【完結】何度出会ってもやっぱり超絶腹黒聖職者

との

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一回目 (過去)

5.激震 はじまりの時

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「全然雨が降らないわねえ」

「今年は野菜も穀物も駄目だってさ」

「これ以上値上がりしたら食ってけないよ」



 去年の暮れから王国では大規模な旱魃が起こっていた。

 あちこちの池が干上がり井戸の水も心もとなくなっていき畑はひび割れはじめた。家畜は痩せ細り人々は食べる物にも飲み水にも困窮する様になっていった。

 麦や羊毛の輸出で稼いでいた外貨も税収も激減した王国は、水の精霊の加護を受けた精霊師達を各所に派遣した。

 しかし彼等は何故か普段程力を発揮できず⋯⋯僅かばかりの水は干からびた大地に吸い込まれるばかりでほとんど役に立たないでいた。


「水の精霊の力が使えんだと!! 今まで大金をかけて養ってやっていたと言うに、肝心な時に水ひとつ真面に出せんなどと一体何をしておるのだ!! 雨のひとつくらい降らせてみよ!」

 玉座に座り青筋を立てて怒鳴るのはサルバトーレ・ベルスペクト国王陛下。齢60が近い国王は白髪を振り乱し、目の前で平伏している王宮精霊師団団長のコーマック・ランブリー侯爵を睨みつけた。

「恐れながら申し上げます。例え水の精霊の加護があっても雨を降らすことは不可能でございます」

「ならば役立たずどもは何ができると言うのだ!?」

「本来であれば池や井戸に水を溜め、畑に水を撒くことができます。ただ⋯⋯かの者達も懸命に努力しておりますが⋯⋯皆、水の精霊の光が弱く祈りが届きにくいと申しておりまして」

 精霊師達が皆で力を合わせ一日中祈りを捧げても、ほんの僅かばかりの水しか呼べないでいる。国王の逆鱗に触れると知っていても言わざるを得ない。


「まさか、加護の力が失せたのではあるまいな!?」

「一度戴いた加護はなくなったりなどしません。
ただ、今は一時的に力が弱まっているようだと申しておりました。その理由が分からず調べておりますれば、今少しお時間をいただきたいと」


 冷や汗を拭きながら必死で言い募るランブリー団長は国王の顔色を伺った。

 短気な国王の機嫌を損ねれば予算を減らされたり、精霊師達への厳罰も考えられる。最悪は自身の進退が危うい。

「して、貴様は呑気にその調査報告を待っておると言うことか。精霊師達が役立たずなのは誰の責任じゃ?」


 はじめに比べればかなり落ち着いた様子の国王は精霊師達の力不足の責任を問いはじめた。

「いえ、呑気などとんでもございません。此度は陛下に学生の動員をお願いしたく参上いたしました。学園生の中で特に優秀な者達を各地に派遣・協力を求める事ができればと」

「ふむ。学生などが役に立つのであろうか。セルゲイ、其方宰相としてどう思う?」

「精霊師の力が弱まっておるのならばそれも良いかもしれません。質が伴わないのであれば量で賄えば少しでも助かるのは事実です。
ランブリー団長と学園長の話では近年稀に見る逸材が多く在籍しているそうで、彼等のために予算の増額を申請しておられます」

「ええ、まさにその通りでございます。
現在学園にはトーマック公爵令嬢が在籍しておられ、王宮精霊師に勝るとも劣らない実力の持ち主でございます。
若干13歳のリリアーナ嬢の力で公爵領の水不足はさほど深刻ではないと聞き及んでおります。その時には多くの精霊達が虹色に輝き池に大量の水を湛え、僅かばかりの雨も降ったと聞いております」

 セルゲイ宰相の後押しに気を良くしたランブリー団長は滔々とリリアーナを褒め称えた。


「確かに、トーマック公爵家の娘であれば⋯⋯加護の力が強い可能性はあるが⋯⋯雨か」

「調べたところによると、学園での成績があまり芳しくないのが気になるところですが⋯⋯まあ、トーマック公爵が夜会などで吹聴している話が真実であるのならば役に立つかもしれません」

 宰相はリリアーナの評判を怪しんでいるようで歯切れの悪い話し方をしている。


「まだ幼い子供であれば不安定であったりしてもおかしくはありますまい。
代々水の加護を戴いてきたトーマック公爵家の血を引くリリアーナ嬢はカサンドラ様のお子でもあらせられます」

 ウォレス・トーマック公爵は弱いながらも水の加護を戴いたが、残念ながら魔力が少なく加護を行使できなかった。それに対しカサンドラは魔力は比較的多いが加護がない。



「リリアーナ嬢か。トーマック公爵家の強い加護を受け継いでいると聞いておるが王家の血筋ならば光の加護が⋯⋯」

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