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お父様たちの帰還

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 卒業間近の今、学園から帰ると意外と暇を持て余してしまいます。今までなら予習復習課題の提出等々、それに加えて淑女教育もありましたし。

 淑女教育は普通、15歳位までには終わらせるものと言われております。我が家では、

「慌てなくても良いのでは? のんびりやりましょう」

と言う、お母様の教えの元、学園卒業に間に合えば良いので割と気楽でした。それも最近漸く終わりましたの。
 妹はなぜか、10歳のころには淑女教育を終わらせていましたの。その理由が、
「私はとっても忙しいの」
だそうで、本当によくわからない妹です。貴族の令嬢が、なぜそんなに忙しいのか不思議でなりません。


 刺繍は苦手ですし、本を読むと言うのもあまり好きではありません。兎に角暇です。
 私の得意は楽器全般と声楽です。いつもなら音楽室でピアノを・・と思いますが、今は妹に会わないよう大人しくしている事にしましょう。お父様達とのお話が終わるまでは、何がなんでも妹回避です。妹? 大好きですよ、勿論。

 結婚? 全然夢を描いたことはございませんでした。
 だって、どうせどこかの貴族から、政略結婚の申し込みが来るのですから。今でも勿論、いろいろな方からのお申し込みは頂いておりましたけれど。
 お父様達は、
「ゆっくり考えて、自分で決めれば良いからね」
と仰ってくださいますが、やっぱり自由恋愛というわけにはいかないと、思っておりましたの。
 ところが、仲良くしていただいていたリオンから、まさかの結婚の申し込み。すっかり舞い上がってしまいました。


 お父様達は中々お戻りになられません。
 こんな事なら、学園から王宮へ直接行った方が良かったかしらと、溜息をつき始めた頃、
「ご主人様奥方様、お戻りになられました」
と、メイドが知らせてくれました。

「お召し変えを済まされたら、談話室の方へいらっしゃるとのことです」
「わかったわ。では、少ししたら私も参ります」

 さあ、お父様お母様をびっくりさせて差し上げますわ。


 ドキドキしながら談話室へ参ります。お父様達からどんなお言葉をいただけるのか、とても楽しみです。

 談話室はお母様の好みが強く反映されています。
 淡いベージュを基調に、薄いピンクのカーテン。観葉植物が窓際や壁沿いに、沢山置かれています。白と金を基調にした暖炉には、ほんの1ヶ月前までは赤々と火が灯されており、毎日家族でお喋りを楽しんでおりました。

 メイドに談話室のドアを開けてもらい、一歩足を踏み入れたのですが、
「げっ!」
 思わず王女らしからぬ声が出てしまいました。
 だって、並んで座るお父様とお母様の前に、妹がゆったりと座りお茶を飲んでいるのですもの。

 一気に緊張してまいりました。
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