【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。

ninjin

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闇を穿つ光と、感情の制御プロトコル

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 強烈な光線が夜の闇を貫いた直後、凄まじい風速の突風が、爆心地から後方へと逆巻いた。

「分析不能、解析不能、計測不能」

 アルカはハスクが光の球体を作り出した瞬間に最高出力でマナを噴射し、リーネを抱き抱えてハスクから離れた。しかし、突風に巻き込まれたアルカは、まるで木の葉のように宙を舞い、五十メートルほど吹き飛ばされた。

 アルカの服はドワーフが作った最高品質の極限付与魔法が施された防具だったが、突風と地面に叩きつけられた衝撃でずたぼろになる。だが、アルカは身を挺してリーネを完璧に守り抜いた。

 光線が山を突き抜けて消え、周囲に安全が戻ると、アルカは立ち上がろうとした。しかし、全身に激しい衝撃を受けており、制御系にトラブルが発生していた。

「激しい衝撃により制御系にトラブル発生。速やかに脈動みゃくどうの回復プロトコルを起動する」

 アルカは自身を分析し、マナによる魔法で故障を瞬時に修復した。動けるようになったアルカは、リーネを抱えたまま、何もない更地で意識を失っているハスクの元へ駆け寄った。

「生命反応あり。意識不明。外皮損傷なし」

 アルカはハスクの無事を確認すると、その体を大きく揺さぶった。

「早く起きろ。緊急事態だ」
「……何があったの?」

 ハスクは自分がしたことに全く気づいていなかった。

「あれを見ろ」

 アルカは、夜の闇を切り裂くようにしてできた、山を貫通する巨大な一本道を指さした。

「何あれ?何が起きたの?まさか、アルカがやったの?」

 ハスクは呆然と問う。

「あれは貴様がやったのだ。今回も何も覚えていないのだな」

「ごめんなさい、アルカ……」

 ハスクに反論の余地はなく、謝るしかなかった。

「予定変更。野営をせずに先へ進む」

 アルカは過去を振り返らず、今すべき最善の道を分析した。

「わかったわ」

 ハスクもアルカの提案を受け入れた。山にぽっかりと大きな穴ができたのだ。すぐに異変に気づいた追手がここへ来る可能性は極めて高い。ここで野営をするのは無謀だった。

「リーネは大丈夫なの?」

 ハスクは、静かに眠っているリーネの身を心配する。

「疲労回復のため休眠状態だ。こやつはこのまま休息を取らせるのがよいだろう」

 ハスクとアルカは馬車まで戻り、凹凸が全くない一本道を全速力で走らせた。馬車の乗り心地は舗装された道よりも快適で、馬への負担もほとんどない。ハスクの暴走は、最悪の状況と同時に、最良の脱出路を生み出したのだった。だが、馬車の上は暗雲に包まれていた。

「貴様は自分がしたことを理解しているのか」

 アルカの冷たい声が響く。

「ごめんなさい」

 ハスクは力なく謝る。

「貴様の暴走でリーネは生命装置が停止するところだった。貴様はリーネを守ると誓を立てたが、真逆の行動をしたのだ」
「ごめんなさい」

「貴様に吸収された未知の力(エレメンタル)。貴様はその力を制御できずに力に飲まれてしまった。一度目はリーネの生命を救う良い結果に終わったが、二度目は逆の結果になるところだった。その力の制御方法は、データ封印により私にはわからない。私のデータが復元できるまでは、その力に浸食しんしょくされるな」

「わかっているわ。でも、どうやったら良いのかわからない」

 ハスクの瞳は絶望に曇る。

「二度の状況から分析すると、貴様の感情のコントロールが崩壊した時に、その力が貴様に代わって肉体をコントロールしていると分析結果が出た」
「私の感情のコントロールが鍵なのね……」

「そういうことだ。しかし、貴様の今までの行動から、それを貴様が実現するのは不可能だと分析済みだ」
「……」

 ハスクは何も言い返せない。感情とは、溢れ出る情熱と憤怒、悲愴の泉。人間はこれを完璧に制御することなどできない。


「ドワーフの住む国へ向かおう。ドワーフの極限付与魔法の技術なら、貴様の暴走を制御できるはずだ」

 アルカは解決策を提示した。

「でも、アルカの封印を解く必要があるわ」

 アルカの封印を解くことが、ハスクが未知の力を使いこなす唯一の手がかりとなる。アルカはハスクを見つめた。

「どちらを優先すべきかは、貴様が一番理解しているだろう。答えは貴様の顔に出ている」

 ハスクはリーネとアルカを危険にさらしたことを激しく後悔している。しかし、どんなことが起きても冷静さを保てる自信もない。ハスクはアルカの封印を解くのが先と口では言ったが、明らかに表情は曇っていた。それ自体が感情をコントロールできていない証拠だ。

「……」

 ハスクは無言で返事をする。

 アルカはハスクの表情を読み取った。

「七色の湖の次はドワーフの住む国へ向かう」

 アルカの青い瞳は、冷たいながらも、確かな道標を指し示していた。
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