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皇子
一月
ーーーーーー
雲一つなく晴れ渡った空に、幾つもの花火が打ち上げられ、建国記念祝賀会が開催された。商店は歩道に溢れそうなほど商品を並べ、道ゆく人々の呼び込みに余念がない。
公園や広場には出店や屋台が軒を連ね、至る所に行列ができている。大道芸人や吟遊詩人の周りには子供達が集まり、手を繋いだ親子連れや腕を組んだ恋人達が、店を冷やかしながら歩いている。
2度目の花火が上がり、パレードの始まりを告げた。街道は、道いっぱいに広がった民衆に埋め尽くされた。正装の騎士団が先頭に立ち、その後ろに煌びやかな馬車が続く。宰相の次に陛下と王妃の姿が見え、第一王子と婚約者、第二王子と王女、王弟の馬車が続いて行く。
街を1時間かけて一周した後、王宮に戻ってきた王族は、大広間で各国の来賓と高位貴族に出迎えられた。国王の挨拶に続き、隣国の皇太子や公国の皇子が祝辞を述べ、パーティーがはじまった。
アイラは広間の端で、友人や知人達に囲まれている。トマスが公国の皇子と共にやってきた。
「アイラ、紹介しよう。サルデニア公国のアラン皇子だ。こちらはエジャートン伯爵アイラ・ランズダウン」
「お初にお目にかかります」
「初めまして、噂は予々お聞きしています。お会い出来るのを楽しみにしていました」
「?」
「アラン皇子は、先日のタペストリーの送り主でね、昨夜うっかりアイラの事を話してしまった。あちこちから苦情が来そうで、ドキドキしているよ」
トマスが苦笑いしている。
「トマスが紹介してくれなければ、別の誰かを探していたよ。今回の祝賀会には伝説の妖精姫が出席すると、公国でも噂になっていたからね。噂は宛てにならないものだが、今回は噂以上だ」
「恐れ入ります」
暫くして2人は、別の貴族に挨拶をする為に立ち去りかけたが、去り際に
「アイラ、夜のパーティーでダンスをお願いしても良いだろうか?」
と、アラン皇子が言ってきた。
「アラン、気が早すぎないか?」
「予約をしておかないと、あぶれてしまいそうだからね」
「確かに、では私も今のうちにお願いしておいても良いですか?」
アイラは戸惑いながらも頷き、2人の後ろ姿を見つめていた。
夜のパーティーの準備の為、アイラは一度屋敷に戻った。
「お帰りなさいませ、アイラ様。アラン皇子はどうでしたか? 噂では中々の好人物のようですが」
ウィルソンの能面が出迎えた。ダンスに誘われた事を、既にウィルソンは知っているらしい。
「分からないわ。ほんの少しお話ししただけだもの。少し休憩して、夜のパーティーの準備をするわね」
「ソフィアが部屋で待機しております」
ウィルソンの後ろ姿を見ながら、
(いつの間にか、仮面執事になったのよね。どうしてこんな事になったのかしら?)
と悩むアイラだった。
王宮で待ち合わせをして、アルフレッドにエスコートされたアイラ。ファーストダンスが終わり、アルフレッドが話しかけてきた。
「アイラ? 元気がないようだが、何かあったのかな?」
「何でもありません。少し疲れたのかもしれませんわ」
アイラは、頼りなげに微笑む。
「パーティーははじまったばかりだと言いたいところだが、今日は朝からずっとだからね。少し休憩しようか」
大広間の隣の部屋に移動して、ソファに座る。給仕からシャンパンを貰い、ほっと一息ついた。
「ソフィアやウィルソンは元気にしてるかい?」
「はい、ソフィアは元気にしています」
「ウィルソンは?」
「・・ウィルソンは何だか機嫌が悪くて。聞いても何も言ってくれないので」
アルフレッドが笑い出した。
「放って置けばいい。単に駄々を捏ねてるだけだから」
「駄々ですか?」
「そう。それも、自分で気付かない限りどうにもならん。まあ、アイラも一緒だがね」
「私は駄々を捏ねてはいませんわ?」
「うん、まあ。そういう事にしておこうか。ソフィアは苦労していそうだな。今度、ソフィアと一緒に遊びに来なさい。珍しいワインを手に入れたんだ。ウィルソン抜きでね」
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雲一つなく晴れ渡った空に、幾つもの花火が打ち上げられ、建国記念祝賀会が開催された。商店は歩道に溢れそうなほど商品を並べ、道ゆく人々の呼び込みに余念がない。
公園や広場には出店や屋台が軒を連ね、至る所に行列ができている。大道芸人や吟遊詩人の周りには子供達が集まり、手を繋いだ親子連れや腕を組んだ恋人達が、店を冷やかしながら歩いている。
2度目の花火が上がり、パレードの始まりを告げた。街道は、道いっぱいに広がった民衆に埋め尽くされた。正装の騎士団が先頭に立ち、その後ろに煌びやかな馬車が続く。宰相の次に陛下と王妃の姿が見え、第一王子と婚約者、第二王子と王女、王弟の馬車が続いて行く。
街を1時間かけて一周した後、王宮に戻ってきた王族は、大広間で各国の来賓と高位貴族に出迎えられた。国王の挨拶に続き、隣国の皇太子や公国の皇子が祝辞を述べ、パーティーがはじまった。
アイラは広間の端で、友人や知人達に囲まれている。トマスが公国の皇子と共にやってきた。
「アイラ、紹介しよう。サルデニア公国のアラン皇子だ。こちらはエジャートン伯爵アイラ・ランズダウン」
「お初にお目にかかります」
「初めまして、噂は予々お聞きしています。お会い出来るのを楽しみにしていました」
「?」
「アラン皇子は、先日のタペストリーの送り主でね、昨夜うっかりアイラの事を話してしまった。あちこちから苦情が来そうで、ドキドキしているよ」
トマスが苦笑いしている。
「トマスが紹介してくれなければ、別の誰かを探していたよ。今回の祝賀会には伝説の妖精姫が出席すると、公国でも噂になっていたからね。噂は宛てにならないものだが、今回は噂以上だ」
「恐れ入ります」
暫くして2人は、別の貴族に挨拶をする為に立ち去りかけたが、去り際に
「アイラ、夜のパーティーでダンスをお願いしても良いだろうか?」
と、アラン皇子が言ってきた。
「アラン、気が早すぎないか?」
「予約をしておかないと、あぶれてしまいそうだからね」
「確かに、では私も今のうちにお願いしておいても良いですか?」
アイラは戸惑いながらも頷き、2人の後ろ姿を見つめていた。
夜のパーティーの準備の為、アイラは一度屋敷に戻った。
「お帰りなさいませ、アイラ様。アラン皇子はどうでしたか? 噂では中々の好人物のようですが」
ウィルソンの能面が出迎えた。ダンスに誘われた事を、既にウィルソンは知っているらしい。
「分からないわ。ほんの少しお話ししただけだもの。少し休憩して、夜のパーティーの準備をするわね」
「ソフィアが部屋で待機しております」
ウィルソンの後ろ姿を見ながら、
(いつの間にか、仮面執事になったのよね。どうしてこんな事になったのかしら?)
と悩むアイラだった。
王宮で待ち合わせをして、アルフレッドにエスコートされたアイラ。ファーストダンスが終わり、アルフレッドが話しかけてきた。
「アイラ? 元気がないようだが、何かあったのかな?」
「何でもありません。少し疲れたのかもしれませんわ」
アイラは、頼りなげに微笑む。
「パーティーははじまったばかりだと言いたいところだが、今日は朝からずっとだからね。少し休憩しようか」
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「はい、ソフィアは元気にしています」
「ウィルソンは?」
「・・ウィルソンは何だか機嫌が悪くて。聞いても何も言ってくれないので」
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