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ループ
178.真実を知る精霊王
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「無駄に生まれた王家の血を引くお子がどの様に処分されているかご存知のくせに、我が子だけは無事だと思っておられたのですか?
今では、子を作っては廃棄するのは王家だけではありませんわ。ねえ、皆様?」
王弟妃の不気味な高笑いが続く中で全員が顔を引き攣らせた。
「黙れ黙れ黙れぇ!!」
狂った様に高笑いを続けていた王弟妃の髪の毛を掴み上げた王弟が『貴様がジンを』と言いながら殴りつけた。
「ヨーランダ、貴様が邪神を呼んだんだ。王家のせいにして罪を誤魔化すなど! 誰か剣を持て、叩っ斬ってやる!!」
怒りなのか真実を語られた動揺なのか、王弟妃を殴り続ける王弟を大臣達が羽交締めにした。
「お、お待ち下さい。王弟妃がジンを呼び込んだならば詳しく話を聞かねばなりません。退治する方法を知っているやもしれません!」
「身分の低い其方を王弟妃にしてやった恩を忘れ王家に牙を剥くとは! 此奴を牢へ!!」
国王の低い声で落ち着きを取り戻した王弟が髪を整えて襟を正した。
「陛下、この度は大変申し訳な⋯⋯」
「王弟妃が呼び込んだのではありません。その魔法陣が何代も前の王の指示で作られた物だと言う事を、陛下はご存じであらせられるはず」
王家と大臣達の醜い争いを黙って見ていたローザリアが王弟の言葉を遮った。
全ての罪を王弟妃になすりつけてこの場を誤魔化そうとしていた国王がビクッと肩を揺らした。
「貴様は教会の者となったのであろう。口を慎め!」
「何代も前の王は王家に加護を持つ子が産まれにくくなり精霊を捕まえる為の魔法陣を作らせましたが、不完全なままの魔法陣では精霊を捕まえることなどできませんでした。
それなら魔法陣の力で加護を得られるのではないかと王は加護を持たずに産まれたお子を捧げるようになりました。
これが、王家があの魔法陣に生贄を捧げるようになったはじまりです」
「⋯⋯」
「王家はほんの一時加護持ちが増えたはず。あの時、ジンがこの国に来たのです。加護持ちが産まれた様に見えたのはジンの余興のようなものでしょう。記録には加護持ちだと言われた者は皆闇に落ちたと記されていますね」
「⋯⋯どこでその話を知った」
「王家が生贄を捧げていると言う話を漏れ聞いた者達の中には、加護のない我が子を精霊の石碑の元に埋める者が現れました。その様な事を続けてきたこの国が精霊に見放されていくのは当然のことです」
「⋯⋯貴様、どこで何を見た! 我が寝所に忍び込んだか!?」
ローザリアが話した内容は代々の国王のみが知る王家の秘密。王弟でさえ知らない内容があり国王以外の者達は疑心暗鬼になり訝しげな顔をしていた。
「精霊王は全てをご存じです。そもそも、精霊王はこの国を守るなどと言う盟約を交わしてはおられません。その事も陛下はご存じですね」
「何ですと!?」
「精霊王は聖霊を慈しみ讃えるようにと言われ、正しき心に心優しき精霊達の加護を与えると仰られました。加護は永遠ではないとも。
邪な願いを望めば妖霊が住みつき心を闇に染めると」
「ちぃとばかり言い方を変えて、都合の悪いところは無くして⋯⋯王家に都合のいい様に公表したのぉ。そんなやり方で千年続いたのを感謝せねばの」
「なんて事だ。それが本当なら⋯⋯」
「加護がなくなる? そんな事になったらこの国は成り立たんぞ」
秘密を暴露され青褪め俯きかけていた国王がふと思い出した様に顔を上げた。
「えーい、煩い! まだ方法は残っておるわ! 精霊王は愛し子を欲しがっておる。愛し子さえ手中に納めれば精霊王など余の思いのままよ! 愛し子はトーマック公爵家に産まれると書いてあったわ」
「で、ではリリアーナが愛し子に違いないわ。だってわたくしの娘はリリアーナだけですもの! 尊い王家の血を引くわたくしの娘こそ精霊王の愛し子に違いあ⋯⋯」
カサンドラの言葉を遮って王弟妃がゲラゲラと下品に笑いはじめた。
「カサンドラ、あんたの父親はスラムの犯罪者。薄汚れた王家の血よりはマシかもね」
「何ですって!!」
「王家の血が大事だって大騒ぎしてる王弟が下賎なスラムの血を引く娘を溺愛してるのが可笑しくて堪らなかったわ。
それにねえ、リリアーナには加護なんかありはしないのよ。ジンがリリアーナの胸に魔法陣を描いて加護持ちに見せかけただけ。
リリアーナを王太子妃にしようとしてる王家も大笑いだったわ」
「では、ローザリアが愛し子という事か? わしの大切な娘のローザリアがこの国を救うのか⋯⋯良くやった。流石はわしの娘じゃ」
今では、子を作っては廃棄するのは王家だけではありませんわ。ねえ、皆様?」
王弟妃の不気味な高笑いが続く中で全員が顔を引き攣らせた。
「黙れ黙れ黙れぇ!!」
狂った様に高笑いを続けていた王弟妃の髪の毛を掴み上げた王弟が『貴様がジンを』と言いながら殴りつけた。
「ヨーランダ、貴様が邪神を呼んだんだ。王家のせいにして罪を誤魔化すなど! 誰か剣を持て、叩っ斬ってやる!!」
怒りなのか真実を語られた動揺なのか、王弟妃を殴り続ける王弟を大臣達が羽交締めにした。
「お、お待ち下さい。王弟妃がジンを呼び込んだならば詳しく話を聞かねばなりません。退治する方法を知っているやもしれません!」
「身分の低い其方を王弟妃にしてやった恩を忘れ王家に牙を剥くとは! 此奴を牢へ!!」
国王の低い声で落ち着きを取り戻した王弟が髪を整えて襟を正した。
「陛下、この度は大変申し訳な⋯⋯」
「王弟妃が呼び込んだのではありません。その魔法陣が何代も前の王の指示で作られた物だと言う事を、陛下はご存じであらせられるはず」
王家と大臣達の醜い争いを黙って見ていたローザリアが王弟の言葉を遮った。
全ての罪を王弟妃になすりつけてこの場を誤魔化そうとしていた国王がビクッと肩を揺らした。
「貴様は教会の者となったのであろう。口を慎め!」
「何代も前の王は王家に加護を持つ子が産まれにくくなり精霊を捕まえる為の魔法陣を作らせましたが、不完全なままの魔法陣では精霊を捕まえることなどできませんでした。
それなら魔法陣の力で加護を得られるのではないかと王は加護を持たずに産まれたお子を捧げるようになりました。
これが、王家があの魔法陣に生贄を捧げるようになったはじまりです」
「⋯⋯」
「王家はほんの一時加護持ちが増えたはず。あの時、ジンがこの国に来たのです。加護持ちが産まれた様に見えたのはジンの余興のようなものでしょう。記録には加護持ちだと言われた者は皆闇に落ちたと記されていますね」
「⋯⋯どこでその話を知った」
「王家が生贄を捧げていると言う話を漏れ聞いた者達の中には、加護のない我が子を精霊の石碑の元に埋める者が現れました。その様な事を続けてきたこの国が精霊に見放されていくのは当然のことです」
「⋯⋯貴様、どこで何を見た! 我が寝所に忍び込んだか!?」
ローザリアが話した内容は代々の国王のみが知る王家の秘密。王弟でさえ知らない内容があり国王以外の者達は疑心暗鬼になり訝しげな顔をしていた。
「精霊王は全てをご存じです。そもそも、精霊王はこの国を守るなどと言う盟約を交わしてはおられません。その事も陛下はご存じですね」
「何ですと!?」
「精霊王は聖霊を慈しみ讃えるようにと言われ、正しき心に心優しき精霊達の加護を与えると仰られました。加護は永遠ではないとも。
邪な願いを望めば妖霊が住みつき心を闇に染めると」
「ちぃとばかり言い方を変えて、都合の悪いところは無くして⋯⋯王家に都合のいい様に公表したのぉ。そんなやり方で千年続いたのを感謝せねばの」
「なんて事だ。それが本当なら⋯⋯」
「加護がなくなる? そんな事になったらこの国は成り立たんぞ」
秘密を暴露され青褪め俯きかけていた国王がふと思い出した様に顔を上げた。
「えーい、煩い! まだ方法は残っておるわ! 精霊王は愛し子を欲しがっておる。愛し子さえ手中に納めれば精霊王など余の思いのままよ! 愛し子はトーマック公爵家に産まれると書いてあったわ」
「で、ではリリアーナが愛し子に違いないわ。だってわたくしの娘はリリアーナだけですもの! 尊い王家の血を引くわたくしの娘こそ精霊王の愛し子に違いあ⋯⋯」
カサンドラの言葉を遮って王弟妃がゲラゲラと下品に笑いはじめた。
「カサンドラ、あんたの父親はスラムの犯罪者。薄汚れた王家の血よりはマシかもね」
「何ですって!!」
「王家の血が大事だって大騒ぎしてる王弟が下賎なスラムの血を引く娘を溺愛してるのが可笑しくて堪らなかったわ。
それにねえ、リリアーナには加護なんかありはしないのよ。ジンがリリアーナの胸に魔法陣を描いて加護持ちに見せかけただけ。
リリアーナを王太子妃にしようとしてる王家も大笑いだったわ」
「では、ローザリアが愛し子という事か? わしの大切な娘のローザリアがこの国を救うのか⋯⋯良くやった。流石はわしの娘じゃ」
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