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一回目 (過去)
88.出発、次の街へ
「ナスタリア神父様にはいらないと申し上げたのですが聞いていただけなくて。で、聖女様にせめてものお礼として受け取っていただけたらと思ってお持ちしました。
昨夜の食事なんかでは足りないくらい感謝しておりますが、それに見合うだけのお礼をする余裕がない状態でして」
「ありがとうございます。では、改めてこのお金を私達からこの町に寄付させていただきます」
断っても話が長くなるばかりだろうと思ったローザリアは商会長から皮袋を一旦受け取り、そのまま渡し直した。
「この町のために使って下さい」
「しかしそれでは私たちの気がすみません」
「この旅が終わったらもう一度ここに寄れるかも。その時にまた美味しいご飯を食べさせて下さい」
困った顔をしていた商会長が溜息をついた。
「お言葉に甘えさせていただきます。水不足が長く町はかなり困窮しているので正直言うととても助かります。
感謝の言葉もありません」
深々と頭を下げる商会長の後ろで状況を理解した町の人達も頭を下げた。
「私達は接待していただきたいと思ってここに来たわけでも、お礼を狙って何かしたわけでもありませんから。
気にしないでもらえたら嬉しいです」
「ローザリア様の仰る通りです。この町で接待を受けたりお礼を受け取ったりすれば、次の町や村の方々も同じようにしなくてはならないと思ってしまいます。
これから向かう場所にはこの町よりもっと大変な所もあるらしく、その方々の負担になってしまいます」
「この町に来られたのがローザリア様と教会の方々で本当に良かった。精霊王と精霊に感謝致します」
隊列を整えナザエル枢機卿の号令で出発した。明るい朝日の中を進んで行く隊列の後ろでは少しずつまた雨が降りはじめていた。
(あの雨ってどのくらい降るのかなぁ)
【2日位?】
【もっと?】
「あのくらいの雨だと何日くらい降るのが良いんでしょうか?」
「⋯⋯日にちを選べると言う事でしょうか?」
「多分ですけどできそうです」
「規格外すぎて頭がついていけなくなりそうですが⋯⋯2日か3日くらいはどうでしょうか? 雨ばかりでも仕事に支障が出そうですし」
【じゃあ2日で】
「2日に決まったようです」
その後はまた乾いた空気と土埃の舞う道が続いた。馬に休憩を取らせながら進み、広い荒地を見つけて昼食をとってまた進む。
移動中はナスタリア神父から知識を得たり本を読んだりして過ごし、夜はナザエル枢機卿の指導で魔法制御の勉強会。
「細かい魔法の方が難しいんだ。そいつが確実に出来ればでかい方は簡単だ。いや、ローザリアの場合はでかい方も制御の練習するべきだな。デカ過ぎてやばいとかなりそうだぜ」
今のところローザリアはどれだけ魔法を行使しても魔力切れになった事はない。パルフェスの町で雨を降らした後でさえローザリアは平気そうに魔法を使っていた。
「本当なら魔力切れに注意するんだ。どれくらい使えば無くなるのか知っとかないと倒れちまうし、最悪命を落とす」
「詠唱をすれば少し魔力量を抑えられるが、複合魔法の詠唱なんか教会にも伝わってねえ。まあ、どっちにしろローザリアが使う魔法は呪文から違ってるしな」
「これから先でかい魔法をぶっ放すことが多くなるだろうから、ローザリアの魔力量がわかればいいんだが」
【いっぱい】
【問題なーし】
次の街に着く前に3回野営しなくてはならないが、食材はほとんどローザリアのアイテムボックスに入っている。空間の精霊ラノスのお陰で巨大な容量になってしまったので野営が長引いても問題はないだろう。
念の為警戒は厳重にしたが何の問題も起こらず次の街の関所前にやってきた。
今回の目的地はルベル伯爵領。平民より奴隷と農奴が多く夏は大麦を作り冬は小麦とライ麦を作っていた。
1年毎にローテーションさせながら行う三圃式農業を取り入れようとしたが上手くいかず、近年は借金に喘ぎ奴隷を売り凌いでいると言う。
目の前の城壁はあちこち崩れ城壁の上の望楼に兵士の姿は見えない。そして、昼前だと言うのに関所の扉が閉まっている。
ナザエル枢機卿の指示でジャスパーが話を聞きに行った。
関所の横の小さな扉が開いて出てきた男とジャスパーが延々話をしていたが、男は手を振りながら関所の中に戻っていきジャスパーが眉間に皺を寄せて帰ってきた。
「どうなってる」
「⋯⋯ここは迂回しましょう。話になりません」
ナザエル枢機卿の問いにまともに答えようとしないジャスパー。
昨夜の食事なんかでは足りないくらい感謝しておりますが、それに見合うだけのお礼をする余裕がない状態でして」
「ありがとうございます。では、改めてこのお金を私達からこの町に寄付させていただきます」
断っても話が長くなるばかりだろうと思ったローザリアは商会長から皮袋を一旦受け取り、そのまま渡し直した。
「この町のために使って下さい」
「しかしそれでは私たちの気がすみません」
「この旅が終わったらもう一度ここに寄れるかも。その時にまた美味しいご飯を食べさせて下さい」
困った顔をしていた商会長が溜息をついた。
「お言葉に甘えさせていただきます。水不足が長く町はかなり困窮しているので正直言うととても助かります。
感謝の言葉もありません」
深々と頭を下げる商会長の後ろで状況を理解した町の人達も頭を下げた。
「私達は接待していただきたいと思ってここに来たわけでも、お礼を狙って何かしたわけでもありませんから。
気にしないでもらえたら嬉しいです」
「ローザリア様の仰る通りです。この町で接待を受けたりお礼を受け取ったりすれば、次の町や村の方々も同じようにしなくてはならないと思ってしまいます。
これから向かう場所にはこの町よりもっと大変な所もあるらしく、その方々の負担になってしまいます」
「この町に来られたのがローザリア様と教会の方々で本当に良かった。精霊王と精霊に感謝致します」
隊列を整えナザエル枢機卿の号令で出発した。明るい朝日の中を進んで行く隊列の後ろでは少しずつまた雨が降りはじめていた。
(あの雨ってどのくらい降るのかなぁ)
【2日位?】
【もっと?】
「あのくらいの雨だと何日くらい降るのが良いんでしょうか?」
「⋯⋯日にちを選べると言う事でしょうか?」
「多分ですけどできそうです」
「規格外すぎて頭がついていけなくなりそうですが⋯⋯2日か3日くらいはどうでしょうか? 雨ばかりでも仕事に支障が出そうですし」
【じゃあ2日で】
「2日に決まったようです」
その後はまた乾いた空気と土埃の舞う道が続いた。馬に休憩を取らせながら進み、広い荒地を見つけて昼食をとってまた進む。
移動中はナスタリア神父から知識を得たり本を読んだりして過ごし、夜はナザエル枢機卿の指導で魔法制御の勉強会。
「細かい魔法の方が難しいんだ。そいつが確実に出来ればでかい方は簡単だ。いや、ローザリアの場合はでかい方も制御の練習するべきだな。デカ過ぎてやばいとかなりそうだぜ」
今のところローザリアはどれだけ魔法を行使しても魔力切れになった事はない。パルフェスの町で雨を降らした後でさえローザリアは平気そうに魔法を使っていた。
「本当なら魔力切れに注意するんだ。どれくらい使えば無くなるのか知っとかないと倒れちまうし、最悪命を落とす」
「詠唱をすれば少し魔力量を抑えられるが、複合魔法の詠唱なんか教会にも伝わってねえ。まあ、どっちにしろローザリアが使う魔法は呪文から違ってるしな」
「これから先でかい魔法をぶっ放すことが多くなるだろうから、ローザリアの魔力量がわかればいいんだが」
【いっぱい】
【問題なーし】
次の街に着く前に3回野営しなくてはならないが、食材はほとんどローザリアのアイテムボックスに入っている。空間の精霊ラノスのお陰で巨大な容量になってしまったので野営が長引いても問題はないだろう。
念の為警戒は厳重にしたが何の問題も起こらず次の街の関所前にやってきた。
今回の目的地はルベル伯爵領。平民より奴隷と農奴が多く夏は大麦を作り冬は小麦とライ麦を作っていた。
1年毎にローテーションさせながら行う三圃式農業を取り入れようとしたが上手くいかず、近年は借金に喘ぎ奴隷を売り凌いでいると言う。
目の前の城壁はあちこち崩れ城壁の上の望楼に兵士の姿は見えない。そして、昼前だと言うのに関所の扉が閉まっている。
ナザエル枢機卿の指示でジャスパーが話を聞きに行った。
関所の横の小さな扉が開いて出てきた男とジャスパーが延々話をしていたが、男は手を振りながら関所の中に戻っていきジャスパーが眉間に皺を寄せて帰ってきた。
「どうなってる」
「⋯⋯ここは迂回しましょう。話になりません」
ナザエル枢機卿の問いにまともに答えようとしないジャスパー。
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