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2.婚約破棄

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 卒業パーティーがはじまり、元生徒会長であり成績最優秀者のデイビッドが壇上で卒業生代表の挨拶をした後、

「今日私は、この栄えある席でエリン・スールベリー侯爵令嬢との婚約を破棄し、改めてバイオレット・スールベリー侯爵令嬢との婚約を発表致します」


 会場内のあちらこちらから拍手が沸き起こった。

「お似合いのお二人ですもの、仕方ありませんわよね」

「俺達には高嶺の花だったもんなあ」


 学生達の拍手に包まれながらバイオレットが壇上に上がった。


 今日のバイオレットはデイビッドから贈られた濃いピンクのドレスを纏い、ハーフアップにした髪を宝石のついたバレットで留めている。
 イヤリング・ネックレス・ブレスレットの3点も揃いでデイビッドから贈られてきたもの。


「皆さん、どうもありがとう。デイビッド様と幸せになります」

 いっそう拍手が大きくなる中、バイオレットは可愛らしく頬を染めデイビッドの腕に手をかけた。


「エリン・スールベリー嬢、前に出て来てくれたまえ」


 会場の壁際でひっそりと佇んでいたエリンの前に道ができた。
 ひそひそ小声で話す者や馬鹿にしたように笑う者。
 エリンは背筋を伸ばし、デイビッド達の前まで歩み出た。


「婚約破棄の理由は理解できていると思う。私達は真実の愛に出会った。潔く身を引いてくれるだろうか?」

「はい、ご婚約おめでとうございます」

「潔い態度感謝する。
当家からの婚約指輪やプレゼントした宝石は君へ・・侯爵家へ差し上げる。返済の足しにでもすると良い」


 会場内にクスクスと笑い声が広がっていく。


(お父様・・ここまで馬鹿にされても黙ってなくちゃいけないの?)


 公爵家から贈られた婚約指輪は持っているが、それ以外に今までプレゼントを貰った事は一度もない。
 デイビッドがプレゼントを贈った相手はバイオレットのみ、エリンはせめてそれだけでも言い返したかった。


 恥ずかしさと悔しさに顔を上げていられなくなったエリンは俯いたまま、今朝父から言われた言葉を思い出していた。


『エリン、何があっても目立っては駄目だ。辛いだろうが大人しく黙っているんだよ。
お前の命を守るためなんだから』


 学園でそこそこの成績をキープしているのも、目立たず一人ぼっちでいるのも父の、

 《絶対に目立つな》

と言う指示のせい。


 嘲笑と蔑みの視線に耐えられなくなったエリンは、そそくさと会場を後にした。


 バイオレットはエリンが逃げ出す後ろ姿を見ながら、
(情けないこと、あれ以上に無様な生き物って見たことないわ)


 バイオレットはにっこりと可愛く微笑みながら、デイビッドにいっそう強くしなだれかかっていった。

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