天使がくれた259日の時間
「あなたがお腹にいてくれた259日間。私達夫婦は幸せでした……」
1990年(平成2年)、滋賀県長浜市。琵琶湖(びわこ)が一望出来る湖岸付近に、一組の夫婦が暮らしていた。
夫、遠藤樹(えんどう いつき)。妻、遠藤小春(えんどう こはる)。二人は結婚して13年、互いに35歳。
無愛想だが心優しく茶めっけがある樹と、穏やかで明るく気立ての良い小春。二人は仲の良い夫婦だったが、子宝に恵まれず十年に及ぶ不妊治療に励んでいた。
その頑張りが実を結び待望の第一子を授かった夫婦は、来年は三人でこの美しい空と桜を見れるだろうと期待に胸に膨らませていた。
季節が巡る中で胎児はすくすくと育ち、安産祈願、母親学級、ベビー用品の購入と夫婦は子供を迎える準備をし、生まれてきてくれるその時を待ち望んでいた。
……しかし夫婦は知らなかった。子供は身籠れば、必ず無事に生まれて来てくれる訳ではない事を……。
出産直前の妊婦検診で医師より告げられたのは、「胎児の心拍が止まっている」という残酷な現実だった。
この物語は一組の夫婦が我が子の死を二人で乗り越え、次の新たな生命の誕生を迎えるまでの夫婦の物語。
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