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朝日の目覚めと、七色の導き
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永遠に続くかのような一直線の道、それは究極の破壊プロトコルが山脈を貫いて生まれた一本道だった。ハスクは、その非現実的な道のりの中で、いつの間にか眠りに落ちていた。睡眠は、魔法でも解決できない人間に必要な生命維持の最重要プロトコルだ。ハスクとリーネは、まるで死んだかのように深く眠っていた。
アルカに睡眠は不要だ。彼は馬と一緒に一睡もせずに、山を貫く巨大な空洞を抜けた。
空洞を抜けると、世界は一変した。微かな明かりがアルカを照らし、太陽が遠く離れた森林からわずかに顔を出していた。山脈を抜けた先に広がっていたのは、幻想的な静寂に包まれた森だった。古木の枝には苔が優しく絡みつき、木々の間を縫うように差し込む朝日は、まるで妖精の舞台のように、地面に光の粒子を振りまいていた。
しかし、アルカの冷静な聴覚は、その幻想的なささやきの中に、微かな川の流れる音を捉えた。
「分析完了。川沿いを走れば、七色の湖に到達する。それに、馬にも睡眠は必要だ」
アルカは川のほうへ進行を変更する。川沿いに着くと馬車を止め、馬に休息を与えた。小鳥の小さなさえずりと、澄み切った川のせせらぎだけが響く。アルカは感情というノイズに邪魔されることなく、周囲の警戒を怠らなかった。
その時、リーネが目を覚ます。
「アルカお兄ちゃん、おはようございます。私、お腹空いたの」
昨日は緊急事態で野営もせず馬車を走らせたため、食事はしていない。アルカは馬車の荷台から、前日の狩りで仕留めたウサギと残りのパンを取り出してリーネに渡す。
「これが朝食の材料だ。自分で作れ」
「はいなの!」
リーネは寝起きなのに大きな声で返事をした。
リーネの声を聞いたハスクも目を覚ます。
「おはよう、アルカ、リーネちゃん」
「ハスクお姉ちゃん、おはようございます」
リーネは元気よく挨拶をかえす。
「リーネちゃん、今から料理をするの?」
「はいなの」
「じゃあ、リーネちゃん。私はウサギのステーキバーガーを食べたいわ」
ハスクは前世の記憶にあった食の喜びを思い出し、無邪気に言った。
「ステーキバーガー?」
リーネは初めて聞く名に目を丸くした。
「アルカ、リーネちゃんの調理魔法は、調理の出来上がりをイメージすれば良いのよね」
「そうだ。魔力による魔法とはイメージが全てだ。鮮明なイメージで外観も味も決まる。すなわち魔力が調味料となるのだ」
ハスクは前世で食べたステーキバーガーの造形をリーネに詳しく教えた。味の説明は難航したが、ハスクはリーネが今まで食べた食事内容を聞き出し、それに近い味を組み合わせるよう指導した。これほど必死にリーネに説明したのは、ハスクは前世の記憶の料理を食べたかったからである。
リーネはハスクに教えてもらった通りにイメージすると、肉汁がたっぷり染み込んだステーキバーガーを二つ作り出した。
「すごくおいしそうだわ!」
ハスクは目を爛々と輝かせて喜んだ。リーネはハスクが喜んでいる姿をみて、嬉しそうに微笑んだ。
アルカは食事は不要だが、料理が失敗していないか確認するために鑑定する。
「成分、風味、外観、全てにおいて一〇〇点。リーネの魔法の才能はエルフ族と同等と解析される」
「本当にリーネちゃんはすごいわね」
ハスクは美味しい料理が食べられるので気分が上々だ。今回は素直にリーネの魔法の才能を褒めたたえた。リーネは二人に褒められてニコニコと微笑みながら食事を終えた。昨日の両親の死の真相は、悪い夢だったかのように、今のリーネは幸せそうな笑みを浮かべていた。ハスクもあえて昨日の出来事は振り返らないようにしていた。
「食事がすんだのなら先に進むぞ」
馬の休息も終え、三人は馬車に乗り込み、七色の湖へ向かう。アルカの分析では、今目の前で流れている川の上流へ行けば七色の湖に辿り着くと判断していた。
馬車が進むにつれ、ハスクの瞳が驚きに見開かれた。
「川の色が変化したわ。黄色の川なんて存在するのね」
ハスクの視界では、先へ進むにつれて、川の水の色が澄んだ青から淡い黄金色へと、確かに変化していった。
しかし、リーネは首を傾げた。
「私には、ずっときれいな青色に見えるの」
リーネは川の色の変化に全く気付かない。アルカは、この認識の齟齬を冷静に解析した。
「この川のマナ濃度は異常に高い。そのために貴様にはマナの光の波長が干渉し、黄色く視覚できる。だが、マナを視覚できないリーネには、川の色の変化に気付かないのだ」
アルカはさらに思考を深める。
「おそらく、七色の湖とは、マナが異常に多く発生する場所だろう。そのために、マナを扱えた古人が、マナの光のグラデーションを見て七色の湖と呼んだと推測される」
アルカは川の鑑定をして、七色の湖と呼ばれる所以を論理的に導き出した。
「このまま上流を目指せば、必ず七色の湖は存在する」
アルカの分析は確信へと変わる。アルカの分析どおり、三時間後、彼らはついに七色に輝く湖に到着した。
アルカに睡眠は不要だ。彼は馬と一緒に一睡もせずに、山を貫く巨大な空洞を抜けた。
空洞を抜けると、世界は一変した。微かな明かりがアルカを照らし、太陽が遠く離れた森林からわずかに顔を出していた。山脈を抜けた先に広がっていたのは、幻想的な静寂に包まれた森だった。古木の枝には苔が優しく絡みつき、木々の間を縫うように差し込む朝日は、まるで妖精の舞台のように、地面に光の粒子を振りまいていた。
しかし、アルカの冷静な聴覚は、その幻想的なささやきの中に、微かな川の流れる音を捉えた。
「分析完了。川沿いを走れば、七色の湖に到達する。それに、馬にも睡眠は必要だ」
アルカは川のほうへ進行を変更する。川沿いに着くと馬車を止め、馬に休息を与えた。小鳥の小さなさえずりと、澄み切った川のせせらぎだけが響く。アルカは感情というノイズに邪魔されることなく、周囲の警戒を怠らなかった。
その時、リーネが目を覚ます。
「アルカお兄ちゃん、おはようございます。私、お腹空いたの」
昨日は緊急事態で野営もせず馬車を走らせたため、食事はしていない。アルカは馬車の荷台から、前日の狩りで仕留めたウサギと残りのパンを取り出してリーネに渡す。
「これが朝食の材料だ。自分で作れ」
「はいなの!」
リーネは寝起きなのに大きな声で返事をした。
リーネの声を聞いたハスクも目を覚ます。
「おはよう、アルカ、リーネちゃん」
「ハスクお姉ちゃん、おはようございます」
リーネは元気よく挨拶をかえす。
「リーネちゃん、今から料理をするの?」
「はいなの」
「じゃあ、リーネちゃん。私はウサギのステーキバーガーを食べたいわ」
ハスクは前世の記憶にあった食の喜びを思い出し、無邪気に言った。
「ステーキバーガー?」
リーネは初めて聞く名に目を丸くした。
「アルカ、リーネちゃんの調理魔法は、調理の出来上がりをイメージすれば良いのよね」
「そうだ。魔力による魔法とはイメージが全てだ。鮮明なイメージで外観も味も決まる。すなわち魔力が調味料となるのだ」
ハスクは前世で食べたステーキバーガーの造形をリーネに詳しく教えた。味の説明は難航したが、ハスクはリーネが今まで食べた食事内容を聞き出し、それに近い味を組み合わせるよう指導した。これほど必死にリーネに説明したのは、ハスクは前世の記憶の料理を食べたかったからである。
リーネはハスクに教えてもらった通りにイメージすると、肉汁がたっぷり染み込んだステーキバーガーを二つ作り出した。
「すごくおいしそうだわ!」
ハスクは目を爛々と輝かせて喜んだ。リーネはハスクが喜んでいる姿をみて、嬉しそうに微笑んだ。
アルカは食事は不要だが、料理が失敗していないか確認するために鑑定する。
「成分、風味、外観、全てにおいて一〇〇点。リーネの魔法の才能はエルフ族と同等と解析される」
「本当にリーネちゃんはすごいわね」
ハスクは美味しい料理が食べられるので気分が上々だ。今回は素直にリーネの魔法の才能を褒めたたえた。リーネは二人に褒められてニコニコと微笑みながら食事を終えた。昨日の両親の死の真相は、悪い夢だったかのように、今のリーネは幸せそうな笑みを浮かべていた。ハスクもあえて昨日の出来事は振り返らないようにしていた。
「食事がすんだのなら先に進むぞ」
馬の休息も終え、三人は馬車に乗り込み、七色の湖へ向かう。アルカの分析では、今目の前で流れている川の上流へ行けば七色の湖に辿り着くと判断していた。
馬車が進むにつれ、ハスクの瞳が驚きに見開かれた。
「川の色が変化したわ。黄色の川なんて存在するのね」
ハスクの視界では、先へ進むにつれて、川の水の色が澄んだ青から淡い黄金色へと、確かに変化していった。
しかし、リーネは首を傾げた。
「私には、ずっときれいな青色に見えるの」
リーネは川の色の変化に全く気付かない。アルカは、この認識の齟齬を冷静に解析した。
「この川のマナ濃度は異常に高い。そのために貴様にはマナの光の波長が干渉し、黄色く視覚できる。だが、マナを視覚できないリーネには、川の色の変化に気付かないのだ」
アルカはさらに思考を深める。
「おそらく、七色の湖とは、マナが異常に多く発生する場所だろう。そのために、マナを扱えた古人が、マナの光のグラデーションを見て七色の湖と呼んだと推測される」
アルカは川の鑑定をして、七色の湖と呼ばれる所以を論理的に導き出した。
「このまま上流を目指せば、必ず七色の湖は存在する」
アルカの分析は確信へと変わる。アルカの分析どおり、三時間後、彼らはついに七色に輝く湖に到着した。
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