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1.二度目の事故 覚醒
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(こんな終わりだなんて)
(やり直せたら⋯⋯伝えられるかな)
聞き慣れている声のような、知らない人の声のような⋯⋯今のは誰の声だったんだろうと不思議に思いながら、ローザリアはいつものように気配を殺し下を向いていた。
目の前で退屈そうに扇子を揺らしているのはローザリアの母カサンドラ。
いつもなら馴染みの仕立て屋や宝石商を屋敷に呼びつけるカサンドラが何の気まぐれか急に店に行きたいと言い出したため、慌てて馬車を準備させて侍女や護衛を引き連れて出かけてきたのだが⋯⋯。
(急すぎたからかな、毒を飲まされてないし⋯⋯毒?)
新しいドレスを作ってもらえるとご機嫌で馬車の中で飛び跳ねているのはローザリアの二つ年下の妹リリアーナ。
カサンドラもリリアーナほどではないが普段に比べるとかなり機嫌が良さそうにしている。
(今日は叱られないかも)
ガッ、ガガッガタン
ごふっ! どん!
「「きゃあー!」」
馬車が突然大きく傾ぎ前を向いて座っていたカサンドラとリリアーナが座席から投げ出された。その拍子にカサンドラが持っていた扇子が長女ローザリアの喉に突き刺さったが、カサンドラがローザリアを押しのけるように背を起こした。
「ぐぇっ、ゲッ、ゲホッゲホッ」
カサンドラの隣に座っていたリリアーナはカサンドラにしがみついて泣き出した。
「お母様、怖いよー」
「煩いわね、おだまんなさい!!」
カサンドラは天井を叩き御者に向けて金切り声を上げた。
「何やってるのよ!!」
「申し訳ございません、車輪が!」
御者台から慌てた声が聞こえてきて、馬車の横を騎馬でついてきていた護衛が慌ただしく扉を開いた。
馬車に乗っていたのはトーマック公爵夫人のカサンドラと長女のローザリアと次女のリリアーナ。
少し斜めに傾いだ馬車からカサンドラ達3人が降りると2台目の馬車の方から侍女が慌てて駆けてきた。
「カサンドラ様、リリアーナ様。お怪我はございませんか!?」
「怪我があったらここにいる全員打首にしてるわよ!」
「申し訳ございません、あの⋯⋯車輪に異常があったのかも⋯⋯」
ビクビク怯えながら御者が説明した。
「はぁ? だったらこんな街中で立ち往生って事!? 冗談じゃないわ!! 帰ったらただでは済ませないから覚えてらっしゃい」
「申し訳ございません、直ぐに調べて⋯⋯」
「馬車の整備も真面にできないなんて、少しでも怪我をしていたらお前の命なんかでは済まないってわかってるの!!」
御者の言葉に重ねるように金切り声を上げたカサンドラの前で、真っ青になった御者が震えながら土下座しはじめた。
癇癪を起こすカサンドラと傾いだ馬車を行き交う人達が遠巻きに見ていた。
「こえぇ、あのおばさんヤバくね?」
「あれだから貴族って」
「あっあのぉ⋯⋯カサンドラ様、あちらのお店でお待ちになられてはいかがでしょうか? 席が空いているか直ぐに聞いて参りますので」
母の癇癪を逃れるためか侍女が恐る恐る話しかけた。
「席を探すならさっさとなさい! いつまでわたくしを立たせておくつもり!?」
「はっはい! 申し訳ございません」
走り出した侍女の後ろ姿を横目にローザリアはカサンドラの扇子が突き刺さった喉を押さえ、まだ霞む目でぼうっとカサンドラ達のやりとりを見ていた。
(あれ? この後って⋯⋯)
「あっ、ねこちゃんだー!!」
リリアーナの嬉しそうな声が聞こえた。
(これって⋯⋯そうだ、この後リリアーナが猫を追いかけて⋯⋯)
ローザリアは慌てて周りを見回したがリリアーナの姿が見えない。
(走ってきた馬車に轢かれてリリアーナが怪我して、その責任を取れって言われて⋯⋯)
ローザリアは傾いだ馬車を回り込んで馬車の後ろに回り、既に道の真ん中近くまで飛び出していたリリアーナを見つけ腕をガシッと捕まえた。
「はなしてよ!!」
「駄目よ、危ない!!」
ピーーーピッピーー!
危険を知らせる馬車の警笛が聞こえる。道に無遠慮に停まったトーマック家の大きな馬車を避けるように走ってきた豪奢な馬車は勢いを止められず、リリアーナ達に向けて走ってくる。
大きく口を開けた御者の表情が見える程近い。
(そんな、もう間に合わない!!)
暴れていたリリアーナを後ろに突き飛ばしたローザリアは、勢いを止められない馬に引き摺られて意識を失った。
(なんでこのタイミングかなあ⋯⋯)
(やり直せたら⋯⋯伝えられるかな)
聞き慣れている声のような、知らない人の声のような⋯⋯今のは誰の声だったんだろうと不思議に思いながら、ローザリアはいつものように気配を殺し下を向いていた。
目の前で退屈そうに扇子を揺らしているのはローザリアの母カサンドラ。
いつもなら馴染みの仕立て屋や宝石商を屋敷に呼びつけるカサンドラが何の気まぐれか急に店に行きたいと言い出したため、慌てて馬車を準備させて侍女や護衛を引き連れて出かけてきたのだが⋯⋯。
(急すぎたからかな、毒を飲まされてないし⋯⋯毒?)
新しいドレスを作ってもらえるとご機嫌で馬車の中で飛び跳ねているのはローザリアの二つ年下の妹リリアーナ。
カサンドラもリリアーナほどではないが普段に比べるとかなり機嫌が良さそうにしている。
(今日は叱られないかも)
ガッ、ガガッガタン
ごふっ! どん!
「「きゃあー!」」
馬車が突然大きく傾ぎ前を向いて座っていたカサンドラとリリアーナが座席から投げ出された。その拍子にカサンドラが持っていた扇子が長女ローザリアの喉に突き刺さったが、カサンドラがローザリアを押しのけるように背を起こした。
「ぐぇっ、ゲッ、ゲホッゲホッ」
カサンドラの隣に座っていたリリアーナはカサンドラにしがみついて泣き出した。
「お母様、怖いよー」
「煩いわね、おだまんなさい!!」
カサンドラは天井を叩き御者に向けて金切り声を上げた。
「何やってるのよ!!」
「申し訳ございません、車輪が!」
御者台から慌てた声が聞こえてきて、馬車の横を騎馬でついてきていた護衛が慌ただしく扉を開いた。
馬車に乗っていたのはトーマック公爵夫人のカサンドラと長女のローザリアと次女のリリアーナ。
少し斜めに傾いだ馬車からカサンドラ達3人が降りると2台目の馬車の方から侍女が慌てて駆けてきた。
「カサンドラ様、リリアーナ様。お怪我はございませんか!?」
「怪我があったらここにいる全員打首にしてるわよ!」
「申し訳ございません、あの⋯⋯車輪に異常があったのかも⋯⋯」
ビクビク怯えながら御者が説明した。
「はぁ? だったらこんな街中で立ち往生って事!? 冗談じゃないわ!! 帰ったらただでは済ませないから覚えてらっしゃい」
「申し訳ございません、直ぐに調べて⋯⋯」
「馬車の整備も真面にできないなんて、少しでも怪我をしていたらお前の命なんかでは済まないってわかってるの!!」
御者の言葉に重ねるように金切り声を上げたカサンドラの前で、真っ青になった御者が震えながら土下座しはじめた。
癇癪を起こすカサンドラと傾いだ馬車を行き交う人達が遠巻きに見ていた。
「こえぇ、あのおばさんヤバくね?」
「あれだから貴族って」
「あっあのぉ⋯⋯カサンドラ様、あちらのお店でお待ちになられてはいかがでしょうか? 席が空いているか直ぐに聞いて参りますので」
母の癇癪を逃れるためか侍女が恐る恐る話しかけた。
「席を探すならさっさとなさい! いつまでわたくしを立たせておくつもり!?」
「はっはい! 申し訳ございません」
走り出した侍女の後ろ姿を横目にローザリアはカサンドラの扇子が突き刺さった喉を押さえ、まだ霞む目でぼうっとカサンドラ達のやりとりを見ていた。
(あれ? この後って⋯⋯)
「あっ、ねこちゃんだー!!」
リリアーナの嬉しそうな声が聞こえた。
(これって⋯⋯そうだ、この後リリアーナが猫を追いかけて⋯⋯)
ローザリアは慌てて周りを見回したがリリアーナの姿が見えない。
(走ってきた馬車に轢かれてリリアーナが怪我して、その責任を取れって言われて⋯⋯)
ローザリアは傾いだ馬車を回り込んで馬車の後ろに回り、既に道の真ん中近くまで飛び出していたリリアーナを見つけ腕をガシッと捕まえた。
「はなしてよ!!」
「駄目よ、危ない!!」
ピーーーピッピーー!
危険を知らせる馬車の警笛が聞こえる。道に無遠慮に停まったトーマック家の大きな馬車を避けるように走ってきた豪奢な馬車は勢いを止められず、リリアーナ達に向けて走ってくる。
大きく口を開けた御者の表情が見える程近い。
(そんな、もう間に合わない!!)
暴れていたリリアーナを後ろに突き飛ばしたローザリアは、勢いを止められない馬に引き摺られて意識を失った。
(なんでこのタイミングかなあ⋯⋯)
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