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ループ
179.どちらが得か⋯⋯妖魔の囁き
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今まで騒ぎから身を隠す様に気配を殺していたウォレスが立ち上がって満面の笑みを浮かべてローザリアに向かって歩いてきかけた。
「私はもうトーマック公爵家とは関係がありません。それまでも真面に育てていただいた覚えもありませんし」
「それが血の繋がった親にいう台詞か!? わしの子に生まれたからこそお前には意味があるのだぞ。その意味をわかっておらん様だな」
「正確に言えば、公爵の子でなくともあの屋敷のあった場所で産まれた子が愛し子になったんじゃよ。公爵は偶々⋯⋯それ以外に意味はないし、今までのことを考えれば害にしかならんのう」
「その娘を捕まえるのじゃ!! この国の存亡はその娘が握っておる。宰相!」
国王が大声を張り上げた。
「精霊王の愛し子であられるローザリア様にはこの国をジンより救っていただかねばなりません。その責を果たしていただくためこちらへお越しいただけますでしょうか?」
礼儀正しく右手を胸に当てた宰相がローザリアに頭を下げた。
(さっきまで大臣達の陰に隠れて様子を伺っていたくせに。やっぱり宰相は自身の保身だけが大切な人ね)
「お断りします。ジンを呼び込んだのも利用してきたのも王家の方でしょう? 是非とも責任はその方々にとっていただいてください」
「愛し子として生まれたことには大きな意味があります。この国の民草を見捨てると仰るのですか?」
「見捨てるのは王家と精霊達を使役して身勝手な行いをしてきた方達。我が子を生贄にした人達も見捨てます」
「なんとふてぶてしい。余の命に逆らうならばそこにおる者達の命はないと心得よ!」
「武器がなくても俺達が負けるわけねえだろ? 精霊に見放されたお前らの前にいるのは精霊王の加護を持つ愛し子を含む精霊師軍団だぜ?」
「精霊王の加護?」
「まさか!」
【ローザリア、気をつけて!】
【アイツが来る!】
「みんな、奴が来るって!」
杖を構えたローザリアの周りでナザエル神父達も杖を構え円陣を組んだ。
ゴオッと激しい風が吹き荒れひび割れていたガラスが窓枠ごと吹っ飛んだ。長い黒髪を風に靡かせ窓から入ってきたジンは余裕のある態度で国王達の前にふわりと降り立った。
「ひぃ!」
【ローザリアが育つのをのんびり待っているわけにいかないのはなんとも面倒な事だな】
「ジン! わたくしを助けに来たのね。さっさとコイツらを始末しなさい!」
【我に命令できると今でも思っておるとは⋯⋯なんとも愚かで哀れな女よ】
「わたくしの命令に従えないと言うの? 今まで散々お願いを聞いてあげたじゃない。それなのに」
【貴様が闇の魔石を無駄にするせいで余計な時間ばかり】
態とらしく溜息をついたジンがローザリア達に向き直った。
【愚かな奴らを助けるのは気に入らぬが、愛し子を手に入れるためには仕方なかろう。国王よ、其方はどちらにつく? 我か、精霊王か?】
「そっ、それは⋯⋯」
【我に愛し子を差し出すならば助けてやろう。精霊王に差し出すならば己の力で戦え】
「余に力を授けてくれると申すか?」
【精霊の加護などより強大な我の力があれば、全てを思うままにできよう】
「馬鹿な事を! そんな事をすればこの国から精霊はいなくなり精霊王の加護もなくなるわ。そうなったらこの国は立ち行かなくなる!」
「か、加護など⋯⋯手に入れられぬ精霊の加護など何の意味がある!? 民草にあって余にないなど許せるものではない。余に使役されると言うならば愛し子などくれてやる」
「ジンを使役しているのはわたくしよ! ジン、陛下も王弟も皆闇に引き摺り込んでしまいなさい!」
「なんと愚かな⋯⋯妖魔・魔人などと呼ばれる悪しき者の力を欲するなど、ここまで腐りきっておるとは思わなんだわ」
オーガスト枢機卿の言葉の陰でローザリアはナザエル神父達に精霊王の加護を与える詠唱をはじめた。
《 欠けなく満たされし器に精霊王の加護を、プライシーディオム 》
ナザエル神父達の着ていたローブの裾から這い上がるように精霊王の紋章が描かれ、手や足や頬にも紋章が現れた。王宮の入り口で預けた武器は黄金の光に包まれそれぞれの手の中に収まった。
「加護の力を強くし防御力が上がったはずです」
「そりゃいいぜ、今回は絶対にぶっ潰してやる!」
【ほう、これが精霊王の加護か。何とも派手なことよ】
「ナザエル神父とニールの剣には氷、ナスタリア助祭の槍には雷の加護を!」
ジンの業火をナザエル神父のツーハンドソードが断ち切り、ジャスパーが地の魔法でジンの風を防ぐ。
ナスタリア助祭の槍から放たれた電撃に怯んだジンをナザエル神父とニールが追い詰めた。
【闇よ、敵を閉じ込める檻となれ、ダークジェイル】
前世でナザエル枢機卿とニールを閉じ込めたのと同じ闇の檻が2人を拘束した。
「私はもうトーマック公爵家とは関係がありません。それまでも真面に育てていただいた覚えもありませんし」
「それが血の繋がった親にいう台詞か!? わしの子に生まれたからこそお前には意味があるのだぞ。その意味をわかっておらん様だな」
「正確に言えば、公爵の子でなくともあの屋敷のあった場所で産まれた子が愛し子になったんじゃよ。公爵は偶々⋯⋯それ以外に意味はないし、今までのことを考えれば害にしかならんのう」
「その娘を捕まえるのじゃ!! この国の存亡はその娘が握っておる。宰相!」
国王が大声を張り上げた。
「精霊王の愛し子であられるローザリア様にはこの国をジンより救っていただかねばなりません。その責を果たしていただくためこちらへお越しいただけますでしょうか?」
礼儀正しく右手を胸に当てた宰相がローザリアに頭を下げた。
(さっきまで大臣達の陰に隠れて様子を伺っていたくせに。やっぱり宰相は自身の保身だけが大切な人ね)
「お断りします。ジンを呼び込んだのも利用してきたのも王家の方でしょう? 是非とも責任はその方々にとっていただいてください」
「愛し子として生まれたことには大きな意味があります。この国の民草を見捨てると仰るのですか?」
「見捨てるのは王家と精霊達を使役して身勝手な行いをしてきた方達。我が子を生贄にした人達も見捨てます」
「なんとふてぶてしい。余の命に逆らうならばそこにおる者達の命はないと心得よ!」
「武器がなくても俺達が負けるわけねえだろ? 精霊に見放されたお前らの前にいるのは精霊王の加護を持つ愛し子を含む精霊師軍団だぜ?」
「精霊王の加護?」
「まさか!」
【ローザリア、気をつけて!】
【アイツが来る!】
「みんな、奴が来るって!」
杖を構えたローザリアの周りでナザエル神父達も杖を構え円陣を組んだ。
ゴオッと激しい風が吹き荒れひび割れていたガラスが窓枠ごと吹っ飛んだ。長い黒髪を風に靡かせ窓から入ってきたジンは余裕のある態度で国王達の前にふわりと降り立った。
「ひぃ!」
【ローザリアが育つのをのんびり待っているわけにいかないのはなんとも面倒な事だな】
「ジン! わたくしを助けに来たのね。さっさとコイツらを始末しなさい!」
【我に命令できると今でも思っておるとは⋯⋯なんとも愚かで哀れな女よ】
「わたくしの命令に従えないと言うの? 今まで散々お願いを聞いてあげたじゃない。それなのに」
【貴様が闇の魔石を無駄にするせいで余計な時間ばかり】
態とらしく溜息をついたジンがローザリア達に向き直った。
【愚かな奴らを助けるのは気に入らぬが、愛し子を手に入れるためには仕方なかろう。国王よ、其方はどちらにつく? 我か、精霊王か?】
「そっ、それは⋯⋯」
【我に愛し子を差し出すならば助けてやろう。精霊王に差し出すならば己の力で戦え】
「余に力を授けてくれると申すか?」
【精霊の加護などより強大な我の力があれば、全てを思うままにできよう】
「馬鹿な事を! そんな事をすればこの国から精霊はいなくなり精霊王の加護もなくなるわ。そうなったらこの国は立ち行かなくなる!」
「か、加護など⋯⋯手に入れられぬ精霊の加護など何の意味がある!? 民草にあって余にないなど許せるものではない。余に使役されると言うならば愛し子などくれてやる」
「ジンを使役しているのはわたくしよ! ジン、陛下も王弟も皆闇に引き摺り込んでしまいなさい!」
「なんと愚かな⋯⋯妖魔・魔人などと呼ばれる悪しき者の力を欲するなど、ここまで腐りきっておるとは思わなんだわ」
オーガスト枢機卿の言葉の陰でローザリアはナザエル神父達に精霊王の加護を与える詠唱をはじめた。
《 欠けなく満たされし器に精霊王の加護を、プライシーディオム 》
ナザエル神父達の着ていたローブの裾から這い上がるように精霊王の紋章が描かれ、手や足や頬にも紋章が現れた。王宮の入り口で預けた武器は黄金の光に包まれそれぞれの手の中に収まった。
「加護の力を強くし防御力が上がったはずです」
「そりゃいいぜ、今回は絶対にぶっ潰してやる!」
【ほう、これが精霊王の加護か。何とも派手なことよ】
「ナザエル神父とニールの剣には氷、ナスタリア助祭の槍には雷の加護を!」
ジンの業火をナザエル神父のツーハンドソードが断ち切り、ジャスパーが地の魔法でジンの風を防ぐ。
ナスタリア助祭の槍から放たれた電撃に怯んだジンをナザエル神父とニールが追い詰めた。
【闇よ、敵を閉じ込める檻となれ、ダークジェイル】
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