【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。

ninjin

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最低水準と古きデータ

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 ハスクは座り込んだ姿勢のまま、仕留めた獲物を見つめ、得意げな顔でアルカに声をかけた。

「初級でも一時間で魔法を成功させたなんて、私は天才かしら」

 アルカはハスクの嬉しそうな顔を見て、なぜ初級魔法を成功させた程度で満足しているのか、その感情的な理由を理解できない。

「一時間での魔法の習得。妥当な習得時間だと分析される。しかし、貴様が習得したのは初級魔法だ。それに加えて、貴様の初級魔法は全ての点において最低限度の水準でしかない。初級魔法を習得したと呼べるほどのものではない。さらに精進し、精度をあげる必要がある」

 アルカの厳しすぎる分析に、ハスクは一切気に留めることなく、仕留めた獲物を見てニヤついていた。彼女の喜びは、アルカの冷たい論理では消せないほど確かなものだった。


「次は貴様の番だ。寝ている場合ではない。貴様はやる気があるのだろうか」

 アルカの視線は、ハスクではなく、二人の会話から少し離れた場所で、邪魔にならないようにぐっすり眠りについてしまったリーネに向けられていた。リーネは、ハスクたちの邪魔にならないように時間を潰している間に、眠気に襲われ、そのまま深い眠りに入ってしまったのだ。

 ハスクは天使のような可愛い寝顔のリーネを起こすのが忍びなかった。

「あらあら、リーネちゃん、眠たくなったのね。このままお昼寝をさせてあげたいわ」

 しかし、アルカは違う。

「起きろ、リーネ。貴様は魔法を習得したいのだろう。お昼寝は三〇分までが最適な体力と集中力の回復に優れている。それ以上の睡眠は非効率で無駄だ」

 アルカの強めの口調で目を覚ましたリーネは、すぐにアルカに魔法の指導を乞うた。

 リーネの訓練に入る前に、アルカはハスクに尋ねた。

「私のデータでは人間は魔力による魔法の発動はできない。しかし、何者かの改造により、魔力で魔法を使えるようになった。それで間違いないな」
「そうよ」

「よし。人間が魔力による魔法を使用できる前提で話しを進める。魔力による魔法はマナの魔法と同じく、あらゆる現象を生み出すことが可能だ。だが、マナと違って、種族によって得手不得手というものがある」

 アルカは、自身の持つ古代のデータをハスクに確認させるように羅列した。

「ドワーフ族は極限付与魔法(付与魔法)、巨人族は剛体錬成魔法(強化魔法)、竜人族は天災召喚魔法(攻撃魔法)、獣人族は生命回帰魔法(回復魔法)、そしてエルフ族は全ての魔法を得意とする最強種族だ。人間族はどのような魔法が得意なのだ」

 ハスクはアルカに頼られたことが嬉しくて、自慢げに説明しだした。

「私の知っている範囲で説明するわね。さっきも説明したけど、平民だと生活魔法しか使えないわ。でも、貴族は基本は火、水、風、土の四つの得意属性があるのよ。もちろん全ての魔法を使うことはできるけど、自分の属性にあった魔法を使った方が威力が増すし、成長も早いわ」

 ハスクはさらに続けた。

「属性を調べるには神殿へ赴き、神官に判断してもらう必要があるの。でも寄付金が必要となるわ。噂では寄付金の額が多いほど属性が増えたり、魔力量が急にあがるなんてこともあるらしいわ。神様も金額次第で色を付けてくれるのかもね」

 ハスクの話を聞いたアルカの青い瞳の光が、激しく明滅した。

「理解不能。絵空事。データとしての収集不可能」

 アルカは簡潔に結論づけた。

 アルカの記憶装置にある古代のデータには、火、水、土、風という四つの属性の概念は存在しなかった。アルカが知る魔法は、すべて概念に基づいたものだ。さらに、神殿の寄付金という非論理的な要素が魔法のシステムに関与しているという事実に、彼の演算領域が混乱する。

「解析完了。現行の魔法システムは、私のデータと決定的に矛盾している。特に貴様の言う人間族の四属性は、古代の法則と全く異なる。属性や噂の真偽は判断できない」

 アルカは自らの知識の限界を認めつつ、行動プロトコルを決定した。

「解析完了。全ての属性を試して適性を確認する」

 アルカは、自分の知る古代の全ての魔法属性を試すという、非効率的だが確実な方法でリーネの魔法の適性を調べることにした。

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