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一回目 (過去)
87.シスター・タニアと共に
この夜からローザリアはシスター・タニアと同泊する事になった。
「ナスタリア神父が同行できない時は私がお供することになりましたので宜しくお願いします」
「こちらこそ、なるべくご迷惑をかけないよう気をつけます」
手間をかけさせて申し訳ないと恐縮していたローザリアだったがシスター・タニアは世話係よりも護衛としての比重が高い。
雨を降らすほどの力を持っていると公になったローザリアを狙う者は今後どんどん増えていくだろう。ローザリアの失敗を望む者はどんな手を使って妨害してくるかわからない。
命の危険から守る為ナスタリア神父とニール、シスター・タニアの3人が24時間体制で護衛につく事になった。
「ローザリア様のご様子を拝見させていただいてきましたが、迷惑がかかるくらいがちょうど良さそうです。貴族令嬢のように全てメイドに任せる感じでお願いします」
「⋯⋯私の知っている貴族令嬢はカサンドラ様とリリアーナだけなので、ちょっと厳しいと」
「それは⋯⋯確かにあの方を真似されては⋯⋯うーん。ちょっと思いつきませんが少しずつ慣れていただけるようお声をかけさせて頂きます」
「宜しくお願いします」
「はい、ではまず最初にお願いをしてもよろしいですか?」
シスター・タニアの言葉にローザリアは背を正した。
「ごめんなさいと敬語はなしでお願いします。謝られるよりもありがとうの方が嬉しいですから」
「はい、分かりました。癖でつい謝っちゃうので気をつけますね」
(そう言えばナスタリア神父にも言われたんだった)
「それとほんのちょっとだからと、お一人にならないでください。例えばちょっとお花摘みにとか、ちょっと馬車に物を取りにとか」
「えーっと、はい」
「あまり難しく考えずどんどん甘えてくれると嬉しいです」
「宜しくお願いします」
ローザリアはペコリと頭を下げながら『甘える』方法が想像できなくて内心首を捻っていた。
宿のベッドは思いの外柔らかく爆睡したローザリアが起きあがるとシスター・タニアも目を覚ました。
「おはようございます。お目覚めですか?」
「はい、おはようございます。習慣でつい。シスター・タニアはまだ休んでいても大丈夫。向こうの部屋で大人しく本を読んでいますから」
「朝はいつも?」
「夜明けと共に起きる癖がついていて」
ローザリアの泊まった部屋はこの町で一番良い部屋で、テーブルとソファのセットが置かれた居間とベッドルームの二部屋に分かれている。
トイレや風呂とミニキッチンもついているのでいちいち湯を頼む必要がない。
ローザリアがベッドルームを出ようとするとシスター・タニアも起き上がった。
「向こうの部屋を確認するまで待って下さいね」
ガウンに袖を通したシスター・タニアが居間を一通り確認して戻ってきた。
「すみま⋯⋯ありがとう」
夜のうちに準備しておいたランプをつけて本を開いた。
ローザリアは精霊魔法で灯りをつけることもできるが、ランプは魔石を使う物を使っている。火の魔法が使えることを知られない為にと、ナスタリア神父が準備してくれた。
「もし良かったら本を見せていただいても?」
「はい、教会からお借りした本なのでご存知かもしれませんが」
今読んでいるのは王国の歴史書。王家の出版した物と教会が出版したものの両方を読み比べている。
「精霊王との盟約や精霊に対する考え方が違うのですごく興味深くて」
王家の出版物では精霊の力をいかに有効に使い国を栄えさせてきたかが書かれ、教会はどのような恩恵をいただいてきたのかが書かれている。
「見る方向と言うか、ほんのちょっと見方を変えるとこんなに違ってくるのかって」
「両方の考えを知るのはとてもいい勉強法ですね。ローザリア様が貴族社会に戻られたら教会の考え方ではやっていけませんから。
お互い相容れない考えなのにやっている事は同じ⋯⋯精霊の力なくしては成り立たない暮らしをしているのですから不思議なものです」
平民になるつもりのローザリアが暮らす世界も王家の本に書かれている世界なのだろう。
シスター・タニアが湯を沸かしお茶を淹れてくれた。向かい合って座り温かいお茶を飲みながらのんびりと本を読んだ。
降り続いていた雨が明け方からやんだ。
早めの朝食の後、ローザリア達は町を出発する為に広場に集まった。
「お礼も何もできていなくて申し訳ないです。せめてゆっくりしていただける時間があれば良かったんですが」
広場には町の人が集まり食べ物や果物を精霊師に渡している。町長は仕置きのために部屋に閉じ込めているそうで、代わりに自警団の団長をしている商会長が挨拶をする為に前に出てきた。
「食事もお部屋もありがとうございました」
「あの、これを」
宿の亭主が差し出してきたのはナスタリア神父が渡した皮の袋で宿代や食事代が入っていた。
「ナスタリア神父が同行できない時は私がお供することになりましたので宜しくお願いします」
「こちらこそ、なるべくご迷惑をかけないよう気をつけます」
手間をかけさせて申し訳ないと恐縮していたローザリアだったがシスター・タニアは世話係よりも護衛としての比重が高い。
雨を降らすほどの力を持っていると公になったローザリアを狙う者は今後どんどん増えていくだろう。ローザリアの失敗を望む者はどんな手を使って妨害してくるかわからない。
命の危険から守る為ナスタリア神父とニール、シスター・タニアの3人が24時間体制で護衛につく事になった。
「ローザリア様のご様子を拝見させていただいてきましたが、迷惑がかかるくらいがちょうど良さそうです。貴族令嬢のように全てメイドに任せる感じでお願いします」
「⋯⋯私の知っている貴族令嬢はカサンドラ様とリリアーナだけなので、ちょっと厳しいと」
「それは⋯⋯確かにあの方を真似されては⋯⋯うーん。ちょっと思いつきませんが少しずつ慣れていただけるようお声をかけさせて頂きます」
「宜しくお願いします」
「はい、ではまず最初にお願いをしてもよろしいですか?」
シスター・タニアの言葉にローザリアは背を正した。
「ごめんなさいと敬語はなしでお願いします。謝られるよりもありがとうの方が嬉しいですから」
「はい、分かりました。癖でつい謝っちゃうので気をつけますね」
(そう言えばナスタリア神父にも言われたんだった)
「それとほんのちょっとだからと、お一人にならないでください。例えばちょっとお花摘みにとか、ちょっと馬車に物を取りにとか」
「えーっと、はい」
「あまり難しく考えずどんどん甘えてくれると嬉しいです」
「宜しくお願いします」
ローザリアはペコリと頭を下げながら『甘える』方法が想像できなくて内心首を捻っていた。
宿のベッドは思いの外柔らかく爆睡したローザリアが起きあがるとシスター・タニアも目を覚ました。
「おはようございます。お目覚めですか?」
「はい、おはようございます。習慣でつい。シスター・タニアはまだ休んでいても大丈夫。向こうの部屋で大人しく本を読んでいますから」
「朝はいつも?」
「夜明けと共に起きる癖がついていて」
ローザリアの泊まった部屋はこの町で一番良い部屋で、テーブルとソファのセットが置かれた居間とベッドルームの二部屋に分かれている。
トイレや風呂とミニキッチンもついているのでいちいち湯を頼む必要がない。
ローザリアがベッドルームを出ようとするとシスター・タニアも起き上がった。
「向こうの部屋を確認するまで待って下さいね」
ガウンに袖を通したシスター・タニアが居間を一通り確認して戻ってきた。
「すみま⋯⋯ありがとう」
夜のうちに準備しておいたランプをつけて本を開いた。
ローザリアは精霊魔法で灯りをつけることもできるが、ランプは魔石を使う物を使っている。火の魔法が使えることを知られない為にと、ナスタリア神父が準備してくれた。
「もし良かったら本を見せていただいても?」
「はい、教会からお借りした本なのでご存知かもしれませんが」
今読んでいるのは王国の歴史書。王家の出版した物と教会が出版したものの両方を読み比べている。
「精霊王との盟約や精霊に対する考え方が違うのですごく興味深くて」
王家の出版物では精霊の力をいかに有効に使い国を栄えさせてきたかが書かれ、教会はどのような恩恵をいただいてきたのかが書かれている。
「見る方向と言うか、ほんのちょっと見方を変えるとこんなに違ってくるのかって」
「両方の考えを知るのはとてもいい勉強法ですね。ローザリア様が貴族社会に戻られたら教会の考え方ではやっていけませんから。
お互い相容れない考えなのにやっている事は同じ⋯⋯精霊の力なくしては成り立たない暮らしをしているのですから不思議なものです」
平民になるつもりのローザリアが暮らす世界も王家の本に書かれている世界なのだろう。
シスター・タニアが湯を沸かしお茶を淹れてくれた。向かい合って座り温かいお茶を飲みながらのんびりと本を読んだ。
降り続いていた雨が明け方からやんだ。
早めの朝食の後、ローザリア達は町を出発する為に広場に集まった。
「お礼も何もできていなくて申し訳ないです。せめてゆっくりしていただける時間があれば良かったんですが」
広場には町の人が集まり食べ物や果物を精霊師に渡している。町長は仕置きのために部屋に閉じ込めているそうで、代わりに自警団の団長をしている商会長が挨拶をする為に前に出てきた。
「食事もお部屋もありがとうございました」
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