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第25話 先導者
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地下室の黒いソファーに座る黒の仮面の男はトビーの願いを一蹴した。
「ダメだ」
床に正座するトビーは必死に食い下がった。
「妹の元気な姿を一度でも見たいのです。私はあなた様の要望通りに多くのお金を集めました。少しくらい私の願いを叶えてください」
しかし、仮面の男は冷酷に却下し、トビーを侮蔑の眼差しで見下ろした。
「黙れ。お前は1人で全てやってきたつもりでいるが、うぬぼれるな。お前が蝿の王ベルゼブブや金色の蜘蛛アクネラから手を出されないのは俺のおかげだ。所詮お前は普通職業の話術士だ。俺はレア職業の先導者、俺の力なしではお前はただのペテン師に過ぎないのだ」
男はそう言い放ち、トビーを恫喝した。
(話術士は1対1で相手を自分の思い通りに動かすのに長けている。しかし、レア職業の先導者は異なる。言葉ではなく、威圧や激励によって1人で1000人をも思い通りに動かすことができる。少しでも先導者にビビったり、心を引かれたりすると、その言いなりになる。この効果の程度は人により様々だが、1度でも先導者に服従した者は、以降、簡単に服従してしまう。)
仮面の男の恫喝を受け、トビーの目の色は次第に力を失い、虚ろな目に変わっていった。これは先導者のスキルによるものだ。
「わかりました。あなた様に逆らうことなど絶対に致しませんので、妹には手を出さないで下さい」
トビーの声は抵抗を諦めたかのように小さく、震えていた。仮面の男の威圧に屈してトビーは服従してしまったようだった。仮面の男はトビーに近寄ると、先ほどとは打って変わり、優しく、慈愛に満ちた声をかけた。
「お前の頑張りは俺が一番よく知っている。もう少しだ。もう少しでお前の妹は奴隷から解放されて、平民としてお前の元へ帰してやる」
トビーは、その優しく諭すような言葉に心が引き寄せられるのを感じた。
「ありがとうございます。あなた様のためにがんばります」
トビーは涙を流しながらお礼を言った。しかし、仮面の男は一瞬にして声の調子を戻し、トビーの頭上から吐き捨てるように言い放った。
「バカが、お前は一生俺の奴隷として、金を集めてくれば良いのだ」
「はい、もちろんです。私はあなた様の為に一生お金を集めてきます」
トビーは完全に服従していた。先導者の威圧と共鳴は彼の精神を支配し、仮面の男が何を言っても、トビーはただ肯定することしかできない。
「早く出て行け」
「はい、すぐに出て行きます」
トビーは仮面の男の指示通り、一礼もせず、まるで操り人形のように部屋を出て行った。トビーの気配が完全に遠ざかると、仮面の男はソファーに深々と座り込み、小さな声で呟いた。
「先導のスキルの効果が切れるのが早くなっているな。シュペーアー、居るのか」
すると、部屋の隅の暗闇から、返事が返ってきた。
「はい、ずっとここに居ます」
仮面の男は冷たい目で扉を睨みつけたまま、命じた。
「シュペーアー、アイツに張り付いて置け。裏切りの匂いがする」
「はい、わかりました」
一方、トビーは【白金の聖櫃《プラチナ・アーク》】を出ると、先ほどまでの虚ろな瞳とは打って変わり、上機嫌で嬉しそうな顔になっていた。仮面の男の「もう少しで妹を解放する」という言葉だけが、彼の頭の中に残っていた。先導者のスキルに服従している間、トビーは先導者を心から信頼しており、彼に対する悪意や恫喝の言葉は全て記憶から消し去られるのだ。
「もう少しで妹を助けることができる。俺は妹を助けるためには何でもするぜ!」
トビーは大声で歓喜の声を上げる。嬉しくて感情が抑えきれなかったのだろう。トビーの記憶には、妹が解放される未来の喜びだけが強く刻まれていた。トビーは上機嫌のまま、足早に王都の高級住宅街へと足を運んだ。
その街並みは、泥底の世界とは、まるで別の惑星のようだった。20軒程度の屋敷しかないが、1つ1つがとてつもなく大きく、広大な庭園や装飾が施された噴水が備えられ、城郭のようにも見える豪華さだった。高く伸びた白亜の壁は外部の視線を完全に遮断し、清掃が行き届いた石畳の道には塵1つ落ちていない。王都の最高位の貴族たちだけが許される、光に満ちた特権的な空間。
トビーは、その高級住宅街を歩き続け、一際威容を誇る屋敷の前に立ち止まった。門には、精巧な装飾が施された重厚な鉄扉があり、その奥には広大な芝生の庭園が続いている。トビーは、その屋敷を静かに見上げ、そこで立ち止まった。
「ダメだ」
床に正座するトビーは必死に食い下がった。
「妹の元気な姿を一度でも見たいのです。私はあなた様の要望通りに多くのお金を集めました。少しくらい私の願いを叶えてください」
しかし、仮面の男は冷酷に却下し、トビーを侮蔑の眼差しで見下ろした。
「黙れ。お前は1人で全てやってきたつもりでいるが、うぬぼれるな。お前が蝿の王ベルゼブブや金色の蜘蛛アクネラから手を出されないのは俺のおかげだ。所詮お前は普通職業の話術士だ。俺はレア職業の先導者、俺の力なしではお前はただのペテン師に過ぎないのだ」
男はそう言い放ち、トビーを恫喝した。
(話術士は1対1で相手を自分の思い通りに動かすのに長けている。しかし、レア職業の先導者は異なる。言葉ではなく、威圧や激励によって1人で1000人をも思い通りに動かすことができる。少しでも先導者にビビったり、心を引かれたりすると、その言いなりになる。この効果の程度は人により様々だが、1度でも先導者に服従した者は、以降、簡単に服従してしまう。)
仮面の男の恫喝を受け、トビーの目の色は次第に力を失い、虚ろな目に変わっていった。これは先導者のスキルによるものだ。
「わかりました。あなた様に逆らうことなど絶対に致しませんので、妹には手を出さないで下さい」
トビーの声は抵抗を諦めたかのように小さく、震えていた。仮面の男の威圧に屈してトビーは服従してしまったようだった。仮面の男はトビーに近寄ると、先ほどとは打って変わり、優しく、慈愛に満ちた声をかけた。
「お前の頑張りは俺が一番よく知っている。もう少しだ。もう少しでお前の妹は奴隷から解放されて、平民としてお前の元へ帰してやる」
トビーは、その優しく諭すような言葉に心が引き寄せられるのを感じた。
「ありがとうございます。あなた様のためにがんばります」
トビーは涙を流しながらお礼を言った。しかし、仮面の男は一瞬にして声の調子を戻し、トビーの頭上から吐き捨てるように言い放った。
「バカが、お前は一生俺の奴隷として、金を集めてくれば良いのだ」
「はい、もちろんです。私はあなた様の為に一生お金を集めてきます」
トビーは完全に服従していた。先導者の威圧と共鳴は彼の精神を支配し、仮面の男が何を言っても、トビーはただ肯定することしかできない。
「早く出て行け」
「はい、すぐに出て行きます」
トビーは仮面の男の指示通り、一礼もせず、まるで操り人形のように部屋を出て行った。トビーの気配が完全に遠ざかると、仮面の男はソファーに深々と座り込み、小さな声で呟いた。
「先導のスキルの効果が切れるのが早くなっているな。シュペーアー、居るのか」
すると、部屋の隅の暗闇から、返事が返ってきた。
「はい、ずっとここに居ます」
仮面の男は冷たい目で扉を睨みつけたまま、命じた。
「シュペーアー、アイツに張り付いて置け。裏切りの匂いがする」
「はい、わかりました」
一方、トビーは【白金の聖櫃《プラチナ・アーク》】を出ると、先ほどまでの虚ろな瞳とは打って変わり、上機嫌で嬉しそうな顔になっていた。仮面の男の「もう少しで妹を解放する」という言葉だけが、彼の頭の中に残っていた。先導者のスキルに服従している間、トビーは先導者を心から信頼しており、彼に対する悪意や恫喝の言葉は全て記憶から消し去られるのだ。
「もう少しで妹を助けることができる。俺は妹を助けるためには何でもするぜ!」
トビーは大声で歓喜の声を上げる。嬉しくて感情が抑えきれなかったのだろう。トビーの記憶には、妹が解放される未来の喜びだけが強く刻まれていた。トビーは上機嫌のまま、足早に王都の高級住宅街へと足を運んだ。
その街並みは、泥底の世界とは、まるで別の惑星のようだった。20軒程度の屋敷しかないが、1つ1つがとてつもなく大きく、広大な庭園や装飾が施された噴水が備えられ、城郭のようにも見える豪華さだった。高く伸びた白亜の壁は外部の視線を完全に遮断し、清掃が行き届いた石畳の道には塵1つ落ちていない。王都の最高位の貴族たちだけが許される、光に満ちた特権的な空間。
トビーは、その高級住宅街を歩き続け、一際威容を誇る屋敷の前に立ち止まった。門には、精巧な装飾が施された重厚な鉄扉があり、その奥には広大な芝生の庭園が続いている。トビーは、その屋敷を静かに見上げ、そこで立ち止まった。
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