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一回目 (過去)
114.ナザエル枢機卿大激怒
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「おい、随分と御大層な行列じゃねえか。随分とご立派なお召し物ですなあ」
ゲラゲラと笑う下品な声が聞こえてきた。
「あ? お前、商業ギルドの奴じゃなかったっけ?」
「はい、その通りでございます」
ガイスがヘコヘコと頭を下げて挨拶をしている。
「ほー、手ぶらで挨拶ねえ」
「そうそう、俺らちょうど腹減ってんだよねー。ちょっと何か買ってきてくんない?」
剣をぶら下げて腕を組んだ男や拳にナックルを嵌めた男が巫山戯て威嚇してくると、あちこちから汚れた服の男が出てきて少しずつ周りを取り囲みはじめた。
男の一人が剣を抜きこれ見よがしに見せつけた。ナスタリア神父がローザリアの腰に手を回し護衛達が柄に手をかけた。
「やるか?」
「醜態を晒したいんでなければやめておけ」
「すげぇ! この俺様に勝つつもりでいやがる、聞いたか?」
ヒィヒィとおかしな笑い声が聞こえてきて『やれ!』と叫び声が一つ、男達が一斉に飛び掛かってきた。
ガイスが頭を抱えて逃げ出し、ローザリアを抱え込んだナスタリア神父以外が男達の相手をする。
ほんの1・2分で辺りに呻き声が響きはじめた。
「正当防衛ってやつだな。弱過ぎて話にならん」
「くっそー、ボーマンがいりゃあお前らなんか!!」
「ん? デブでデカい錆びた剣を振り回す奴のことか? アイツなら昨日の夜から牢の中で泣いてるぞ」
ビクビクしながら戻ってきたガイスがナザエル枢機卿にペコペコと頭を下げている。
「俺達は井戸に水を溜めにきた。次に邪魔しやがったら全員纏めて引っ括るからな」
地面に転がっていた男達が逃げ出しローザリア達はさっさと仕事を終わらせることにした。
あと1時間もすれば暗くなりはじめるだろうと急足になった一行はスラムに辿り着いた。
「ここで最後になりますが、危険と言えば一番危険な場所ですので懐中物にお気をつけください。抱きつきスリなんて言うのもいますし、倒れたふりとか何でもありですから」
汚れた顔や服で酒瓶を抱えてだらしなく道の隅に蹲っている男や脇道からこっそりと隙を狙っている子供達がいた。屋根しかない家とも呼べない建物や廃屋の前でボロ布を巻き付けてしゃがみ込んでいる子供達。ゾロゾロと後ろを着いて歩く人の群れはどんどん長くなる。
井戸に水を満たしても、誰かから何か恵んでもらえる期待の方が大きいようで見向きもしない。
「水は後からでも飲めますがスレるチャンスは今しかないと思ってるんでしょう」
最後に辿り着いたのはスラムの中にある教会だった。
「ここは昔は本当の教会だったそうで、聖堂や懺悔室なんかも残っているそうです。まあ、別の理由にしか使われてませんが」
修道服を着た艶めかしい女性が出てきて一行を値踏みする後ろからキャソックに似た祭服を着崩した男が現れた。
「えーっ、マジ? 本物の聖職者降臨って感じ?」
「で? 聖職者があたし達にお悩み相談に来たとかかしら? ふふっ、あたし悩める子羊に許しを与えるの得意なの。試してみる?」
真っ赤な唇と赤く染めた爪。修道服の裾を持ち上げ白い足を見せて挑発するシスターに、ピキリピキリと顳顬が音を立てた。
「珍しいタイプの娼館だから教会の看板は下ろして別の名前をつけた方がいいだろうな」
「孤児を引き取って養育するためにご寄付を頂いてるだけだもの。あとは、病人のお世話。一部分だけ具合が悪くなっちゃう人がいるのよねぇ。
あたしのアレはそのお礼⋯⋯世の中の役に立つって素敵よねぇ」
「ここにある井戸の水を補給しに来た。それ以外には興味はない」
「つまんなーい、楽しめると思って張り切ってたのに」
「俺も俺も! 聖職者ってさ、男の方がいいんだろ? 任せて、どっちでもいけるから」
くだらない話を陰で聞いていた子供の声が聞こえてくる。
「水って言った」
「なにしたらもらえるの?」
「おじちゃんがいっぱいいるから『ごほーし』したらもらえるよ」
「する! おみずのみたいもん!」
「きょうまだしてないから、あたしがやる!」
「俺もやる! おじちゃんはおとこのこがいいって」
子供の話が聞こえたナザエル枢機卿の全身から怒りが噴き出した。
「てめえ、ガキに『ご奉仕』やらせてんのかよ!? ああ? 何させてるか言ってみやがれ!!」
蹴り一発で教会のドアが吹き飛んだ。
ゲラゲラと笑う下品な声が聞こえてきた。
「あ? お前、商業ギルドの奴じゃなかったっけ?」
「はい、その通りでございます」
ガイスがヘコヘコと頭を下げて挨拶をしている。
「ほー、手ぶらで挨拶ねえ」
「そうそう、俺らちょうど腹減ってんだよねー。ちょっと何か買ってきてくんない?」
剣をぶら下げて腕を組んだ男や拳にナックルを嵌めた男が巫山戯て威嚇してくると、あちこちから汚れた服の男が出てきて少しずつ周りを取り囲みはじめた。
男の一人が剣を抜きこれ見よがしに見せつけた。ナスタリア神父がローザリアの腰に手を回し護衛達が柄に手をかけた。
「やるか?」
「醜態を晒したいんでなければやめておけ」
「すげぇ! この俺様に勝つつもりでいやがる、聞いたか?」
ヒィヒィとおかしな笑い声が聞こえてきて『やれ!』と叫び声が一つ、男達が一斉に飛び掛かってきた。
ガイスが頭を抱えて逃げ出し、ローザリアを抱え込んだナスタリア神父以外が男達の相手をする。
ほんの1・2分で辺りに呻き声が響きはじめた。
「正当防衛ってやつだな。弱過ぎて話にならん」
「くっそー、ボーマンがいりゃあお前らなんか!!」
「ん? デブでデカい錆びた剣を振り回す奴のことか? アイツなら昨日の夜から牢の中で泣いてるぞ」
ビクビクしながら戻ってきたガイスがナザエル枢機卿にペコペコと頭を下げている。
「俺達は井戸に水を溜めにきた。次に邪魔しやがったら全員纏めて引っ括るからな」
地面に転がっていた男達が逃げ出しローザリア達はさっさと仕事を終わらせることにした。
あと1時間もすれば暗くなりはじめるだろうと急足になった一行はスラムに辿り着いた。
「ここで最後になりますが、危険と言えば一番危険な場所ですので懐中物にお気をつけください。抱きつきスリなんて言うのもいますし、倒れたふりとか何でもありですから」
汚れた顔や服で酒瓶を抱えてだらしなく道の隅に蹲っている男や脇道からこっそりと隙を狙っている子供達がいた。屋根しかない家とも呼べない建物や廃屋の前でボロ布を巻き付けてしゃがみ込んでいる子供達。ゾロゾロと後ろを着いて歩く人の群れはどんどん長くなる。
井戸に水を満たしても、誰かから何か恵んでもらえる期待の方が大きいようで見向きもしない。
「水は後からでも飲めますがスレるチャンスは今しかないと思ってるんでしょう」
最後に辿り着いたのはスラムの中にある教会だった。
「ここは昔は本当の教会だったそうで、聖堂や懺悔室なんかも残っているそうです。まあ、別の理由にしか使われてませんが」
修道服を着た艶めかしい女性が出てきて一行を値踏みする後ろからキャソックに似た祭服を着崩した男が現れた。
「えーっ、マジ? 本物の聖職者降臨って感じ?」
「で? 聖職者があたし達にお悩み相談に来たとかかしら? ふふっ、あたし悩める子羊に許しを与えるの得意なの。試してみる?」
真っ赤な唇と赤く染めた爪。修道服の裾を持ち上げ白い足を見せて挑発するシスターに、ピキリピキリと顳顬が音を立てた。
「珍しいタイプの娼館だから教会の看板は下ろして別の名前をつけた方がいいだろうな」
「孤児を引き取って養育するためにご寄付を頂いてるだけだもの。あとは、病人のお世話。一部分だけ具合が悪くなっちゃう人がいるのよねぇ。
あたしのアレはそのお礼⋯⋯世の中の役に立つって素敵よねぇ」
「ここにある井戸の水を補給しに来た。それ以外には興味はない」
「つまんなーい、楽しめると思って張り切ってたのに」
「俺も俺も! 聖職者ってさ、男の方がいいんだろ? 任せて、どっちでもいけるから」
くだらない話を陰で聞いていた子供の声が聞こえてくる。
「水って言った」
「なにしたらもらえるの?」
「おじちゃんがいっぱいいるから『ごほーし』したらもらえるよ」
「する! おみずのみたいもん!」
「きょうまだしてないから、あたしがやる!」
「俺もやる! おじちゃんはおとこのこがいいって」
子供の話が聞こえたナザエル枢機卿の全身から怒りが噴き出した。
「てめえ、ガキに『ご奉仕』やらせてんのかよ!? ああ? 何させてるか言ってみやがれ!!」
蹴り一発で教会のドアが吹き飛んだ。
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