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一回目 (過去)
6.リリアーナへの賞賛と期待
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「リリアーナ嬢は水の加護と聞いておりますし、複数の加護を持つ者や加護が変質する者はおりません。少量であっても領地に雨を降らせたのが事実であるならば、風の加護と光の加護3種類の複合であることが必須のはずです。
その場に風や光の加護持ちがおりリリアーナ様と共闘したと考えるのが妥当でしょう」
王国における一般常識だと宰相が正論を述べた。
「光の加護の発現は他の加護より遅いのです。確かなことは申せませんが、リリアーナ様のお生まれを鑑みるに⋯⋯新しく加護が発現している、若しくは今後発現する可能性もなきにしもあらず。今までいなかったとしてもないとは言い切れますまい!」
「複数の加護の発現などあり得ん、しかも風の加護は⋯⋯」
宰相の言葉を無視して膝を乗り出し嬉々としてリリアーナを褒め称えるランブリー団長に比べ、セルゲイ宰相はトーマック公爵の話を内心訝しんでいた。
宰相の調べたところにによると入学時のリリアーナの能力は平凡よりやや上といったところ。
水の加護を持ち魔力もそれなりにあるがそれ以外は合格ギリギリのライン。王宮精霊師の基準で言えば中の下程度だった。
(13歳と言う年齢で考えれば将来性ありとも言えるが、たった1年で公爵が言うように王宮精霊師に勝るほどの能力が発現したなど現実的ではない。しかし雨か⋯⋯)
「学園での成績を考えると、一度教会で調べてからでも良いかとは思いますが?」
「能ある鷹は爪を隠すと申します。トーマック公爵からはリリアーナ様は『学園の実習で実力を誇示する必要を感じていない』だけだと申しておられました。
リリアーナ様は『これ以上特別な存在になるのは嫌』だと嫌がっておいでですし、教会で調べ直さずとも結果を見れば良いのではありませんか?」
大言壮語ばかり吐き胡散臭いトーマック公爵と口ばかりで浪費と虚栄にしか興味のないカサンドラの娘は、権力を笠に着た振る舞いと強者に媚びて阿る裏表のある令嬢だとセルゲイ宰相へ報告が上がっている。
(トーマック公爵は精霊師団の理事のひとり⋯⋯リリアーナ嬢の実力を調べるにはいい機会なのかもしれん)
「ランブリー団長がそれほど絶賛されるのであれば派遣の依頼をされても良いかもしれません。他にも将来有望な学生もおりますし、彼等の実力を測る良い機会になると思います」
「では、学園生の派遣を許可する。学園長と協議の上、急ぎメンバーの選出を行うように」
「は、御意にございます」
陛下の御前を辞したランブリー団長は真っ先にトーマック公爵邸を訪れた。応接室に案内された団長がソファに座るや否や、満面の笑みを浮かべたウォレスがカサンドラを伴いやって来た。
「やはり、陛下は我が公爵家を頼りにされておられるのだな」
「セルゲイ宰相もリリアーナ嬢の実力を認めておられました。陛下のご期待に沿えるのはトーマック公爵家のみだと。
恐らく、今回の件が終わり次第王家より勲章や報償を賜ることになるでしょう」
「流石の能無し宰相もトーマック公爵家の能力には反論するどころかぐうの音も出んかったか。責任を取らせ宰相の座を明け渡させるのが良いかもしれん」
「その通りですわ。学園生の派遣でさえ思い至らずただ手をこまねいているだけの宰相では国の将来が不安ですものね。
お父様からもその旨陛下に進言して頂きましょう」
「その時はマーシャル伯爵が良いかもしれんな。奴ならばワシの意に沿う政策を提案するであろう」
ランブリー団長と同じ公爵の腰巾着のマーシャルなら⋯⋯。
その日学園から帰って来て話を聞いたリリアーナは狂喜乱舞。体調を整えるため暫くの間学園を休むと宣言し、お祝いに新しいドレスやアクセサリーを強請った。
「聞いた? リリアーナ様はやっぱり凄いわねー。誰かさんとは大違い」
「国王陛下と宰相、それに王宮精霊師団長のお墨付きだぞ。俺たちの将来は間違いないな」
「リリアーナ様の専属で良かった~。報償をいただいたら私達にも何か貰えるかも」
「宰相は役立たずだからリリアーナ様の遠征が終わられたらお払い箱にするって~。流石公爵家! マーシャル伯爵が新しい宰相だって」
屋敷のあちこちでメイドや侍従達が浮き足立って噂をする中でローザリアは黙々と仕事をしていた。
(リリアーナは凄いんだ。あっ、失敗したらお父様達の機嫌が悪くなってしまうから頑張ってもらわないとなぁ)
リリアーナが精霊魔法を使う場面には何度か出くわしたことがあるがその他の精霊師に会ったことがない。リリアーナの実力など想像もできないローザリアは心から成功を祈っていた。
その場に風や光の加護持ちがおりリリアーナ様と共闘したと考えるのが妥当でしょう」
王国における一般常識だと宰相が正論を述べた。
「光の加護の発現は他の加護より遅いのです。確かなことは申せませんが、リリアーナ様のお生まれを鑑みるに⋯⋯新しく加護が発現している、若しくは今後発現する可能性もなきにしもあらず。今までいなかったとしてもないとは言い切れますまい!」
「複数の加護の発現などあり得ん、しかも風の加護は⋯⋯」
宰相の言葉を無視して膝を乗り出し嬉々としてリリアーナを褒め称えるランブリー団長に比べ、セルゲイ宰相はトーマック公爵の話を内心訝しんでいた。
宰相の調べたところにによると入学時のリリアーナの能力は平凡よりやや上といったところ。
水の加護を持ち魔力もそれなりにあるがそれ以外は合格ギリギリのライン。王宮精霊師の基準で言えば中の下程度だった。
(13歳と言う年齢で考えれば将来性ありとも言えるが、たった1年で公爵が言うように王宮精霊師に勝るほどの能力が発現したなど現実的ではない。しかし雨か⋯⋯)
「学園での成績を考えると、一度教会で調べてからでも良いかとは思いますが?」
「能ある鷹は爪を隠すと申します。トーマック公爵からはリリアーナ様は『学園の実習で実力を誇示する必要を感じていない』だけだと申しておられました。
リリアーナ様は『これ以上特別な存在になるのは嫌』だと嫌がっておいでですし、教会で調べ直さずとも結果を見れば良いのではありませんか?」
大言壮語ばかり吐き胡散臭いトーマック公爵と口ばかりで浪費と虚栄にしか興味のないカサンドラの娘は、権力を笠に着た振る舞いと強者に媚びて阿る裏表のある令嬢だとセルゲイ宰相へ報告が上がっている。
(トーマック公爵は精霊師団の理事のひとり⋯⋯リリアーナ嬢の実力を調べるにはいい機会なのかもしれん)
「ランブリー団長がそれほど絶賛されるのであれば派遣の依頼をされても良いかもしれません。他にも将来有望な学生もおりますし、彼等の実力を測る良い機会になると思います」
「では、学園生の派遣を許可する。学園長と協議の上、急ぎメンバーの選出を行うように」
「は、御意にございます」
陛下の御前を辞したランブリー団長は真っ先にトーマック公爵邸を訪れた。応接室に案内された団長がソファに座るや否や、満面の笑みを浮かべたウォレスがカサンドラを伴いやって来た。
「やはり、陛下は我が公爵家を頼りにされておられるのだな」
「セルゲイ宰相もリリアーナ嬢の実力を認めておられました。陛下のご期待に沿えるのはトーマック公爵家のみだと。
恐らく、今回の件が終わり次第王家より勲章や報償を賜ることになるでしょう」
「流石の能無し宰相もトーマック公爵家の能力には反論するどころかぐうの音も出んかったか。責任を取らせ宰相の座を明け渡させるのが良いかもしれん」
「その通りですわ。学園生の派遣でさえ思い至らずただ手をこまねいているだけの宰相では国の将来が不安ですものね。
お父様からもその旨陛下に進言して頂きましょう」
「その時はマーシャル伯爵が良いかもしれんな。奴ならばワシの意に沿う政策を提案するであろう」
ランブリー団長と同じ公爵の腰巾着のマーシャルなら⋯⋯。
その日学園から帰って来て話を聞いたリリアーナは狂喜乱舞。体調を整えるため暫くの間学園を休むと宣言し、お祝いに新しいドレスやアクセサリーを強請った。
「聞いた? リリアーナ様はやっぱり凄いわねー。誰かさんとは大違い」
「国王陛下と宰相、それに王宮精霊師団長のお墨付きだぞ。俺たちの将来は間違いないな」
「リリアーナ様の専属で良かった~。報償をいただいたら私達にも何か貰えるかも」
「宰相は役立たずだからリリアーナ様の遠征が終わられたらお払い箱にするって~。流石公爵家! マーシャル伯爵が新しい宰相だって」
屋敷のあちこちでメイドや侍従達が浮き足立って噂をする中でローザリアは黙々と仕事をしていた。
(リリアーナは凄いんだ。あっ、失敗したらお父様達の機嫌が悪くなってしまうから頑張ってもらわないとなぁ)
リリアーナが精霊魔法を使う場面には何度か出くわしたことがあるがその他の精霊師に会ったことがない。リリアーナの実力など想像もできないローザリアは心から成功を祈っていた。
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