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第24話 トビーの思い
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毎日、良いものがたくさん拾えることなどあり得ない。アルトがゴミ山から拾ってくる品の数は徐々に減っていった。トビーから1か月の雇用カードを与えられ、順調に利益を上げていたアルトだったが、1か月が経過する頃には、ほとんど何も拾えなくなってしまった。その日の夜、アルトはトビーと一緒にいつもの高い食堂へ向かった。アルトは沈んだ声で正直に打ち明けた。
「ごめん、もうあの場所では良い品は拾えないよ」
アルトの目利きが優秀なことはトビーも理解している。つまり、そのゴミ山のエリアでは本当に枯渇したということだ。しかし、トビーは焦りを見せなかった。
「謝るな。お前は何も悪くない。丁度、あの雇用カードの期限が切れる頃合いだ。別の地区のカードを手に入れて来たぜ」
トビーは屈託のない笑顔で言った。ゴミ山は所詮ゴミの集まりであり、無限に宝が出る場所ではない。この状況は想定内だったのだ。
「やっぱり、トビーはすごいな」
アルトは心の底から感嘆し、もう完全にトビーを信じきっていた。
トビーの勧めで、アルトの生活は一変していた。服装はボロボロの泥底に似合う恰好をしているものの、アルトは泥底で一番良い宿に泊まり、食事も一番高い食堂に通うようになっていた。しかも、店員には少ないながらもチップを渡すようになり、それによって好待遇を受けるようになっていた。一方、借金の返済はすぐに全額返さずに、毎日の利子と少しずつの返済に留めていた。トビーからは、すぐに借金を全額返済すれば、自分たちのやっていることが目立ち、バレるから少量にするように言われていた。また、チップを渡すのも、ゴミ山の仕事をしているのに羽振りがよいことを内密にしてもらうためだと説明を受けていた。 泥底を知り尽くしたトビーの、その緻密な知識と配慮に、アルトは尊敬すらしていた。
こうしてアルトはトビーに従い、借金を返すために新しい生活を送り始めてから、3か月が経過した。
一方、アルトがゴミ山で黙々とガラクタを漁っている頃、トビーは正装を纏い、王都の一等地に店を構える高級宝飾店【白金の聖櫃《プラチナ・アーク》】を訪れていた。店員に案内されたトビーが通されたのは、売り場ではなく、買取部屋のさらに奥。隠された階段から降りる地下室であった。
地下室は、黒を基調とした豪華な内装で整えられており、壁際には高価な装飾品が並んでいた。中央にはふかふかのソファーが置かれ、そこに1人の細身の男性が座っていた。彼は、真っ黒のスーツに身を包み、顔を真っ黒の仮面で隠していた。
トビーはソファーの前に進み出たが、座ることは許されず、床に正座した。
「お前が拾って来たアルトという少年のがお前より金を産むようだな」
仮面の男は、トビーに対し、高圧的な言い方で冷たく話しかけた。トビーはその言葉にただ小さく返事をした。
「はい」
「謙遜するな。すべてお前の計画どおりになっているのだろう」
トビーは返事をしなかった。
トビーは毎日神殿へ赴き、泥底へ来る新参者の力を調べていたのだ。アルトを騙したように借金漬けにして、その人物の力を見極めて、利用できるか試していた。利用価値なしと判断すれば、ゴミ山の作業だけやらせて一生借金の沼から抜け出せないようにする。もし利用価値があると判断すれば、さらにアルトのように傀儡して、才能を最大限にして利用してお金を生み出す。ぼったくりの店、収容所に連れ込まれて再会するまでの経緯、【白金の聖櫃《プラチナ・アーク》】での買取に至るまで、全て綿密に計画されたことであり、アルトはトビーの手のひらで踊らされていたのだ。
「あの小僧はまだまだ金を産み続ける。ゴミ山の次はどのような計画を考えているのだ」
男はトビーに、次の計画を尋ねた。しかしトビーは、質問には答えず、鋭い視線を男に向けた。
「妹はいつ返してくれるのだ。もう約束の金額は支払い終えただろ」
男は仮面の下で冷笑したかのような声を発した。
「そう焦るな。時期に妹は解放してやる。しかし、一度奴隷落ちした人間を平民に戻すには、さらにお金が必要になるのは、お前も知っているだろう。そのお金を支払い終えるまでは、アイツは俺の奴隷のままだ。だがな、勘違いするなよ!俺はいつだってお前の妹を娼館に売りに出すことだってできるんだ。お前はきちんと立場をわきまえろ」
男はトビーを一喝する。
「な……、生意気な口をきいて申し訳ありません。お願いします。どうか一度だけでも妹に会わしてください」
トビーは床に正座したまま、頭を床に擦り付けて懇願した。
「ごめん、もうあの場所では良い品は拾えないよ」
アルトの目利きが優秀なことはトビーも理解している。つまり、そのゴミ山のエリアでは本当に枯渇したということだ。しかし、トビーは焦りを見せなかった。
「謝るな。お前は何も悪くない。丁度、あの雇用カードの期限が切れる頃合いだ。別の地区のカードを手に入れて来たぜ」
トビーは屈託のない笑顔で言った。ゴミ山は所詮ゴミの集まりであり、無限に宝が出る場所ではない。この状況は想定内だったのだ。
「やっぱり、トビーはすごいな」
アルトは心の底から感嘆し、もう完全にトビーを信じきっていた。
トビーの勧めで、アルトの生活は一変していた。服装はボロボロの泥底に似合う恰好をしているものの、アルトは泥底で一番良い宿に泊まり、食事も一番高い食堂に通うようになっていた。しかも、店員には少ないながらもチップを渡すようになり、それによって好待遇を受けるようになっていた。一方、借金の返済はすぐに全額返さずに、毎日の利子と少しずつの返済に留めていた。トビーからは、すぐに借金を全額返済すれば、自分たちのやっていることが目立ち、バレるから少量にするように言われていた。また、チップを渡すのも、ゴミ山の仕事をしているのに羽振りがよいことを内密にしてもらうためだと説明を受けていた。 泥底を知り尽くしたトビーの、その緻密な知識と配慮に、アルトは尊敬すらしていた。
こうしてアルトはトビーに従い、借金を返すために新しい生活を送り始めてから、3か月が経過した。
一方、アルトがゴミ山で黙々とガラクタを漁っている頃、トビーは正装を纏い、王都の一等地に店を構える高級宝飾店【白金の聖櫃《プラチナ・アーク》】を訪れていた。店員に案内されたトビーが通されたのは、売り場ではなく、買取部屋のさらに奥。隠された階段から降りる地下室であった。
地下室は、黒を基調とした豪華な内装で整えられており、壁際には高価な装飾品が並んでいた。中央にはふかふかのソファーが置かれ、そこに1人の細身の男性が座っていた。彼は、真っ黒のスーツに身を包み、顔を真っ黒の仮面で隠していた。
トビーはソファーの前に進み出たが、座ることは許されず、床に正座した。
「お前が拾って来たアルトという少年のがお前より金を産むようだな」
仮面の男は、トビーに対し、高圧的な言い方で冷たく話しかけた。トビーはその言葉にただ小さく返事をした。
「はい」
「謙遜するな。すべてお前の計画どおりになっているのだろう」
トビーは返事をしなかった。
トビーは毎日神殿へ赴き、泥底へ来る新参者の力を調べていたのだ。アルトを騙したように借金漬けにして、その人物の力を見極めて、利用できるか試していた。利用価値なしと判断すれば、ゴミ山の作業だけやらせて一生借金の沼から抜け出せないようにする。もし利用価値があると判断すれば、さらにアルトのように傀儡して、才能を最大限にして利用してお金を生み出す。ぼったくりの店、収容所に連れ込まれて再会するまでの経緯、【白金の聖櫃《プラチナ・アーク》】での買取に至るまで、全て綿密に計画されたことであり、アルトはトビーの手のひらで踊らされていたのだ。
「あの小僧はまだまだ金を産み続ける。ゴミ山の次はどのような計画を考えているのだ」
男はトビーに、次の計画を尋ねた。しかしトビーは、質問には答えず、鋭い視線を男に向けた。
「妹はいつ返してくれるのだ。もう約束の金額は支払い終えただろ」
男は仮面の下で冷笑したかのような声を発した。
「そう焦るな。時期に妹は解放してやる。しかし、一度奴隷落ちした人間を平民に戻すには、さらにお金が必要になるのは、お前も知っているだろう。そのお金を支払い終えるまでは、アイツは俺の奴隷のままだ。だがな、勘違いするなよ!俺はいつだってお前の妹を娼館に売りに出すことだってできるんだ。お前はきちんと立場をわきまえろ」
男はトビーを一喝する。
「な……、生意気な口をきいて申し訳ありません。お願いします。どうか一度だけでも妹に会わしてください」
トビーは床に正座したまま、頭を床に擦り付けて懇願した。
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