4 / 31
4.母の秘密
しおりを挟む
「奥様はとても優秀な錬金術師でいらっしゃいました。
旦那様とご結婚される前から錬金術を極めておられましたが、サリストの大旦那様が多くの薬師を雇って誤魔化しておられました」
「サリスト伯爵家に錬金術師が産まれるなんて聞いたことないわよ?」
「秘密にしておられましたからね。色々と・・大人の世界には色々あるのですよ。お嬢様が知る必要のない事が」
「お父様がいつも私に目立つな・大人しくしなさいって仰るのはそのせい?」
「・・」
「ステラ、教えてちょうだい。今のお父様には聞けないけど全部知りたいの。
今朝お父様が“命の危険” って仰ったの。
ステラは元々お母様の侍女だったんだから、きっとその理由を知っているのでしょう?」
ステラは長く考え込んでいたが、渋々話し始めた。
「・・奥様は薬を盛られて亡くなったのではないかと思います。
サリスト伯爵家には時折、非常に優秀な錬金術師の女性が産まれるのです。今のサリスト伯爵家には錬金術師はいらっしゃらないようですが」
「誰に殺されたの?」
「分かりません。それは憶測でしか・・」
「それで構わないわ。教えて」
「・・」
「お母様の手帳には『目をつけられた、命の危険』って書いてあったの」
俯き加減でぼそりボソリと話していたステラだったが、意を決したように顔を上げエリンの目を見つめて話を続けた。
「・・この国は錬金術師の地位がとても高いことをご存知ですか?」
「王宮錬金術師の方々の偉業の話はよく聞くわ。特に師長のマクガバン様は素晴らしい実力の持ち主だとか」
「その陰で多くの錬金術師が命を落としています。病気や怪我の他にも行方不明になったり原因不明の突然死だったり。
その為、王宮錬金術師のメンバーの入れ替わりはあまり行われていません」
「まさか?」
「可能性の一つとしか申し上げられません。奥様が亡くなられた直後、王宮錬金術師の方がやって来られて奥様の亡骸を強引に連れ去って火葬してしまったのです。
理由は魔女疑惑だそうです。魔女の魂が戻ってこないようにとかなんとか。
なので結局何もわかりませんでした」
「それでお父様は、お母様の血を引く私に目立つなと仰ったのね」
「奥様がご結婚される前にも、何度も王宮錬金術師がサリストのお屋敷に来ていました。
大旦那様はそれもあって旦那様との結婚を許されたのです」
「疑いの目を逸らすため?」
ステラは大きく頷きながら、
「王宮錬金術師はあの時奥様の亡骸と一緒に、お嬢様も連れて行こうとしたんです。
魔女の魂が乗り移らないようにと言って。
旦那様が必死で阻止なさって、結局お嬢様の右腕の印を確認して帰られました」
「印って何?」
「錬金術師の右腕には生まれつき赤い龍のあざがあります。
そのあざは、錬金術師の力を龍神様が認めた証だとか祝福の証だとか言われています」
「・・それ、左腕にあるわ」
旦那様とご結婚される前から錬金術を極めておられましたが、サリストの大旦那様が多くの薬師を雇って誤魔化しておられました」
「サリスト伯爵家に錬金術師が産まれるなんて聞いたことないわよ?」
「秘密にしておられましたからね。色々と・・大人の世界には色々あるのですよ。お嬢様が知る必要のない事が」
「お父様がいつも私に目立つな・大人しくしなさいって仰るのはそのせい?」
「・・」
「ステラ、教えてちょうだい。今のお父様には聞けないけど全部知りたいの。
今朝お父様が“命の危険” って仰ったの。
ステラは元々お母様の侍女だったんだから、きっとその理由を知っているのでしょう?」
ステラは長く考え込んでいたが、渋々話し始めた。
「・・奥様は薬を盛られて亡くなったのではないかと思います。
サリスト伯爵家には時折、非常に優秀な錬金術師の女性が産まれるのです。今のサリスト伯爵家には錬金術師はいらっしゃらないようですが」
「誰に殺されたの?」
「分かりません。それは憶測でしか・・」
「それで構わないわ。教えて」
「・・」
「お母様の手帳には『目をつけられた、命の危険』って書いてあったの」
俯き加減でぼそりボソリと話していたステラだったが、意を決したように顔を上げエリンの目を見つめて話を続けた。
「・・この国は錬金術師の地位がとても高いことをご存知ですか?」
「王宮錬金術師の方々の偉業の話はよく聞くわ。特に師長のマクガバン様は素晴らしい実力の持ち主だとか」
「その陰で多くの錬金術師が命を落としています。病気や怪我の他にも行方不明になったり原因不明の突然死だったり。
その為、王宮錬金術師のメンバーの入れ替わりはあまり行われていません」
「まさか?」
「可能性の一つとしか申し上げられません。奥様が亡くなられた直後、王宮錬金術師の方がやって来られて奥様の亡骸を強引に連れ去って火葬してしまったのです。
理由は魔女疑惑だそうです。魔女の魂が戻ってこないようにとかなんとか。
なので結局何もわかりませんでした」
「それでお父様は、お母様の血を引く私に目立つなと仰ったのね」
「奥様がご結婚される前にも、何度も王宮錬金術師がサリストのお屋敷に来ていました。
大旦那様はそれもあって旦那様との結婚を許されたのです」
「疑いの目を逸らすため?」
ステラは大きく頷きながら、
「王宮錬金術師はあの時奥様の亡骸と一緒に、お嬢様も連れて行こうとしたんです。
魔女の魂が乗り移らないようにと言って。
旦那様が必死で阻止なさって、結局お嬢様の右腕の印を確認して帰られました」
「印って何?」
「錬金術師の右腕には生まれつき赤い龍のあざがあります。
そのあざは、錬金術師の力を龍神様が認めた証だとか祝福の証だとか言われています」
「・・それ、左腕にあるわ」
66
あなたにおすすめの小説
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
悪役令嬢は断罪の舞台で笑う
由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。
しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。
聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。
だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。
追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。
冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。
そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。
暴かれる真実。崩壊する虚構。
“悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
婚約破棄のその後に
ゆーぞー
恋愛
「ライラ、婚約は破棄させてもらおう」
来月結婚するはずだった婚約者のレナード・アイザックス様に王宮の夜会で言われてしまった。しかもレナード様の隣には侯爵家のご令嬢メリア・リオンヌ様。
「あなた程度の人が彼と結婚できると本気で考えていたの?」
一方的に言われ混乱している最中、王妃様が現れて。
見たことも聞いたこともない人と結婚することになってしまった。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる