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ループ
164.シスター・タニアの浄化、ライトピュア
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下から禍々しい気配が上がってくる。ナザエル神父とナスタリア助祭がローザリアの後を追いかけようとしたが、上から降りてくる声が聞こえてきて思わず振り返った。
「拙い、誰だ?」
ローザリアは階段を降り切ったところで浄化し真っ暗な部屋に灯りを灯した。
《 プルガーティオ、ルクス 》
真っ暗だった部屋に光が溢れ階段の上にいたナザエル神父たちの元まで届いた。
浄化の光が屋敷を取り囲む野次馬達にも届く頃には、屋敷を取り巻いていた闇の波動が全て消えていった。
「ちょっと、今の光はなに?⋯⋯浄化?⋯⋯いいえ、違うわ! 下にいるのは誰!?」
上から降りて来たのはシスター・タニアだった。ニールとジャスパーが必死に止めているがそれを振り払い険しい表情で階段を駆け降りてくる。
上の騒ぎに気づく余裕を無くしているローザリアの前には真っ二つに叩き割られた石碑と4つの棺が並んでいた。
ローザリアは跪き石碑の復元を願う。
《 レスティトゥティーオ 》
屋敷の外まで眩い光が溢れた。興味本位で群がっていた野次馬達が再び白金に光った屋敷に度肝を抜かれて立ち尽くした。
「何だ、今の」
「アレが教会の精霊師の浄化か? すげぇな」
「今の⋯⋯誰⋯⋯まさか!!」
呆然と立ち尽くすシスター・タニア。
「我が願いを叶え、この地に安寧と平和の守りを与えし精霊王と精霊に心からの感謝を。弱き心を持つ者達が悪しき輩の邪な思いに惑わされぬよう祈りを捧げる。
精霊を守り猛き者の心を静め人に生命と愛をもたらす」
ローザリアの言葉がナザエル神父達の元にも聞こえてきた。
「やっぱり他の石碑とは全然内容が違うんだな」
場にそぐわないナザエル神父の呑気な声が聞こえた。
「今度の聖女はアイツじゃない。何で⋯⋯やり直し⋯⋯あの時奴が手に入れたんじゃないの? だからもう役立たずのはず」
シスター・タニアの呟きがローザリアの言葉に重なった。崩れ落ちるシスター・タニアを見つめる冷たい目には期待を裏切られた者達の強い怒りが込められていた。
ローザリアは棺をアイテムボックスに収め、石碑から溢れる慈愛と安らぎのオーラに後ろ髪を引かれながら険悪な空気が流れる上階へと階段を上がって行った。
ー ほんの少し時間を遡り ー
闇の気配を辿りながら階段を上がったシスター・タニア達は、2階のカサンドラの部屋でテーブルの上に置かれた箱の中に闇の魔石が入っているのを見つけた。
シスター・タニアはニールとジャスパーを下がらせて浄化をはじめた。
「見たことがないほど凄く強い力を発してる。かなりの量があるから少し時間がかかります」
精霊教会で回復と浄化については一番の実力者だと自他ともに認めるシスター・タニアにとって、目の前の闇の魔石を浄化できるのは自分しかいない⋯⋯そう思っていた。
「とこしえに悪しき闇を消し去る光を、ライトピュア」
浄化しきれなかった魔石を集め何度も詠唱を繰り返したが予想以上に魔力の目減りが早い。
(おかしい、何でこんなに浄化が上手くいかないの。この魔石、大きさの割に力がありすぎる)
何とか浄化を終わらせたがクローゼットの中からは別の箱が見つかった。
「うそ! 何でこんなにあるのよ!?」
「さっき別の部屋でも気配があったって、コイツはかなりヤバイな」
力不足を指摘された気がしてキッとニールを睨みつけたシスター・タニアは浄化を再開したが、ナスタリア助祭の予想通り魔力切れになってしまった。
「少し休憩するわ。まさかこんなにあるなんて、しかも見たことがないくらい強力な力を持ってる⋯⋯回収して教会へ運んだ方がいいかも」
「このまま屋敷の外へ運ぶのは危険じゃないかな?」
「それはそうだけど⋯⋯」
(これじゃあ浄化にどれほど時間がかかるか想像がつかないし、このまま続けてたら身体がもたない。私にできないならどうにもならないのに⋯⋯)
浄化の終わっていない魔石を睨みながらシスター・タニアが悩んでいた時、階下で火の魔法が行使された気配を感じた。
(これは⋯⋯火事の現場で火の魔法? ナスタリア助祭かしら? 立て続けに水魔法が⋯⋯助けに行かなきゃ!)
シスター・タニアはニール達の制止を聞かず部屋から駆け出し、放出された魔力を辿って地下に降りて来た。
ニールとジャスパーが止まれと叫んでいたが、ナザエル神父とナスタリア助祭の慌てた様子で気が付いた。
(私に隠し事をしてる。まるであの頃みたいだ)
ローザリアの浄化の力が広がっていく。シスター・タニア達、教会の精霊師が行使する浄化とは別物の強力で清浄なそれは、地下から広がり屋敷全体を包み込んだ。
(あの女だ! 力を持ったまま生まれ変わったんだわ! 今世では私のはずだったのに⋯⋯また、あの女が!)
崩れ落ちるシスター・タニアをナザエル神父達の冷たい目が睨みつけていた。
「拙い、誰だ?」
ローザリアは階段を降り切ったところで浄化し真っ暗な部屋に灯りを灯した。
《 プルガーティオ、ルクス 》
真っ暗だった部屋に光が溢れ階段の上にいたナザエル神父たちの元まで届いた。
浄化の光が屋敷を取り囲む野次馬達にも届く頃には、屋敷を取り巻いていた闇の波動が全て消えていった。
「ちょっと、今の光はなに?⋯⋯浄化?⋯⋯いいえ、違うわ! 下にいるのは誰!?」
上から降りて来たのはシスター・タニアだった。ニールとジャスパーが必死に止めているがそれを振り払い険しい表情で階段を駆け降りてくる。
上の騒ぎに気づく余裕を無くしているローザリアの前には真っ二つに叩き割られた石碑と4つの棺が並んでいた。
ローザリアは跪き石碑の復元を願う。
《 レスティトゥティーオ 》
屋敷の外まで眩い光が溢れた。興味本位で群がっていた野次馬達が再び白金に光った屋敷に度肝を抜かれて立ち尽くした。
「何だ、今の」
「アレが教会の精霊師の浄化か? すげぇな」
「今の⋯⋯誰⋯⋯まさか!!」
呆然と立ち尽くすシスター・タニア。
「我が願いを叶え、この地に安寧と平和の守りを与えし精霊王と精霊に心からの感謝を。弱き心を持つ者達が悪しき輩の邪な思いに惑わされぬよう祈りを捧げる。
精霊を守り猛き者の心を静め人に生命と愛をもたらす」
ローザリアの言葉がナザエル神父達の元にも聞こえてきた。
「やっぱり他の石碑とは全然内容が違うんだな」
場にそぐわないナザエル神父の呑気な声が聞こえた。
「今度の聖女はアイツじゃない。何で⋯⋯やり直し⋯⋯あの時奴が手に入れたんじゃないの? だからもう役立たずのはず」
シスター・タニアの呟きがローザリアの言葉に重なった。崩れ落ちるシスター・タニアを見つめる冷たい目には期待を裏切られた者達の強い怒りが込められていた。
ローザリアは棺をアイテムボックスに収め、石碑から溢れる慈愛と安らぎのオーラに後ろ髪を引かれながら険悪な空気が流れる上階へと階段を上がって行った。
ー ほんの少し時間を遡り ー
闇の気配を辿りながら階段を上がったシスター・タニア達は、2階のカサンドラの部屋でテーブルの上に置かれた箱の中に闇の魔石が入っているのを見つけた。
シスター・タニアはニールとジャスパーを下がらせて浄化をはじめた。
「見たことがないほど凄く強い力を発してる。かなりの量があるから少し時間がかかります」
精霊教会で回復と浄化については一番の実力者だと自他ともに認めるシスター・タニアにとって、目の前の闇の魔石を浄化できるのは自分しかいない⋯⋯そう思っていた。
「とこしえに悪しき闇を消し去る光を、ライトピュア」
浄化しきれなかった魔石を集め何度も詠唱を繰り返したが予想以上に魔力の目減りが早い。
(おかしい、何でこんなに浄化が上手くいかないの。この魔石、大きさの割に力がありすぎる)
何とか浄化を終わらせたがクローゼットの中からは別の箱が見つかった。
「うそ! 何でこんなにあるのよ!?」
「さっき別の部屋でも気配があったって、コイツはかなりヤバイな」
力不足を指摘された気がしてキッとニールを睨みつけたシスター・タニアは浄化を再開したが、ナスタリア助祭の予想通り魔力切れになってしまった。
「少し休憩するわ。まさかこんなにあるなんて、しかも見たことがないくらい強力な力を持ってる⋯⋯回収して教会へ運んだ方がいいかも」
「このまま屋敷の外へ運ぶのは危険じゃないかな?」
「それはそうだけど⋯⋯」
(これじゃあ浄化にどれほど時間がかかるか想像がつかないし、このまま続けてたら身体がもたない。私にできないならどうにもならないのに⋯⋯)
浄化の終わっていない魔石を睨みながらシスター・タニアが悩んでいた時、階下で火の魔法が行使された気配を感じた。
(これは⋯⋯火事の現場で火の魔法? ナスタリア助祭かしら? 立て続けに水魔法が⋯⋯助けに行かなきゃ!)
シスター・タニアはニール達の制止を聞かず部屋から駆け出し、放出された魔力を辿って地下に降りて来た。
ニールとジャスパーが止まれと叫んでいたが、ナザエル神父とナスタリア助祭の慌てた様子で気が付いた。
(私に隠し事をしてる。まるであの頃みたいだ)
ローザリアの浄化の力が広がっていく。シスター・タニア達、教会の精霊師が行使する浄化とは別物の強力で清浄なそれは、地下から広がり屋敷全体を包み込んだ。
(あの女だ! 力を持ったまま生まれ変わったんだわ! 今世では私のはずだったのに⋯⋯また、あの女が!)
崩れ落ちるシスター・タニアをナザエル神父達の冷たい目が睨みつけていた。
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