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一回目 (過去)
116.慢心するハリーと溜息を吐くネイサン
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魔法契約を終わらせ護衛を二人、子供達の世話に向かわせた。護衛を従えて領主館に帰っていくハリーは意気揚々としていた。
契約内容はナザエル枢機卿の専属護衛であるニールの下で護衛見習いとして訓練及び補佐を行うというもの。
覚えたての名前を嬉しそうに書くハリーの横でネイサンが大きな溜息をついた。
翌朝、ニールに叩き起こされたハリーはベッドから転げ落ち頭を打って悲鳴を上げた。
「なっ、何すんだよ!」
「訓練の時間だ、5分で準備して玄関集合だ」
寝ぼけた頭のままハリーが玄関にやってきたのは30分後。ハリーの準備を手伝うのを禁止されたネイサンはハラハラしながら待っていた。
「野営地までマラソンだ。ついてこい!」
走り出したニールの後ろをネイサンがついて走る。
「嘘だろ?」
渋々走り出したハリーが野営地についた頃には朝食は終わっていたが美味しそうな匂いが漂っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「朝の遅刻が25分。腹筋25回だ」
食休みの後の予定は走り込み・腕立て・腹筋⋯⋯。
「待って⋯⋯もっ、もう無理」
ハリーは1時間もたたず根を上げた。
「話がちげえよ。こんなん虐めじゃん」
できるわけがないと言うハリーにナザエル枢機卿が条件を出した。
「ここにいる奴の中から好きなやつを選べ。そいつに勝てたら訓練は全て免除で毎食好きなもんを食わしてやるよ」
「いやっほーい、んじゃあ⋯⋯アイツ! おっさんの後ろでいつも偉そうな顔してたアイツにする!」
ハリーがナスタリア神父を選んだのを見た護衛達が顔を青褪めさせた。
「こん中で一番ヒョロいしさぁ、アイツになら勝てんじゃね?」
「ナスタリア神父、御指名が入ったがどうするよ?」
「私は構いませんが、ナザエル枢機卿は相変わらず酔狂ですね。明日の方が良くありませんか、彼の性格から考えて午前中の疲れのせいで負けたと泣き言を言いそうです。
まあ、1時間しか動いていないようですが」
翌日、気合十分のハリーの横には心配顔のネイサンがいた。
「なあ、やめろよ。無茶だってば」
「揉めてるならやめても構いませんよ」
「やめるわけねぇじゃん。毎日楽して肉食えるんだぜ。
アンタはあの女の子の次に弱そうだけど、今更止めるとかなしだからな。
精霊師は加護のお陰で偉そうにしてるだけって知ってんだぜ。そんな奴に負けるわけねーだろ」
「ローザリアが弱いって?」
「ナザエル枢機卿、ローザリア様を巻き込むのはやめて下さい」
「3人で勝負にするか? そうだなあ、1位なら2年分、2位なら1年分の生活費をやろう」
「のった!」
「その代わり負けたらどうするよ?」
「負けたら何でもしてやるよ」
ネイサンが必死でハリーの腕を引っ張っている。
「ほー、そりゃ楽しみだ。って事で、ローザリア頑張れよ」
「えっ? ええーっ!!」
ナスタリア神父がハリーに負けるはずないとわかって呑気にしていたローザリアはナザエル枢機卿の悪ふざけに巻き込まれた。
「野営地の周りを5周、その後腕立て100回、腹筋100回で早抜け。どうだ?」
ローザリアは聞いただけで卒倒しそうになった。腕立てや腹筋など1度もやったことがない。
(私が負けたら生活費1年分⋯⋯それっていくらくらい? 借金がまた増えちゃう)
「ローザリア様、無理はしないで下さい。負けて構いませんからね」
ナスタリア神父が心配して声をかけてきた。
「腕立てとか腹筋とかってやった事なくて⋯⋯でも、頑張ります。これ以上借金が増えたら払えない」
決死の覚悟のローザリアを見て終わったらナザエル枢機卿を丸焦げにすると決めたナスタリア神父だった。
「加護の使用はなしだよな」
「勿論です。私が加護を使うと丸焦げですから」
「わっ、私も加護を使わずやりまっす」
昨日の夜から今朝まではワイワイと和やかだった野営地に戦闘前のような異常な緊張が走っている。
野営地の各所に護衛が立ち走るコースが決められ、聖騎士や精霊師達は必死でローザリアを応援していた。
「ローザリア様がボロボロになったらナスタリア神父が切れる」
「頼む、誰か試合の前にハリーを潰してくれ!」
「魔法を一発食らわせてハリーを戦闘不能にするか?」
慢心している青年がボコボコにされるところを笑い飛ばす予定で楽しみにしていた者達に哀愁が漂った。
精霊師達の願いも虚しくナザエル枢機卿の合図で3人が走りはじめた。
契約内容はナザエル枢機卿の専属護衛であるニールの下で護衛見習いとして訓練及び補佐を行うというもの。
覚えたての名前を嬉しそうに書くハリーの横でネイサンが大きな溜息をついた。
翌朝、ニールに叩き起こされたハリーはベッドから転げ落ち頭を打って悲鳴を上げた。
「なっ、何すんだよ!」
「訓練の時間だ、5分で準備して玄関集合だ」
寝ぼけた頭のままハリーが玄関にやってきたのは30分後。ハリーの準備を手伝うのを禁止されたネイサンはハラハラしながら待っていた。
「野営地までマラソンだ。ついてこい!」
走り出したニールの後ろをネイサンがついて走る。
「嘘だろ?」
渋々走り出したハリーが野営地についた頃には朝食は終わっていたが美味しそうな匂いが漂っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「朝の遅刻が25分。腹筋25回だ」
食休みの後の予定は走り込み・腕立て・腹筋⋯⋯。
「待って⋯⋯もっ、もう無理」
ハリーは1時間もたたず根を上げた。
「話がちげえよ。こんなん虐めじゃん」
できるわけがないと言うハリーにナザエル枢機卿が条件を出した。
「ここにいる奴の中から好きなやつを選べ。そいつに勝てたら訓練は全て免除で毎食好きなもんを食わしてやるよ」
「いやっほーい、んじゃあ⋯⋯アイツ! おっさんの後ろでいつも偉そうな顔してたアイツにする!」
ハリーがナスタリア神父を選んだのを見た護衛達が顔を青褪めさせた。
「こん中で一番ヒョロいしさぁ、アイツになら勝てんじゃね?」
「ナスタリア神父、御指名が入ったがどうするよ?」
「私は構いませんが、ナザエル枢機卿は相変わらず酔狂ですね。明日の方が良くありませんか、彼の性格から考えて午前中の疲れのせいで負けたと泣き言を言いそうです。
まあ、1時間しか動いていないようですが」
翌日、気合十分のハリーの横には心配顔のネイサンがいた。
「なあ、やめろよ。無茶だってば」
「揉めてるならやめても構いませんよ」
「やめるわけねぇじゃん。毎日楽して肉食えるんだぜ。
アンタはあの女の子の次に弱そうだけど、今更止めるとかなしだからな。
精霊師は加護のお陰で偉そうにしてるだけって知ってんだぜ。そんな奴に負けるわけねーだろ」
「ローザリアが弱いって?」
「ナザエル枢機卿、ローザリア様を巻き込むのはやめて下さい」
「3人で勝負にするか? そうだなあ、1位なら2年分、2位なら1年分の生活費をやろう」
「のった!」
「その代わり負けたらどうするよ?」
「負けたら何でもしてやるよ」
ネイサンが必死でハリーの腕を引っ張っている。
「ほー、そりゃ楽しみだ。って事で、ローザリア頑張れよ」
「えっ? ええーっ!!」
ナスタリア神父がハリーに負けるはずないとわかって呑気にしていたローザリアはナザエル枢機卿の悪ふざけに巻き込まれた。
「野営地の周りを5周、その後腕立て100回、腹筋100回で早抜け。どうだ?」
ローザリアは聞いただけで卒倒しそうになった。腕立てや腹筋など1度もやったことがない。
(私が負けたら生活費1年分⋯⋯それっていくらくらい? 借金がまた増えちゃう)
「ローザリア様、無理はしないで下さい。負けて構いませんからね」
ナスタリア神父が心配して声をかけてきた。
「腕立てとか腹筋とかってやった事なくて⋯⋯でも、頑張ります。これ以上借金が増えたら払えない」
決死の覚悟のローザリアを見て終わったらナザエル枢機卿を丸焦げにすると決めたナスタリア神父だった。
「加護の使用はなしだよな」
「勿論です。私が加護を使うと丸焦げですから」
「わっ、私も加護を使わずやりまっす」
昨日の夜から今朝まではワイワイと和やかだった野営地に戦闘前のような異常な緊張が走っている。
野営地の各所に護衛が立ち走るコースが決められ、聖騎士や精霊師達は必死でローザリアを応援していた。
「ローザリア様がボロボロになったらナスタリア神父が切れる」
「頼む、誰か試合の前にハリーを潰してくれ!」
「魔法を一発食らわせてハリーを戦闘不能にするか?」
慢心している青年がボコボコにされるところを笑い飛ばす予定で楽しみにしていた者達に哀愁が漂った。
精霊師達の願いも虚しくナザエル枢機卿の合図で3人が走りはじめた。
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