84 / 89
馬上槍試合
一月
ーーーーーー
祝賀会2日目。今日は闘技場で、10年ぶりの馬上槍試合が行われる。参加者は、王国騎士団と貴族所有の騎士のみとされており、他国からの参加は禁止された。
通常、前夜祭として行われるジョスト(一騎打ち)は行われず、トゥルネイ(団体戦)のみ。日の入りか、陣営全員の敗退をもって終了とし、両陣営で最優秀騎士が選ばれる。
観客席は、貴族と平民で分かれてはいるものの、どちらも多くの人々がひしめき合い、興奮の坩堝と化している。
午前10時過ぎ、騎士たちが左右に分かれて整列した。鎧兜を身につけ、それぞれが意匠を凝らしたランスを手にしている。敵と味方を見分ける為、兜には赤と青のリボンが巻かれている。
騎乗した馬の中には、バーディング(馬鎧)を着けているものもいる。さらに全員が、所属する王国や領主の紋章をつけた、カパリスンと言う布製のカバーを着けている。
ヘラルドと呼ばれる、紋章官の掛け声が響き渡った。
騎士達は一斉に、ランスを水平に構え突撃する。すれ違いざま敵を攻撃し、ターンしては再度攻撃に戻る。馬から落とされた者は、境界線の外へと退場する。
観客席前には、予備のランスを持った従者が控えており、騎士達は途中武器を変えては戦いに戻る。
「トーナメントを観るのは初めて?」
「はい、前回はまだ幼かったので、家でお留守番でした。凄い迫力ですね」
「今回は、他国からの参加者がいないだけまだマシな方だ。多分300人程度だと思う」
「あんなに激しく戦って、怪我はしないのですか?」
「ランスの刃先は鈍らせてあるからね。余程運が悪くない限り、重症にはならないだろう」
両陣営とも多くの落馬者が出て、残った者達は次第に乱戦となっていった。
日の入りと共に、数発の空砲が響き渡った。最後まで残った者達は、その後の祝勝会で金一封と様々な褒賞が与えられた。最優秀騎士となった者達には、更なる褒賞と共に名声と出世への道が与えられた。
数日に渡って行われた祝賀会は、華やかな余韻をそれぞれの胸に残し、閉会となった。
今日も、仮面執事がやってきた。
「アイラ様、本日分の釣書でございます。有象無象は省いてございますので、ご確認ください」
「お断りのお返事を書くわ」
「近々領地にお戻りでしたら、ある程度話をまとめておきませんと、顔合わせが難しくなります」
「お断りのお返事を書きます。顔合わせの必要はないから」
ソフィアは部屋の隅で、ハラハラしながら2人を見ている。
(2人とも、一触即発って感じ)
「伯爵家の為には、後継者が必要です。将来の事を考えますと、1日も早いご婚「そんな事分かっているわ。出かけます。ソフィア、馬車の準備をお願い」」
「アイラ様、どちらへ向かわれますか?」
御者が聞いてくる。
「ごめんなさい、考えてなかったわ。取り敢えず適当に走ってくれるかしら」
静まりかえった馬車の中には、アイラとソフィアの2人。
「さっきは、ごめんなさいね。癇癪を起こすなんて」
「ウィルソンはこの頃態度が悪すぎます」
「アルフレッド様が、ウィルソンは駄々を捏ねてるって」
「ぷっ」ソフィアが吹き出した。
「仮面執事なんて、大っ嫌い」
「では、馘にしますか?」
「まさか、ウィルソンが居なくなるなんて、考えられないわ」
「・・先日、ジファール侯爵様から私宛てにお手紙を頂きました。その中にこれが」
「私宛て?」
「はい。もし、どうにもならなくなったら開けるようにと」
夜、アイラはひとりで暖炉の前に座り込んでいた。昼間、ソフィアから渡された手紙を見つめていたが、封を開ける勇気がない。
(以前だったら、ウィルソンが来て声をかけてくれてたのよね)
「俺が好きなのはソフィアじゃないです」
「俺はアイラ様の側で貴方を支えたい」
「不安なのですね、アイラ様」
「次は必ず、アイラ様を幸せにしてくださる方を見つけます」
「アイラ様を護るのは私」
「他の誰にも譲らない」
「アイラ様を連れて逃げると」
(ウィルソン・・)
ーーーーーー
祝賀会2日目。今日は闘技場で、10年ぶりの馬上槍試合が行われる。参加者は、王国騎士団と貴族所有の騎士のみとされており、他国からの参加は禁止された。
通常、前夜祭として行われるジョスト(一騎打ち)は行われず、トゥルネイ(団体戦)のみ。日の入りか、陣営全員の敗退をもって終了とし、両陣営で最優秀騎士が選ばれる。
観客席は、貴族と平民で分かれてはいるものの、どちらも多くの人々がひしめき合い、興奮の坩堝と化している。
午前10時過ぎ、騎士たちが左右に分かれて整列した。鎧兜を身につけ、それぞれが意匠を凝らしたランスを手にしている。敵と味方を見分ける為、兜には赤と青のリボンが巻かれている。
騎乗した馬の中には、バーディング(馬鎧)を着けているものもいる。さらに全員が、所属する王国や領主の紋章をつけた、カパリスンと言う布製のカバーを着けている。
ヘラルドと呼ばれる、紋章官の掛け声が響き渡った。
騎士達は一斉に、ランスを水平に構え突撃する。すれ違いざま敵を攻撃し、ターンしては再度攻撃に戻る。馬から落とされた者は、境界線の外へと退場する。
観客席前には、予備のランスを持った従者が控えており、騎士達は途中武器を変えては戦いに戻る。
「トーナメントを観るのは初めて?」
「はい、前回はまだ幼かったので、家でお留守番でした。凄い迫力ですね」
「今回は、他国からの参加者がいないだけまだマシな方だ。多分300人程度だと思う」
「あんなに激しく戦って、怪我はしないのですか?」
「ランスの刃先は鈍らせてあるからね。余程運が悪くない限り、重症にはならないだろう」
両陣営とも多くの落馬者が出て、残った者達は次第に乱戦となっていった。
日の入りと共に、数発の空砲が響き渡った。最後まで残った者達は、その後の祝勝会で金一封と様々な褒賞が与えられた。最優秀騎士となった者達には、更なる褒賞と共に名声と出世への道が与えられた。
数日に渡って行われた祝賀会は、華やかな余韻をそれぞれの胸に残し、閉会となった。
今日も、仮面執事がやってきた。
「アイラ様、本日分の釣書でございます。有象無象は省いてございますので、ご確認ください」
「お断りのお返事を書くわ」
「近々領地にお戻りでしたら、ある程度話をまとめておきませんと、顔合わせが難しくなります」
「お断りのお返事を書きます。顔合わせの必要はないから」
ソフィアは部屋の隅で、ハラハラしながら2人を見ている。
(2人とも、一触即発って感じ)
「伯爵家の為には、後継者が必要です。将来の事を考えますと、1日も早いご婚「そんな事分かっているわ。出かけます。ソフィア、馬車の準備をお願い」」
「アイラ様、どちらへ向かわれますか?」
御者が聞いてくる。
「ごめんなさい、考えてなかったわ。取り敢えず適当に走ってくれるかしら」
静まりかえった馬車の中には、アイラとソフィアの2人。
「さっきは、ごめんなさいね。癇癪を起こすなんて」
「ウィルソンはこの頃態度が悪すぎます」
「アルフレッド様が、ウィルソンは駄々を捏ねてるって」
「ぷっ」ソフィアが吹き出した。
「仮面執事なんて、大っ嫌い」
「では、馘にしますか?」
「まさか、ウィルソンが居なくなるなんて、考えられないわ」
「・・先日、ジファール侯爵様から私宛てにお手紙を頂きました。その中にこれが」
「私宛て?」
「はい。もし、どうにもならなくなったら開けるようにと」
夜、アイラはひとりで暖炉の前に座り込んでいた。昼間、ソフィアから渡された手紙を見つめていたが、封を開ける勇気がない。
(以前だったら、ウィルソンが来て声をかけてくれてたのよね)
「俺が好きなのはソフィアじゃないです」
「俺はアイラ様の側で貴方を支えたい」
「不安なのですね、アイラ様」
「次は必ず、アイラ様を幸せにしてくださる方を見つけます」
「アイラ様を護るのは私」
「他の誰にも譲らない」
「アイラ様を連れて逃げると」
(ウィルソン・・)
あなたにおすすめの小説
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
恋詠花
舘野寧依
恋愛
アイシャは大国トゥルティエールの王妹で可憐な姫君。だが兄王にただならぬ憎しみを向けられて、王宮で非常に肩身の狭い思いをしていた。
そんな折、兄王から小国ハーメイの王に嫁げと命じられたアイシャはおとなしくそれに従う。しかし、そんな彼女を待っていたのは、手つかずのお飾りの王妃という屈辱的な仕打ちだった。それは彼女の出自にも関係していて……?
──これは後の世で吟遊詩人に詠われる二人の王と一人の姫君の恋物語。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています