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騎士
二月 一部暴力シーンがあります
ーーーーーー
二月四日。アイラは黄褐色のドレスに身を包み、教会にやってきた。礼拝堂の椅子に腰掛け、両手を膝の上で組み目を閉じる。
静かに時間が流れていく。時折ドアが開き人の気配がするが、暫くすると居なくなる。
身体の芯まで冷え、足先がジンジンと痺れ始めた頃、アイラの後ろに1人の男が座った。
「どうして?」アイラが呟いた。
1時間以上、2人は何も言わずただ黙って座っていた。時折、蝋燭の芯がじゅっと音を立てる。何度かドアが開き、人が出入りしたが今は誰もいない。
「ホットスパーの調査に行く前に、奴に鍵を渡しました」
「貴方を傷つける事になって、申し訳ありません」
途切れ途切れに話を続けていく。
「処罰をお願いします」
「いいえ、何もするつもりはないわ。ただ、知りたいの」
「羨ましかったんです、ウィルソンが」
「騎士になりたかったんです」
「奴は私の望みを知っていました。ウィルソンに吠え面をかかせたくないか? と言われました。忍び込んでウォルターを揶揄うだけだと」
「ウィルソンは執事よ。騎士じゃないわ」
「ジファール侯爵の所に行ったのはウィルソンでした。本当は俺かギータが行くはずだったのに」
「ヘンリー、気付かなくてごめんなさい」
「どうか、厳しい罰を」
「・・ここに退職金を置いておきます。どうか無事でいて。いつか又会える日を」
アイラは静かに席を立った。ドアの近くに来た時、後ろから小さな嗚咽が聞こえてきた。礼拝堂を出ると、ギータとソフィアが並んで立っていた。
「帰りましょう」
「アイラ様、ヘンリーは・・」
「ソフィア」ギータが首を振る。
帰り道の馬車の中、
「ギータ、ヘンリーの事ありがとう。無事な姿を見れて安心したわ。真面目な人だから、馬鹿な事をしないか心配してたの」
「あいつは何と?」
「ウィルソンが羨ましかったって」
アイラは膝に置いた両手を見つめながら、静かに涙を流した。
「みんな家族だったのにね」
屋敷に着くと、ウィルソンが心配して玄関に立っていた。ギータは何も言わず、ウィルソンを殴りつけた。
「「ギータ!」」
壁に激突したウィルソンは、口元から血を流したまま座り込んでいる。
「気付いていたんだろ?」
「ああ」
「でも?」
「それだけは譲れない」
「そう思ってるんなら、覚悟を決めるんだな」
「・・」
翌日、朝からウィルソンの姿が見えなかった。
「ソフィア、ウィルソンは?」
「急用ができたので出掛けると」
「そう」
お昼過ぎ、ウィルソンが帰って来た。いつもの仮面は被っていないようだが、気難しい顔をして肩に力が入っている。
「アイラ様、今宜しいでしょうか?」
「改まってどうしたの?」
「今日、グラフトン公爵の所に行ってまいりました」
「?」
「アイラ様に、結婚を申し込むつもりだと」
「順番がおかしい気はするのだけど、話を続けてちょうだい」
「アイラ様、俺は平民です」
「そうね」
「財産も何もありませんし、誰かに誇れるような所もありません」
「そうなの?」
「俺と結婚して頂けませんか?」
「はい」
「貴賤結婚だと、色々嫌な思いをさせてしまう事が「はいって言ったの」」
「・・」
「ウィルソン? 大丈夫?」
「何でもっと真剣に考えないんですか? とても大事な事なんですよ。平民なんかと結婚したら、社交界でどんな嫌味を言われるか」
「それなら、社交界に参加しなければいいわ」
「こっ子供の将来とか」
「だったら先に爵位の返上をしましょう。最初から持っていなければ、揉めることもないし?」
「そんな簡単に言わないで下さい。今までどれ程頑張って来られたか、それを知っているのに俺のせ「だってウィルソンが一番良いんだもの」」
「ねぇソフィア? 私結婚を申し込まれてるの? それとも怒られてるの?」
ソフィアが、涙を流しながら笑っていた。
婚約式の準備が慌ただしく進められた。ウィルソンの礼服やアイラのドレス。宝石商が呼ばれ婚約指輪を選ぶ。
屋敷中が、お祝いの準備で走り回っている中、アイラとウィルソンだけがいつも通り執務を行なっている。
「何だか大騒ぎになったわね」
「ソフィアとギータのせいです。あまり騒ぎを大きくしないで欲しいのですが」
「みんな楽しそうだから、良いんじゃないかしら。お父様達の事故以来、みんな大変だったでしょう? 気分転換になってるみたいだしね」
青い顔で溜息をつくウィルソンを見ながら、アイラは笑っていた。
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二月四日。アイラは黄褐色のドレスに身を包み、教会にやってきた。礼拝堂の椅子に腰掛け、両手を膝の上で組み目を閉じる。
静かに時間が流れていく。時折ドアが開き人の気配がするが、暫くすると居なくなる。
身体の芯まで冷え、足先がジンジンと痺れ始めた頃、アイラの後ろに1人の男が座った。
「どうして?」アイラが呟いた。
1時間以上、2人は何も言わずただ黙って座っていた。時折、蝋燭の芯がじゅっと音を立てる。何度かドアが開き、人が出入りしたが今は誰もいない。
「ホットスパーの調査に行く前に、奴に鍵を渡しました」
「貴方を傷つける事になって、申し訳ありません」
途切れ途切れに話を続けていく。
「処罰をお願いします」
「いいえ、何もするつもりはないわ。ただ、知りたいの」
「羨ましかったんです、ウィルソンが」
「騎士になりたかったんです」
「奴は私の望みを知っていました。ウィルソンに吠え面をかかせたくないか? と言われました。忍び込んでウォルターを揶揄うだけだと」
「ウィルソンは執事よ。騎士じゃないわ」
「ジファール侯爵の所に行ったのはウィルソンでした。本当は俺かギータが行くはずだったのに」
「ヘンリー、気付かなくてごめんなさい」
「どうか、厳しい罰を」
「・・ここに退職金を置いておきます。どうか無事でいて。いつか又会える日を」
アイラは静かに席を立った。ドアの近くに来た時、後ろから小さな嗚咽が聞こえてきた。礼拝堂を出ると、ギータとソフィアが並んで立っていた。
「帰りましょう」
「アイラ様、ヘンリーは・・」
「ソフィア」ギータが首を振る。
帰り道の馬車の中、
「ギータ、ヘンリーの事ありがとう。無事な姿を見れて安心したわ。真面目な人だから、馬鹿な事をしないか心配してたの」
「あいつは何と?」
「ウィルソンが羨ましかったって」
アイラは膝に置いた両手を見つめながら、静かに涙を流した。
「みんな家族だったのにね」
屋敷に着くと、ウィルソンが心配して玄関に立っていた。ギータは何も言わず、ウィルソンを殴りつけた。
「「ギータ!」」
壁に激突したウィルソンは、口元から血を流したまま座り込んでいる。
「気付いていたんだろ?」
「ああ」
「でも?」
「それだけは譲れない」
「そう思ってるんなら、覚悟を決めるんだな」
「・・」
翌日、朝からウィルソンの姿が見えなかった。
「ソフィア、ウィルソンは?」
「急用ができたので出掛けると」
「そう」
お昼過ぎ、ウィルソンが帰って来た。いつもの仮面は被っていないようだが、気難しい顔をして肩に力が入っている。
「アイラ様、今宜しいでしょうか?」
「改まってどうしたの?」
「今日、グラフトン公爵の所に行ってまいりました」
「?」
「アイラ様に、結婚を申し込むつもりだと」
「順番がおかしい気はするのだけど、話を続けてちょうだい」
「アイラ様、俺は平民です」
「そうね」
「財産も何もありませんし、誰かに誇れるような所もありません」
「そうなの?」
「俺と結婚して頂けませんか?」
「はい」
「貴賤結婚だと、色々嫌な思いをさせてしまう事が「はいって言ったの」」
「・・」
「ウィルソン? 大丈夫?」
「何でもっと真剣に考えないんですか? とても大事な事なんですよ。平民なんかと結婚したら、社交界でどんな嫌味を言われるか」
「それなら、社交界に参加しなければいいわ」
「こっ子供の将来とか」
「だったら先に爵位の返上をしましょう。最初から持っていなければ、揉めることもないし?」
「そんな簡単に言わないで下さい。今までどれ程頑張って来られたか、それを知っているのに俺のせ「だってウィルソンが一番良いんだもの」」
「ねぇソフィア? 私結婚を申し込まれてるの? それとも怒られてるの?」
ソフィアが、涙を流しながら笑っていた。
婚約式の準備が慌ただしく進められた。ウィルソンの礼服やアイラのドレス。宝石商が呼ばれ婚約指輪を選ぶ。
屋敷中が、お祝いの準備で走り回っている中、アイラとウィルソンだけがいつも通り執務を行なっている。
「何だか大騒ぎになったわね」
「ソフィアとギータのせいです。あまり騒ぎを大きくしないで欲しいのですが」
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