った空に、幾つもの花火が打ち上げられ、建国記念祝賀会が開催された。商店は歩道に溢れそうなほど商品を並べ、道ゆく人々の呼び込みに余念がない。
 公園や広場には出店や屋台が軒を連ね、至る所に行列ができている。大道芸人や吟遊詩人の周りには子供達が集まり、手を繋いだ親子連れや腕を組んだ恋人達が、店を冷やかしながら歩いている。

 2度目の花火が上がり、パレードの始まりを告げた。街道は、道いっぱいに広がった民衆に埋め尽くされた。正装の騎士団が先頭に立ち、その後ろに煌びやかな馬車が続く。宰相の次に陛下と王妃の姿が見え、第一王子と婚約者、第二王子と王女、王弟の馬車が続いて行く。

 街を1時間かけて一周した後、王宮に戻ってきた王族は、大広間で各国の来賓と高位貴族に出迎えられた。国王の挨拶に続き、隣国の皇太子や公国の皇子が祝辞を述べ、パーティーがはじまった。

 アイラは広間の端で、友人や知人達に囲まれている。トマスが公国の皇子と共にやってきた。

「アイラ、紹介しよう。サルデニア公国のアラン皇子だ。こちらはエジャートン伯爵アイラ・ランズダウン」
「お初にお目にかかります」
「初めまして、噂は予々お聞きしています。お会い出来るのを楽しみにしていました」
「?」
「アラン皇子は、先日のタペストリーの送り主でね、昨夜うっかりアイラの事を話してしまった。あちこちから苦情が来そうで、ドキドキしているよ」
 トマスが苦笑いしている。

「トマスが紹介してくれなければ、別の誰かを探していたよ。今回の祝賀会には伝説の妖精姫が出席すると、公国でも噂になっていたからね。噂は宛てにならないものだが、今回は噂以上だ」
「恐れ入ります」

 暫くして2人は、別の貴族に挨拶をする為に立ち去りかけたが、去り際に
「アイラ、夜のパーティーでダンスをお願いしても良いだろうか?」
と、アラン皇子が言ってきた。

「アラン、気が早すぎないか?」
「予約をしておかないと、あぶれてしまいそうだからね」
「確かに、では私も今のうちにお願いしておいても良いですか?」

 アイラは戸惑いながらも頷き、2人の後ろ姿を見つめていた。


 夜のパーティーの準備の為、アイラは一度屋敷に戻った。

「お帰りなさいませ、アイラ様。アラン皇子はどうでしたか? 噂では中々の好人物のようですが」

 ウィルソンの能面が出迎えた。ダンスに誘われた事を、既にウィルソンは知っているらしい。

「分からないわ。ほんの少しお話ししただけだもの。少し休憩して、夜のパーティーの準備をするわね」
「ソフィアが部屋で待機しております」

 ウィルソンの後ろ姿を見ながら、

(いつの間にか、仮面執事になったのよね。どうしてこんな事になったのかしら?)

 と悩むアイラだった。


 王宮で待ち合わせをして、アルフレッドにエスコートされたアイラ。ファーストダンスが終わり、アルフレッドが話しかけてきた。

「アイラ? 元気がないようだが、何かあったのかな?」

「何でもありません。少し疲れたのかもしれませんわ」
 アイラは、頼りなげに微笑む。
「パーティーははじまったばかりだと言いたいところだが、今日は朝からずっとだからね。少し休憩しようか」

 大広間の隣の部屋に移動して、ソファに座る。給仕からシャンパンを貰い、ほっと一息ついた。

「ソフィアやウィルソンは元気にしてるかい?」
「はい、ソフィアは元気にしています」
「ウィルソンは?」
「・・ウィルソンは何だか機嫌が悪くて。聞いても何も言ってくれないので」

 アルフレッドが笑い出した。

「放って置けばいい。単に駄々を捏ねてるだけだから」
「駄々ですか?」
「そう。それも、自分で気付かない限りどうにもならん。まあ、アイラも一緒だがね」
「私は駄々を捏ねてはいませんわ?」
「うん、まあ。そういう事にしておこうか。ソフィアは苦労していそうだな。今度、ソフィアと一緒に遊びに来なさい。珍しいワインを手に入れたんだ。ウィルソン抜きでね」
感想 10

あなたにおすすめの小説

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

恋詠花

舘野寧依
恋愛
アイシャは大国トゥルティエールの王妹で可憐な姫君。だが兄王にただならぬ憎しみを向けられて、王宮で非常に肩身の狭い思いをしていた。 そんな折、兄王から小国ハーメイの王に嫁げと命じられたアイシャはおとなしくそれに従う。しかし、そんな彼女を待っていたのは、手つかずのお飾りの王妃という屈辱的な仕打ちだった。それは彼女の出自にも関係していて……? ──これは後の世で吟遊詩人に詠われる二人の王と一人の姫君の恋物語。

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています