【完結】何度出会ってもやっぱり超絶腹黒聖職者

との

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一回目 (過去)

134.ガーラントへ、変わり者のダフネル侯爵

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「町長やそこで転がってる男達を含めて全員で話し合ってみたらどうだ? 今までやって来たことの責任をどうするのか、今後どうするのか町全体で話し合わなけりゃ直ぐに元に戻るだろうよ」

「現状我々はこの町で何かする予定はありませんが、教会へ依頼がありその内容が嘘偽りなく支援に値するものであるならば何かしらの手助けが出来るかもしれません」

「そんな⋯⋯それじゃ、今よりもっと水がない生活になってしまうだけだなんて」


「堰を作る際領主への届け出はしてありますか? ここに来る途中見かけた様子からすると領主の許可なく作るには大規模すぎるように見受けられました。
領地を管理・運営する為に領主以外が川の流れを大きく変える事を禁じているところがほとんどです。領主の許可があったのであれば下流の町や村の問題は領主の責任です。
そうでなければこの町に賠償責任があるかもしれません。国中が水不足で喘いでいる時不当に水を搾取していたと取られ、それを黙認し利益を享受してきたと言われるでしょう」



 翌朝、町にあった樽に水を配給し町を後にした。念のため確認したが堰は相変わらずそこにあり誰も手をつけた様子はなかった。

「気持ちはわからなくもねえがな」

「我々が手を出せば領主に難癖をつけられる可能性もありますから、これ以上は難しいですね」



 ガーランドの街へ行くには山越えをしなくてはならない。

 山の中腹で山賊に遭遇した時はナザエル枢機卿が大暴れした。タルーゲンの町でのモヤモヤした気持ちを発散させたかったのだろう、全員に待機の指示を出しツーハンドソードを手に走り出した。

「まあまあだな」

 一人一人は大した事なかったらしいが、十数人が一斉にかかってきたので手応えがあったと豪快に笑っていた。




 山を越えた先の広い盆地の中にガーランドの街はある。ダフネル侯爵の領主館があるこの街は治安も良く長閑な田舎町の風情を漂わせていた。

 ローザリアの支援する予定地の中では唯一の高位貴族で社交シーズンでさえ王都には出向かず領地に篭っている変わり者として有名。豊かな領地と潤沢な資産を持ち最有力花婿候補として騒がれていたこともあったが今では誰も見向きもしない。
 その理由が⋯⋯。


「魔獣研究ですか?」

「屋敷は魔獣の剥製や標本だらけだそうで、押しかけた貴族達が顔色を変えて逃げ出すそうです」

 資産を湯水の如く研究に注ぎ込み本人はいつも汚れた服を着ているという。ボサボサの髪と饐えた臭いをさせて屋敷をうろつき、スラムから迷い込んだ浮浪者のようだと言われているそう。

「フィードは魔獣じゃないから大丈夫ですよね」

「念の為目を離さないようにした方がいいでしょう。侯爵がどのような考えを持っているのか分かりませんから」

 膝の上に置いた籠の中で小さな口を開けて欠伸をしたフィードがローザリアを見上げて猫のように「にゃ」と鳴いた。



 広い畑と放牧地の向こうに城壁に囲まれたガーランドの街が見えてきた。

 近くに行くと門のある城壁の上部には一定間隔で望楼が設置され城壁には銃眼も作られている。城壁を取り囲む深い堀は水が枯れておりゴミや石が投げ込まれていた。

 馬車が悠々と進めるほど広い跳ね橋の向こうに見える門には二重の落とし格子があり両脇に巨大な門塔が建てられていてかなり強固な作りになっていた。

「落とし格子が二重とは珍しいですね。しかも後から付けられたみたいです」

 城壁に使われている石は長年風雨に晒された趣を感じさせるが落とし格子は錆もなく輝いている。

 門の近くには商店が並び広い公園と屋台の近くには子供たちが遊んでいる。店の品揃えは多くはないもののそれなりに揃っており街の人がのんびりと買い物を楽しんでいた。
 商業地区の先は平民街で二階建ての家が立ち並び白い壁と茶色の屋根に統一されている。
 真っ直ぐに伸びる大通りを進むと貴族街らしく鉄柵に守られた大きめの家が立ち並んでいる。緩やかな坂を登った先には年代を感じさせる威風堂々とした領主館があった。

「聞いていた話とはずいぶん違っています。広い通りはここ数年の間に区画整理されたもののようですし、魔獣にしか興味がないにしては街の公共事業にも力を入れているようです」

 今まで見てきた町や村のような困窮した様子が全く感じられない。まるで別の国に来たみたいだとローザリアは首を傾げた。

(とてもいい事なんだけど⋯⋯この街だけ元気なのは何故なのかしら)

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