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ループ
163.ジャスパーがいれば?
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一気に燃え広がった火が屋敷を舐め尽くし原型をとどめなくなった頃教会から聖騎士団と精霊師達がやって来た。
「精霊教会神父ナザエルだ。公爵邸にて闇の波動を探知した。これよりトーマック公爵家の屋敷は教会の監視下に入る。
調べが終わるまで立ち入りを禁止する!」
呆然とするカサンドラ達の前でテキパキと消火と現場の保存が行われていく。遅れてやって来た王宮精霊師達は聖職者達を前にただ呆然と立ち尽くしていた。
「そんな⋯⋯拙いわ。(魔石が見つかったら⋯⋯)お待ちなさい!! ここはトーマック公爵邸よ! 勝手なことは許さないわ!」
(くそ! ウォレスはどこに行ったのよ!! こんな時くらい役に立ちなさいよ)
「通常の火災や爆発であれば我らの管轄外。しかし、闇の魔術が関わる場合は我ら教会の責任において調査すると決められている。
そうであろう?」
ナザエル神父の問いかけにカサンドラが振り返ると帰り支度をしていたランブリー王宮精霊師団団長が頷いた。
「その通りです。我々も闇の波動を検知しておりますので、この場は教会にお任せするしかありますまい」
表通りでカサンドラとナザエル神父が口論している時、ローブで顔を隠し野次馬の中に紛れていたローザリアはこっそりと屋敷の裏口へ向かった。
(ここまではナスタリア助祭の作戦通り⋯⋯無事に地下へ行かなくちゃ)
カサンドラは使用人達に介抱されながらメソメソと泣いているリリアーナを睨み付けた。
(役立たずしかいないんだから! 何とかしなくては)
少量であれば闇の魔石を保持していても誤魔化せるが、カサンドラの部屋にはかなりの数の闇の魔石が置かれている。
ナザエル神父は数名の部下を警備に残し未だ火の粉を噴き上げる屋敷に向かった。
「水の加護を持つ者は急ぎ消火にかかれ! ニール、シスター・タニアとジャスパーを連れて2階の調査を。闇の波動を感知した者はシスター・タニアかニールの指示を仰げ。
ナスタリア助祭は俺について来い!」
「は!」
水の加護を持つ精霊師が消火し風の加護で煙を吹き飛ばす。視界が良くなったニール達はナザエル神父の指示通りに闇の気配が強い2階へ上がって行った。
「この気配は間違いなく大量の闇の魔石か闇の魔法陣です。2人とも私から離れないで」
杖を構えたシスター・タニアが険しい顔で先導して行く。
「おう、よろしく頼む」
一方のナザエル神父はナスタリア助祭と一緒に近くに人がいないことを確認しながら屋敷の裏口へやって来た。
「いるか?」
「はい」
「じゃ、行くぞ」
パチパチと音を立て燃えているらしい厨房を通り過ぎ地下への階段を降りた。
「ここは被害がないが⋯⋯ローザリア、どこにある?」
【一番奥、木の箱の下の下】
【荷物の、一番端っこ】
精霊の言葉に従いなるべく音を立てないよう注意しながら3人で荷物を退けていく。
「くそっ、どんだけあんだよ!」
積み上げられた木箱が邪魔で中々前に進めないが、誰かが降りてくる前に見つけなければと気持ちばかりが焦る。
上からシスター・タニアが闇の魔石を浄化しているらしい気配がしてきた。
「上は見つけたみてえだな」
「かなり大量にあるから時間がかかると思うけど、逆に魔力切れで休憩だって言い出した時がヤバいよ」
漸く地下室の一番奥まで辿り着くと荷物の陰にいかにも怪しい木の箱があった。
「こいつか? くそぉ、動かねえ⋯⋯固めてやがる。しかも何だこの魔法陣は、見た事ねえぞ」
ナザエル神父が力任せに箱を引っ張ってもびくともしない。
「参ったな、こいつを壊したらデカい音がしそうだぜ」
【風の子がいれば良かったんだけどねー】
「だったら私が⋯⋯」
【ダメダメ、愛し子は触っちゃダメ】
「ニールがいないから仕方ない、なるべく音をさせないよう気をつけるけど⋯⋯」
杖を構えたナスタリア助祭が詠唱をはじめた。
「炎よ、球体となりて敵を撃て。フレイムボール」
バリバリ、ガシャーン!
燃える木箱に水をかけ安心したが⋯⋯。
「よっしゃ! って今度は石かよ。この石が石碑⋯⋯って事は無さそうだな」
【その下に埋まってる】
【気をつけて】
箱と同じ魔法陣の刻まれた石をナザエル神父が破壊する。
「水よ、我が敵を射抜く弾丸となれ、ウォータバレット! 穴開きやがれぇ!!」
石にいくつもの穴が開き、そこからヒビが入る頃にはナザエル神父の魔力が枯渇しかけた。
「だから、ジャスパーを連れてこいってことか。超ムカつく」
肩で息をするナザエル神父が悪態をついた。割れた石の間から階段が見え、ローザリアは誘われるように階段を降りはじめた。
「ローザリア! 待って!!」
「精霊教会神父ナザエルだ。公爵邸にて闇の波動を探知した。これよりトーマック公爵家の屋敷は教会の監視下に入る。
調べが終わるまで立ち入りを禁止する!」
呆然とするカサンドラ達の前でテキパキと消火と現場の保存が行われていく。遅れてやって来た王宮精霊師達は聖職者達を前にただ呆然と立ち尽くしていた。
「そんな⋯⋯拙いわ。(魔石が見つかったら⋯⋯)お待ちなさい!! ここはトーマック公爵邸よ! 勝手なことは許さないわ!」
(くそ! ウォレスはどこに行ったのよ!! こんな時くらい役に立ちなさいよ)
「通常の火災や爆発であれば我らの管轄外。しかし、闇の魔術が関わる場合は我ら教会の責任において調査すると決められている。
そうであろう?」
ナザエル神父の問いかけにカサンドラが振り返ると帰り支度をしていたランブリー王宮精霊師団団長が頷いた。
「その通りです。我々も闇の波動を検知しておりますので、この場は教会にお任せするしかありますまい」
表通りでカサンドラとナザエル神父が口論している時、ローブで顔を隠し野次馬の中に紛れていたローザリアはこっそりと屋敷の裏口へ向かった。
(ここまではナスタリア助祭の作戦通り⋯⋯無事に地下へ行かなくちゃ)
カサンドラは使用人達に介抱されながらメソメソと泣いているリリアーナを睨み付けた。
(役立たずしかいないんだから! 何とかしなくては)
少量であれば闇の魔石を保持していても誤魔化せるが、カサンドラの部屋にはかなりの数の闇の魔石が置かれている。
ナザエル神父は数名の部下を警備に残し未だ火の粉を噴き上げる屋敷に向かった。
「水の加護を持つ者は急ぎ消火にかかれ! ニール、シスター・タニアとジャスパーを連れて2階の調査を。闇の波動を感知した者はシスター・タニアかニールの指示を仰げ。
ナスタリア助祭は俺について来い!」
「は!」
水の加護を持つ精霊師が消火し風の加護で煙を吹き飛ばす。視界が良くなったニール達はナザエル神父の指示通りに闇の気配が強い2階へ上がって行った。
「この気配は間違いなく大量の闇の魔石か闇の魔法陣です。2人とも私から離れないで」
杖を構えたシスター・タニアが険しい顔で先導して行く。
「おう、よろしく頼む」
一方のナザエル神父はナスタリア助祭と一緒に近くに人がいないことを確認しながら屋敷の裏口へやって来た。
「いるか?」
「はい」
「じゃ、行くぞ」
パチパチと音を立て燃えているらしい厨房を通り過ぎ地下への階段を降りた。
「ここは被害がないが⋯⋯ローザリア、どこにある?」
【一番奥、木の箱の下の下】
【荷物の、一番端っこ】
精霊の言葉に従いなるべく音を立てないよう注意しながら3人で荷物を退けていく。
「くそっ、どんだけあんだよ!」
積み上げられた木箱が邪魔で中々前に進めないが、誰かが降りてくる前に見つけなければと気持ちばかりが焦る。
上からシスター・タニアが闇の魔石を浄化しているらしい気配がしてきた。
「上は見つけたみてえだな」
「かなり大量にあるから時間がかかると思うけど、逆に魔力切れで休憩だって言い出した時がヤバいよ」
漸く地下室の一番奥まで辿り着くと荷物の陰にいかにも怪しい木の箱があった。
「こいつか? くそぉ、動かねえ⋯⋯固めてやがる。しかも何だこの魔法陣は、見た事ねえぞ」
ナザエル神父が力任せに箱を引っ張ってもびくともしない。
「参ったな、こいつを壊したらデカい音がしそうだぜ」
【風の子がいれば良かったんだけどねー】
「だったら私が⋯⋯」
【ダメダメ、愛し子は触っちゃダメ】
「ニールがいないから仕方ない、なるべく音をさせないよう気をつけるけど⋯⋯」
杖を構えたナスタリア助祭が詠唱をはじめた。
「炎よ、球体となりて敵を撃て。フレイムボール」
バリバリ、ガシャーン!
燃える木箱に水をかけ安心したが⋯⋯。
「よっしゃ! って今度は石かよ。この石が石碑⋯⋯って事は無さそうだな」
【その下に埋まってる】
【気をつけて】
箱と同じ魔法陣の刻まれた石をナザエル神父が破壊する。
「水よ、我が敵を射抜く弾丸となれ、ウォータバレット! 穴開きやがれぇ!!」
石にいくつもの穴が開き、そこからヒビが入る頃にはナザエル神父の魔力が枯渇しかけた。
「だから、ジャスパーを連れてこいってことか。超ムカつく」
肩で息をするナザエル神父が悪態をついた。割れた石の間から階段が見え、ローザリアは誘われるように階段を降りはじめた。
「ローザリア! 待って!!」
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