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一回目 (過去)
135.貴族の屋敷で貴族扱いされる貴族
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鉄の門扉にはしっかりと錠がかけられ、領主館の門番はきちんとプレスされた制服を着ていた。
「ご用件をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「こちらはローザリア・トーマック公爵令嬢とナザエル枢機卿。ダフネル侯爵にお取り次ぎ願いたい」
「当主より連絡が来ております。少々お待ち下さい」
鍵を開け門扉を大きく開けた門番は一礼をして一行を通した。
玄関前では白髪の執事が待機している。馬から降りたナザエル枢機卿に執事が礼をした。
馬車から降りたローザリアとナスタリア神父にも礼をして歓迎の意を示した。
「遠路はるばるようこそおいで下さいました。私は当家執事のジーニアスと申します。お疲れでございましょう。よろしければお部屋にご案内いたします」
「丁寧な挨拶痛み入る。この通りの大所帯、迷惑でなければ良いのだが」
「迷惑などととんでもございません。相部屋になる方もおられますが、お部屋の準備をさせて頂いております」
すかさず前に一歩出た従者やメイドが頭を下げた。
「ご案内致します。どうぞこちらへ」
ローザリアの部屋はシスター・タニアの右隣で左隣はナスタリア神父。向かいはナザエル枢機卿やニールの部屋になっていた。領主館の3階全てがローザリア一行のために準備されており、護衛しやすく配慮されている。
ローザリアと一緒に部屋に入ってきたシスター・タニアは一通り部屋の中を確認してから自分に割り当てられた部屋に移動した。
「荷物を片付けたら参ります。私の部屋のドアは少し開けておきますので、何かありましたらすぐに大声で叫んでくださいね」
部屋にいる使用人を横目に見ながらわざと大きめの声でシスター・タニアが注意を促した。
「いつもありがとう。その時は屋敷中に聞こえるような声で叫ぶから宜しくね」
タルーゲンのスキンヘッド町長の言葉を聞いてからローザリアは漸く身の危険を認識した。
『そこのハズレ聖女を捕まえた方が話が早え。この町専属にしてやりゃいいんだ』
王都を出て王家の監視の目から離れトーマック公爵家とは別行動をしはじめてから、隊の全員がローザリアを守ってくれるのを申し訳ないと思っていた。
(私なんかの為に気を遣わせてごめんなさいって思ってたんだけど、今は別の意味で危険だったんだ)
ハズレ聖女と呼ばれなくなるに従い警護が強まっていったのは、スキンヘッド町長のような考えを持つ人が出てくる可能性があったから。
それ以来、ローザリアは申し訳ないと思うのではなく素直に感謝を口にすることにした。
「ただ今お茶をお持ち致します」
お茶とお菓子がテーブルに並べられる間、背筋をピンと伸ばしてソファの端に座っているローザリアは内心冷や汗を垂らしていた。
横に置いた籠の端に手をかけたフィードが首を傾げてローザリアを見上げている。
(フィード~、貴族ってこんな扱いされるのね。ううっ、緊張で手汗が⋯⋯)
「どうぞ」
「あっ、ありあとございまふ」
ガッツリと噛みまくったローザリアに気付いたそぶりも見せずメイドが部屋を退出した。
(恥ずかしかった~。笑われた方がマシだったかも)
ソファに置かれていたクッションに真っ赤になった顔を押しつけてバタバタと身悶えしていると、『ガチャン!』とテーブルに足をぶつけた。
「ううっ、痛い⋯⋯カップは大丈⋯⋯はあ、良かった」
間違いなく高級なカップが壊れていたら⋯⋯と思った途端、ローザリアは冷静になった。
(落ち着け、私! 気をつけなくちゃ、借金王になっちゃう⋯⋯あっ、美味しそう)
【大丈夫だよ~】
ローザリアは何も考えずお茶を口にした後精霊の言葉の意味に気が付いた。
(ありがとう、まだまだボケボケだね)
安心してお菓子にもに手を伸ばしたローザリアがフィードをもふもふしながら幸せを堪能しているとノックの音が聞こえた。
フィードは少し大きくなり今はローザリアの両手くらい。益々もふもふになってきて触り心地満点になった。
(お母さんも大きかったしなぁ⋯⋯あんなサイズになったらどうしよう。あんなに大きいと怖がられて王都には入れないよね。
てか、平民になるまでどこに住む? 公爵家には連れてけないし。でもフィードと離れるなんてやだなぁ)
「フィード、ゆっくり大きくなってね。ずっと一緒にいられるよう頑張るから」
フィードを顔の前まで持ち上げてお願いすると『にゃ』といつもの返事が返ってきた。
コンコン⋯⋯
「ローザリア様、ナスタリアです」
「ご用件をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「こちらはローザリア・トーマック公爵令嬢とナザエル枢機卿。ダフネル侯爵にお取り次ぎ願いたい」
「当主より連絡が来ております。少々お待ち下さい」
鍵を開け門扉を大きく開けた門番は一礼をして一行を通した。
玄関前では白髪の執事が待機している。馬から降りたナザエル枢機卿に執事が礼をした。
馬車から降りたローザリアとナスタリア神父にも礼をして歓迎の意を示した。
「遠路はるばるようこそおいで下さいました。私は当家執事のジーニアスと申します。お疲れでございましょう。よろしければお部屋にご案内いたします」
「丁寧な挨拶痛み入る。この通りの大所帯、迷惑でなければ良いのだが」
「迷惑などととんでもございません。相部屋になる方もおられますが、お部屋の準備をさせて頂いております」
すかさず前に一歩出た従者やメイドが頭を下げた。
「ご案内致します。どうぞこちらへ」
ローザリアの部屋はシスター・タニアの右隣で左隣はナスタリア神父。向かいはナザエル枢機卿やニールの部屋になっていた。領主館の3階全てがローザリア一行のために準備されており、護衛しやすく配慮されている。
ローザリアと一緒に部屋に入ってきたシスター・タニアは一通り部屋の中を確認してから自分に割り当てられた部屋に移動した。
「荷物を片付けたら参ります。私の部屋のドアは少し開けておきますので、何かありましたらすぐに大声で叫んでくださいね」
部屋にいる使用人を横目に見ながらわざと大きめの声でシスター・タニアが注意を促した。
「いつもありがとう。その時は屋敷中に聞こえるような声で叫ぶから宜しくね」
タルーゲンのスキンヘッド町長の言葉を聞いてからローザリアは漸く身の危険を認識した。
『そこのハズレ聖女を捕まえた方が話が早え。この町専属にしてやりゃいいんだ』
王都を出て王家の監視の目から離れトーマック公爵家とは別行動をしはじめてから、隊の全員がローザリアを守ってくれるのを申し訳ないと思っていた。
(私なんかの為に気を遣わせてごめんなさいって思ってたんだけど、今は別の意味で危険だったんだ)
ハズレ聖女と呼ばれなくなるに従い警護が強まっていったのは、スキンヘッド町長のような考えを持つ人が出てくる可能性があったから。
それ以来、ローザリアは申し訳ないと思うのではなく素直に感謝を口にすることにした。
「ただ今お茶をお持ち致します」
お茶とお菓子がテーブルに並べられる間、背筋をピンと伸ばしてソファの端に座っているローザリアは内心冷や汗を垂らしていた。
横に置いた籠の端に手をかけたフィードが首を傾げてローザリアを見上げている。
(フィード~、貴族ってこんな扱いされるのね。ううっ、緊張で手汗が⋯⋯)
「どうぞ」
「あっ、ありあとございまふ」
ガッツリと噛みまくったローザリアに気付いたそぶりも見せずメイドが部屋を退出した。
(恥ずかしかった~。笑われた方がマシだったかも)
ソファに置かれていたクッションに真っ赤になった顔を押しつけてバタバタと身悶えしていると、『ガチャン!』とテーブルに足をぶつけた。
「ううっ、痛い⋯⋯カップは大丈⋯⋯はあ、良かった」
間違いなく高級なカップが壊れていたら⋯⋯と思った途端、ローザリアは冷静になった。
(落ち着け、私! 気をつけなくちゃ、借金王になっちゃう⋯⋯あっ、美味しそう)
【大丈夫だよ~】
ローザリアは何も考えずお茶を口にした後精霊の言葉の意味に気が付いた。
(ありがとう、まだまだボケボケだね)
安心してお菓子にもに手を伸ばしたローザリアがフィードをもふもふしながら幸せを堪能しているとノックの音が聞こえた。
フィードは少し大きくなり今はローザリアの両手くらい。益々もふもふになってきて触り心地満点になった。
(お母さんも大きかったしなぁ⋯⋯あんなサイズになったらどうしよう。あんなに大きいと怖がられて王都には入れないよね。
てか、平民になるまでどこに住む? 公爵家には連れてけないし。でもフィードと離れるなんてやだなぁ)
「フィード、ゆっくり大きくなってね。ずっと一緒にいられるよう頑張るから」
フィードを顔の前まで持ち上げてお願いすると『にゃ』といつもの返事が返ってきた。
コンコン⋯⋯
「ローザリア様、ナスタリアです」
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