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パーシモンの町パート5

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 カチンカチン山に住むタヌキングは、体長5mもある大きな狸の魔獣である。炎属性の魔獣で、炎を自在に操り、カチンカチン山を炎の山に変えている。木は、消えることのない炎の葉で覆われて、タヌキングが自在に炎の葉を操り、山に登ろとする冒険者目掛けて、攻撃してくるのである。タヌキングの討伐難度は、C1であり、この国では、最高難度の魔獣である。

 しかし、タヌキングの討伐難度がC1なのは、タヌキングの強さもあるのだが、さらに配下であるモエタヌキの存在もある。

 モエタヌキは、討伐難度はFと、かなり低いが、その愛くるし黒い大きな瞳で、冒険者を誘惑し、ふさふさの茶色い毛並みで、冒険者の心も体も癒してくれる。一度モエタヌキの魅了に誘惑された者は、本来の目的を忘れて、モエタヌキと共に、森で楽しく過ごして、山を降りて行くのであった。


 「タヌキングにモエタヌキ軍団か・・・かなりの強敵だな」

 「そうですね。モエタヌキの誘惑に、勝てる自信がないわ」

 「モエタヌキの可愛さは、どんなに高ランク冒険者でも、勝てないと、言われているみたいよ」

 「私がいるから、安心するといいわ。サラマンダーより可愛い生き物なんて、いるわけないのだから」


 サラちゃんは、可愛いいと思うけど、サラマンダーの姿は、余程の爬虫類の好きな人しか、可愛さがわからないと思ったが、ここは、あえてスルーしておこう。

 しかし、私には、タヌキング、モエタヌキよりも、あの子の事が、気になって仕方がない・・・・またあの子が、とんでもないことを、やらかしていないことを祈ろう。


 私たちが、カチンカチン山にたどり着くと、思っていた感じとは違っていた。燃え盛る木などはなく、普通の穏やかな山であった。私たちの得た情報は、間違っていたのであろうか・・・


 「全然燃えて、ないじゃないか」

 「そうですわ。聞いていた感じとは、違いますわ」

 「そうだな・・でも気をつけろ、いつ攻撃を、仕掛けてくるかわからないぜ」

 「私に、おそれをなして、逃げたのですわ。さあ進みましょう」


 早くマグマ石を、手に入れたいサラちゃんが、先を急ぐのであった。


 「待て、サラ、モエタヌキもいるし、慎重に行動しろ」

 「問題ないですわ。私の可愛さに嫉妬し、モエタヌキ軍団は、白目を剥いて倒れていますわ」

 「そんなことないだろ・・・・・」

 「どうなっているのかしら」

 「これはどういうことだ」


 私たちが、山を登っていくと、そこには、とても可愛らしいモエタヌキが、目を白くて、倒れていた。倒れている姿も、とても愛くるしくて、萌え萌えしてしまうのである。

 
 「きゃーかわいいーーー」


 ポロンさんが、倒れているモエタヌキを、ぬいぐるみのように抱き抱える。

 ポロンさんは、魅了にかかったわけではなく、本当に可愛くて、抱き抱えているみたいである。


 「ここで何があったんだ」

 「私たちより先に、誰かが、ここを訪れたと思いますわ」

 「それにしても、こんなに可愛いモエタヌキに、容赦なく攻撃できるのヤツは、一体何者なんだ」

 「そうね。私には、無理かもしれないわ」

 「そんなの楽勝よ。私なら、秒で片付けてあげるわ。それよりも、早く、マグマ石を食べに・・・取りに行きましょう」


 確かに、早くマグマ石を、取りに行かないと、危ないかもしれない。もしモエタヌキを倒した犯人が、あの子なら、マグマ石を、残さずに、全部持っていくはずだから。


 私たちは、モエタヌキを抱きしめて、離さないポロンさんを、無理矢理に引っ張って、山頂を目指した。

 山頂にたどり着くと、そこには、モエタヌキ同様に、白目をむいて倒れているタヌキングがいた。


 「タヌキングまでも、倒されているわ」

 「一体誰の仕業なんだ・・・タヌキングは、討伐難度C1の魔獣だぜ。こんな簡単に、倒せる冒険者などいるのか」


 「可愛いね。可愛いね」


 ポロンさんは、まだモエタヌキを離さずに、大事に抱きしめている。恐るべし、モエタヌキの可愛さである。

 
 「そんなことより、マグマ石を、探さないといけませんわ」


 サラちゃんの言う通りである。私たちは、タヌキングを、討伐しに来たのでなく、マグマ石を取りに来たのである。


 「マグマ石は、どこにあるのだろう」

 「そんなのタヌキングに、聞けばいいのよ」


 サラちゃんは、倒れているタヌキングを、乱暴に揺すって、無理やり目を覚まさせた。


 「勘弁してくれーーー。好きなだけマグマ石を、持って行っていいから、もういじめないでくれ」

 「やったぁーー。好きなだけ、持って行っても、いいみたいよ。タヌキングさん、どこにマグマ石はあるのですか」

 「そこの洞穴が、俺の寝床になっている。そこにたくさんあるはずだ」

 「ありがとう。私が、全部もらってあげるわーー」


 サラちゃんは、疾風のごとく、タヌキングの洞穴に入っていった。


 「サラ、待て、全部持っていくなよ」


 トールさんが、慌てて追いかけて行った。このままでは、サラちゃんが、マグマ石を、全部持って行ってしまいそうである。

 洞穴に入った2人が、なかなか出てこない。何かあったのだろうか・・心配になった私とロキさんは、洞穴に入って行った。もちろんポロンさんは、モエタヌキを抱いて、癒されている最中である。

 洞穴に入ると、そこはとても大きな、空間になっていた。体長5mのタヌキングが、生活しているのだから当然のなのかもしれないが、想像以上に広くてビックリした。あたりは、タヌキングの魔法の効力で、至る所に灯りがあり、全体を見渡す事ができる。

 洞穴の奥に、サラちゃんとトールさんが見えた。


 「えーーーん。えーーーん」


 サラちゃんが、泣いている。何かあったのだろうか・・・


 「えーーーん。えーーーん」

 「サラ、泣いても仕方ないぞ」

 「だって、私のマグマ石が、どこを探してもないのよーー」

 「お前のじゃないだろ」

 「全部くれるって、タヌキングが言ってたもん」

 「そういう意味じゃないだろ」


 マグマ石は、全て持ち去られた後だった。モエタヌキ、タヌキングを倒した人物が、持って行ったのだろう。

 私の心配していたことが、的中してしまったのであった。
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