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一回目 (過去)
7.オーレアンへ
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それから1週間後。学園生の20人とリリアーナはランブリー団長に連れられて王都を出発し、トーマック公爵夫妻もリリアーナの初舞台に立ち会う為に馬車を仕立てて現地へ向かった。
公爵達の乗る4頭建ての豪奢なキャリッジは金色に輝きその周りを大勢の護衛が取り囲んでいる。その後ろに続くメイド達が乗る馬車2台と大量の荷物が積まれた荷馬車。
「凄いわね~。流石公爵家の馬車だわ」
「一人娘の晴れ舞台を祝いに行くんだってさ。これで水不足が解消されたら助かるぜ」
「野菜も安くなるのかねえ」
沿道には多くの平民が集まり彼等の出発を盛大に祝っていた。ローザリアは荷馬車の荷物の間から沿道の人々の晴れやかな顔を眺めリリアーナ達が皆の期待に応えてくれる事を心から祈っていた。
(学園生の皆さん、どうか頑張って)
王都を出発して4日目、漸く目的地のオーレアンに着いた。
オーレアンはベルスペクト王国内でも旱魃の被害が大きい領の一つで、本来は北に位置するアシッド山脈の雪解け水が領地を二分して流れるローゼンヌ川へと流れ込む。あちこちには川から水を引いた溜池があり農業用水として活用されていた。
山裾には国王が毎年避暑に訪れる風光明媚な温泉地もあり農業と観光の名所として知られる王家の直轄領。
学園生やトーマック公爵達が到着した時には既に近隣の領地や旱魃に憂う領主達の使節団が列をなし、宿に泊まれなかった者達のテントがあちこちに散在していた。
「お待ちしておりました」
領主館の前で一向を出迎えたのはオーレアンを管理している家令のレオナルド・ルーバン。満面の笑みを浮かべ今にも手揉みしそうな勢いのルーバンはトーマック公爵夫妻に向けて挨拶をした。
「うむ、出迎えご苦労」
大仰な態度で周りを見回したウォレスの横にいるのは不機嫌なカサンドラ。
「カサンドラ様におかれましては長旅でさぞお疲れのことと存じます。部屋の準備は整っておりますので、そちらで少し休まれてはいかがでしょうか?」
「ほんと、馬車の旅は本当にうんざり。早く湯浴みして身体を休めたいわ」
「はい、勿論準備できております。お部屋も以前気に入って頂けた薔薇の間をご用意致しております。おい、さっさとご案内を」
トーマック公爵夫妻が屋敷に向かうのを確認したルーバンがランブリー団長の元に向かった。
「お疲れ様でございます。ランブリー団長のお部屋は屋敷内に、学園生の方々のお部屋は別館に準備致しております」
「ちょっと! まさか私まで別館に押し込むつもりじゃないわよね。お父様やお母様と同じ扱いにしてちょうだい!」
「ああ、大変申し訳ありませんでした。リリアーナ・トーマック公爵令嬢様はカサンドラ様のお隣のお部屋をご準備させて頂いております」
「そう、それならいいわ。メイドに荷物を運ばせて! はぁ疲れた。公爵家の馬車ならあんなに揺れなかったのに」
冷ややかな目で睨む学園生達を無視したままリリアーナはさっさと屋敷に向かって歩いて行った。
「ではみんな各自荷物を持って案内について行くように。2時間後に別館の正面に集合だ。サットン、みんなの部屋割りを頼む」
今回の派遣で学園生のリーダーに抜擢されたマーカス・サットンは学園の最上級生。
「はい。あの、リリアーナ嬢への連絡はどうしますか?」
「あー、こちらから連絡しておこう」
苛立たしげな顔をしていたサットンはランブリー団長の返答にホッと胸を撫で下ろした。恐らく旅の間中不満を言い続けるリリアーナに辟易していたのだろう。
「じゃあ、みんな荷物を準備してくれ」
ランブリー団長達のやりとりを横目に見ながら荷物を運んでいたローザリアはリリアーナがこれ以上学園生達の輪を乱さないで力を発揮できるよう願うしかなかった。
(多分明日か⋯⋯遅くても明後日? できるだけ沢山の水が作れると良いんだけど)
館までの道は土埃が舞い見渡す限りの畑には細く萎びたような作物ばかり。予想以上に荒れ果てた畑にショックを受けたローザリアは水の精霊達と学園生達に心の中でエールを送っていた。
ローザリアがリリアーナの部屋に着いた時、リリアーナは湯浴みをしているところだった。リリアーナの大きなトランクから急いで着替えを出し、皺がないか解れや汚れがないか確認してお茶とお茶菓子の準備に厨房へ走った。
(多分一階に行けば誰かいるはず)
リリアーナにあてがわれた2階の部屋から階段を駆け下りてキョロキョロと辺りを見回すと、玄関ホールに膝丈の半ズボンにストッキングという伝統的な衣装を着用した見目の良い男性が立っていた。
(多分従僕ね。背が高くて見た目が良くて綺麗な足をこれ見よがしに見せ付けてるもの)
「すみません。厨房はどこでしょうか?」
公爵達の乗る4頭建ての豪奢なキャリッジは金色に輝きその周りを大勢の護衛が取り囲んでいる。その後ろに続くメイド達が乗る馬車2台と大量の荷物が積まれた荷馬車。
「凄いわね~。流石公爵家の馬車だわ」
「一人娘の晴れ舞台を祝いに行くんだってさ。これで水不足が解消されたら助かるぜ」
「野菜も安くなるのかねえ」
沿道には多くの平民が集まり彼等の出発を盛大に祝っていた。ローザリアは荷馬車の荷物の間から沿道の人々の晴れやかな顔を眺めリリアーナ達が皆の期待に応えてくれる事を心から祈っていた。
(学園生の皆さん、どうか頑張って)
王都を出発して4日目、漸く目的地のオーレアンに着いた。
オーレアンはベルスペクト王国内でも旱魃の被害が大きい領の一つで、本来は北に位置するアシッド山脈の雪解け水が領地を二分して流れるローゼンヌ川へと流れ込む。あちこちには川から水を引いた溜池があり農業用水として活用されていた。
山裾には国王が毎年避暑に訪れる風光明媚な温泉地もあり農業と観光の名所として知られる王家の直轄領。
学園生やトーマック公爵達が到着した時には既に近隣の領地や旱魃に憂う領主達の使節団が列をなし、宿に泊まれなかった者達のテントがあちこちに散在していた。
「お待ちしておりました」
領主館の前で一向を出迎えたのはオーレアンを管理している家令のレオナルド・ルーバン。満面の笑みを浮かべ今にも手揉みしそうな勢いのルーバンはトーマック公爵夫妻に向けて挨拶をした。
「うむ、出迎えご苦労」
大仰な態度で周りを見回したウォレスの横にいるのは不機嫌なカサンドラ。
「カサンドラ様におかれましては長旅でさぞお疲れのことと存じます。部屋の準備は整っておりますので、そちらで少し休まれてはいかがでしょうか?」
「ほんと、馬車の旅は本当にうんざり。早く湯浴みして身体を休めたいわ」
「はい、勿論準備できております。お部屋も以前気に入って頂けた薔薇の間をご用意致しております。おい、さっさとご案内を」
トーマック公爵夫妻が屋敷に向かうのを確認したルーバンがランブリー団長の元に向かった。
「お疲れ様でございます。ランブリー団長のお部屋は屋敷内に、学園生の方々のお部屋は別館に準備致しております」
「ちょっと! まさか私まで別館に押し込むつもりじゃないわよね。お父様やお母様と同じ扱いにしてちょうだい!」
「ああ、大変申し訳ありませんでした。リリアーナ・トーマック公爵令嬢様はカサンドラ様のお隣のお部屋をご準備させて頂いております」
「そう、それならいいわ。メイドに荷物を運ばせて! はぁ疲れた。公爵家の馬車ならあんなに揺れなかったのに」
冷ややかな目で睨む学園生達を無視したままリリアーナはさっさと屋敷に向かって歩いて行った。
「ではみんな各自荷物を持って案内について行くように。2時間後に別館の正面に集合だ。サットン、みんなの部屋割りを頼む」
今回の派遣で学園生のリーダーに抜擢されたマーカス・サットンは学園の最上級生。
「はい。あの、リリアーナ嬢への連絡はどうしますか?」
「あー、こちらから連絡しておこう」
苛立たしげな顔をしていたサットンはランブリー団長の返答にホッと胸を撫で下ろした。恐らく旅の間中不満を言い続けるリリアーナに辟易していたのだろう。
「じゃあ、みんな荷物を準備してくれ」
ランブリー団長達のやりとりを横目に見ながら荷物を運んでいたローザリアはリリアーナがこれ以上学園生達の輪を乱さないで力を発揮できるよう願うしかなかった。
(多分明日か⋯⋯遅くても明後日? できるだけ沢山の水が作れると良いんだけど)
館までの道は土埃が舞い見渡す限りの畑には細く萎びたような作物ばかり。予想以上に荒れ果てた畑にショックを受けたローザリアは水の精霊達と学園生達に心の中でエールを送っていた。
ローザリアがリリアーナの部屋に着いた時、リリアーナは湯浴みをしているところだった。リリアーナの大きなトランクから急いで着替えを出し、皺がないか解れや汚れがないか確認してお茶とお茶菓子の準備に厨房へ走った。
(多分一階に行けば誰かいるはず)
リリアーナにあてがわれた2階の部屋から階段を駆け下りてキョロキョロと辺りを見回すと、玄関ホールに膝丈の半ズボンにストッキングという伝統的な衣装を着用した見目の良い男性が立っていた。
(多分従僕ね。背が高くて見た目が良くて綺麗な足をこれ見よがしに見せ付けてるもの)
「すみません。厨房はどこでしょうか?」
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