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2.交錯する記憶
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ケホッケホッ。
ローザリアが霞む目を薄らと開けると見慣れた景色が見えた。
(ここ⋯⋯私の部屋だわ。帰ってきた?)
少し硬い藁敷きのベッドと擦り切れた毛布、小さな机と椅子。
(あの椅子⋯⋯足が1本短くて⋯⋯座ると少し傾くのよね。間違いない私の部屋だわ。でも、何で⋯⋯あれ?)
ローザリアはまた意識を失った。
小さな窓から明るい日差しが差し込み、ローザリア以外には誰もいない部屋に微かにピアノの音が聞こえてくる。
(音が外れた⋯⋯リリアーナが最近練習してる曲だわ⋯⋯頭痛いし、腕も火がついたみたい⋯⋯)
ふうふうと息を吐きながら何があったのか思い出そうと悩んだ。
(怪我してる⋯⋯でも、毒を飲んだの⋯⋯馬車⋯⋯違う、牢に⋯⋯)
色々な景色が頭の中をチカチカと駆け巡り目眩と吐き気が酷くなる。
(水が飲みたい⋯⋯ゴミの浮いてない綺麗な水⋯⋯虹色の⋯⋯リリアーナの部屋の掃除しなくちゃ怒られる)
かちりと音がしてそっとドアが開いた。
「お嬢様? 良かった。目が覚めたのですね。御気分はいかがですか?」
「⋯⋯エリサ? エリサだ」
「はい、エリサです。お水はいかがですか? 汲んできたばかりなので冷たくて美味しいですよ」
「ああ、そうか夢なんだ、エリサはもういないって覚えてるもの。私のせいでいなくなったの」
「まあ、私はいつでもここにいますよ」
その後エリサに飲ませてもらった水は本当に冷たくて甘く感じられた。
「まだお熱があるのでお休みくださいませ。少ししたらまた参ります」
「うん」
それから何日もの間ローザリアは熱にうなされながら少しずつ思い出していた。
(エリサがいるなら私はまだ12歳より下だけど、牢で毒杯を賜った筈なのに何故?)
たまにやってくるのはいなくなったはずのエリサと執事のセバスのみ。ローザリアが寝ていると思っているようで小声で話している。
「やっぱり駄目なんですか?」
「ああ、カサンドラ様が必要ないと仰られて。旦那様にもお願いしたが駄目だと言われた」
「熱が下がらないんですよ。このままでは腕のお怪我だってどうなるか。跡が残ってしまったら貴族令嬢として⋯⋯」
「治療師様は高額だからと言われてしまっては私達ではどうする事もできんよ」
「リリアーナ様のかすり傷には治療師様を呼ばれたのに酷いです。あの時一緒にローザリア様の事も治療して頂いていれば少しは違ったかもしれないのに」
「薬師から薬草を少し貰ってきた。これで熱が下がればいいのだが⋯⋯煎じてきてくれないか?」
夢現のローザリアの耳に小声で話すセバスとエリサの心配そうな声が聞こえてくる。
(2人にまた会えた。今回の馬車の事故は2回目⋯⋯巻き戻ったんだ)
ローザリア達の住むベネングラード王国は温暖な気候と肥沃な大地で農業と酪農が盛んな国。
北に聳える山脈は鉱物資源も豊富で、それらの恩恵は初代国王が建国の際に交わした精霊王との盟約からはじまったとされている。精霊を敬い感謝を捧げる事で建国から千年近い今なお多くの聖霊の加護に護られていると言われている。
精霊の加護を持つ者は国で保護され、衣食住のみならず教育や就職など生涯を保障される。与えられた加護により様々な職につき精霊師として国の為に働く事でその一生を保障される。
その為力の強い者達は王宮精霊師として王家や軍に仕えたり、教会で治療師や神官として働く事が義務付けられている。
ローザリアの母、トーマック公爵夫人カサンドラは王弟殿下の娘。16歳の時トーマック公爵と婚姻を結び半年後にはローザリアを出産。その2年後にリリアーナが産まれた。
ウォレス・トーマック公爵とカサンドラはリリアーナだけを溺愛しローザリアには全く関心を寄せなかった。
(私はエリサに育てられた⋯⋯エリサがいてくれたから食事ができて生きていられたのよね)
婚姻前ウォレス以外にも多くの男性と浮名を流していたカサンドラが産んだローザリアは王家やトーマック公爵家にはない白銀の髪と濃い紫の瞳をしている。
その当時カサンドラが付き合っていた恋人の誰かの子供だろうと誰もが噂した。
(婚姻が成立した時お母様は既に妊娠していてお父様は私を自身の娘とは認めなかった。お母様は私のせいで無理矢理お父様と結婚させられたって腹を立ててる)
部屋から出ることは許されず両親や妹に会う事なく育ったローザリアだが、7歳を過ぎた頃に一度だけ応接室に呼ばれたことがあった。
それは、ローザリアの一度目の人生の大きなターニングポイントとなる出会いがあった日だった。
ローザリアが霞む目を薄らと開けると見慣れた景色が見えた。
(ここ⋯⋯私の部屋だわ。帰ってきた?)
少し硬い藁敷きのベッドと擦り切れた毛布、小さな机と椅子。
(あの椅子⋯⋯足が1本短くて⋯⋯座ると少し傾くのよね。間違いない私の部屋だわ。でも、何で⋯⋯あれ?)
ローザリアはまた意識を失った。
小さな窓から明るい日差しが差し込み、ローザリア以外には誰もいない部屋に微かにピアノの音が聞こえてくる。
(音が外れた⋯⋯リリアーナが最近練習してる曲だわ⋯⋯頭痛いし、腕も火がついたみたい⋯⋯)
ふうふうと息を吐きながら何があったのか思い出そうと悩んだ。
(怪我してる⋯⋯でも、毒を飲んだの⋯⋯馬車⋯⋯違う、牢に⋯⋯)
色々な景色が頭の中をチカチカと駆け巡り目眩と吐き気が酷くなる。
(水が飲みたい⋯⋯ゴミの浮いてない綺麗な水⋯⋯虹色の⋯⋯リリアーナの部屋の掃除しなくちゃ怒られる)
かちりと音がしてそっとドアが開いた。
「お嬢様? 良かった。目が覚めたのですね。御気分はいかがですか?」
「⋯⋯エリサ? エリサだ」
「はい、エリサです。お水はいかがですか? 汲んできたばかりなので冷たくて美味しいですよ」
「ああ、そうか夢なんだ、エリサはもういないって覚えてるもの。私のせいでいなくなったの」
「まあ、私はいつでもここにいますよ」
その後エリサに飲ませてもらった水は本当に冷たくて甘く感じられた。
「まだお熱があるのでお休みくださいませ。少ししたらまた参ります」
「うん」
それから何日もの間ローザリアは熱にうなされながら少しずつ思い出していた。
(エリサがいるなら私はまだ12歳より下だけど、牢で毒杯を賜った筈なのに何故?)
たまにやってくるのはいなくなったはずのエリサと執事のセバスのみ。ローザリアが寝ていると思っているようで小声で話している。
「やっぱり駄目なんですか?」
「ああ、カサンドラ様が必要ないと仰られて。旦那様にもお願いしたが駄目だと言われた」
「熱が下がらないんですよ。このままでは腕のお怪我だってどうなるか。跡が残ってしまったら貴族令嬢として⋯⋯」
「治療師様は高額だからと言われてしまっては私達ではどうする事もできんよ」
「リリアーナ様のかすり傷には治療師様を呼ばれたのに酷いです。あの時一緒にローザリア様の事も治療して頂いていれば少しは違ったかもしれないのに」
「薬師から薬草を少し貰ってきた。これで熱が下がればいいのだが⋯⋯煎じてきてくれないか?」
夢現のローザリアの耳に小声で話すセバスとエリサの心配そうな声が聞こえてくる。
(2人にまた会えた。今回の馬車の事故は2回目⋯⋯巻き戻ったんだ)
ローザリア達の住むベネングラード王国は温暖な気候と肥沃な大地で農業と酪農が盛んな国。
北に聳える山脈は鉱物資源も豊富で、それらの恩恵は初代国王が建国の際に交わした精霊王との盟約からはじまったとされている。精霊を敬い感謝を捧げる事で建国から千年近い今なお多くの聖霊の加護に護られていると言われている。
精霊の加護を持つ者は国で保護され、衣食住のみならず教育や就職など生涯を保障される。与えられた加護により様々な職につき精霊師として国の為に働く事でその一生を保障される。
その為力の強い者達は王宮精霊師として王家や軍に仕えたり、教会で治療師や神官として働く事が義務付けられている。
ローザリアの母、トーマック公爵夫人カサンドラは王弟殿下の娘。16歳の時トーマック公爵と婚姻を結び半年後にはローザリアを出産。その2年後にリリアーナが産まれた。
ウォレス・トーマック公爵とカサンドラはリリアーナだけを溺愛しローザリアには全く関心を寄せなかった。
(私はエリサに育てられた⋯⋯エリサがいてくれたから食事ができて生きていられたのよね)
婚姻前ウォレス以外にも多くの男性と浮名を流していたカサンドラが産んだローザリアは王家やトーマック公爵家にはない白銀の髪と濃い紫の瞳をしている。
その当時カサンドラが付き合っていた恋人の誰かの子供だろうと誰もが噂した。
(婚姻が成立した時お母様は既に妊娠していてお父様は私を自身の娘とは認めなかった。お母様は私のせいで無理矢理お父様と結婚させられたって腹を立ててる)
部屋から出ることは許されず両親や妹に会う事なく育ったローザリアだが、7歳を過ぎた頃に一度だけ応接室に呼ばれたことがあった。
それは、ローザリアの一度目の人生の大きなターニングポイントとなる出会いがあった日だった。
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