86 / 116
氷柱の秘密
しおりを挟む「よし!これで完成ね」
私は雪だるまに氷柱を差し込んで雪だるまを完成させた。
「プリンツちゃん、可愛いでしょ」
「そ・そうだね」
プリンツは雪だるまの可愛さを楽しむ余裕はなかった。それは、いつ白銀狐が現れるかもしれないという恐怖心があったからである。プリンツは知っていた。白銀狐は雪狐に復讐以外にも大雪山から降りてくることがある。それは、自分の分身とも言える氷柱を壊された時である。
氷柱は白銀狐の呪いによってできた魔力の結晶体である。約1ヶ月ほどかけて人間の体の魔力を吸い取って成長をする。人間が死ぬ頃には完全体となり、そこから独自の成長を遂げ大きいものなら20mほどの高さまで大きくなる。氷柱は白銀狐の魔力補給庫の役目を果たしているので、氷柱を破壊すれば、白銀狐は怒り狂って大雪山から降りてくるのである。しかし、氷柱は壊すことも近づくことも困難なので、今まで壊されたことなど一度もない。
「そうだわ!もっともっと大きい雪だるまちゃんを作ってあげるわ」
雪だるまを完成させた喜びから、プリンツが怯えていることに全く気づかない私は、さらに大きい雪だるまを作ることを決意した。
「行くわよ!」
私は気合を入れて小さな雪の塊をコロコロと転がし始めた。気合を入れた私の怪力で雪の塊はどんどん大きくなっていく。1分後には私の背丈の倍ほどになり、2分後には大きな屋敷ほどの大きさになり30分後には目視では雪の塊の大きさがわからないほどになっていた。
「これで胴体はできたわ。次は頭を作るわよ!」
私は雪だるま作りに没頭しすぎて周りが見えていなかった。私が雪だるまの胴体部分を作るために雪の塊を転がしている時に、たくさんの氷柱をへし折っていたこと、一面銀世界だった雪の大地をいつの間にか緑の大地に変えていたことを。
私が巨大な雪だるまを完成させた時には、雪で覆われていた元オランジェザフト帝国領だった6割の大地の半分は、緑の大地に変わっていたのである。
私の作った雪だるまは、あまりの大きさに目視で全てを確認することはできない。
「ちょっと張り切りすぎちゃったかもね」
雪だるまを大きく作りすぎて少し私は反省していた。
「プリンツちゃん、この雪だるまちゃんはどうかな?」
「さすがハツキお姉ちゃん、雪は雪狐の栄誉分で、氷柱は白銀狐の魔力補給庫になっている。まずは補給物資を潰すことで戦いを有利に進めるんだね」
氷柱は白銀狐の縄張りを増やす意味合いもある。氷柱は冷たい風を放ち雪雲を呼び寄せて、雪の大地に変貌させる。これは雪狐の餌を多量に用意するためでもある。豊富な餌で雪狐の活性化を図り繁殖を促すのである。雪狐の個体数が増えると、氷柱は雪狐を吸収して魔力を増幅させる。この溜め込んだ魔力は白銀狐の魔力補給庫となり無限の魔力を手にすることになる。
「はて?プリンツちゃんは何を言ってるのかしら?」
私はただ単に雪だるまを作って楽しんでいるだけである。
「しかし・・・なぜ白銀狐は姿を見せないのだろう」
プリンツは疑問に思っていた。私によってたくさんの氷柱が潰された。大事な魔力補給庫を壊された白銀狐は、すぐに姿を見せてもおかしくないはずなのに。
オラジェザフト帝国の6割を雪の大地に変えて領土を広げた白銀狐だったが、領土が増えて1番徳をしたのは白銀狐ではなく、大雪山の麓に聳え立つ精霊樹であった。精霊樹は樹液を飛ばして魔獣を混乱させ魔獣同志を殺させる。そして、死んだ魔獣の魔石を魔獣に運ばせて自らの養分にする。白銀狐は広くなりすぎた領土を管理できず、氷柱の養分になるはずの雪狐を精霊樹に奪われていた。雪狐も多量の餌で一時期は個体数も急激に増えたが、精霊樹と氷柱の養分にされて、今ではその数も激減している。なので、私が雪だるまを作っている時に雪狐の姿を見ることはできなかった。
「大きく作りすぎたから雪だるまちゃんをちゃんと認識できなかったのかな?」
私が作った大きな雪だるまは、巨大すぎて真っ白な壁にしか見えない。私は大きく作りすぎたことに反省して、雪だるまを作り直すことにした。
「次は小さめに作らないとね」
私は、雪の塊をコロコロと転がしだした。次は大きすぎず小さすぎずに丁度良い大きいさの雪だるまを作ることを意識した。数分後には全長30mほどの雪だるまを完成させた。
「これならプリンツちゃんも喜んでくれるかしら?あとは腕をつけたいな」
私はあたりを見渡すが、いい感じの氷柱が見つからない。
「あ!あんなところに大きな木があるわ」
私ははるか遠くに大きな木が生えていることに気づいた。
「プリンツちゃん、あんなところに大きな木が生えているわよ。ちょっと取ってくるわね」
「ハツキお姉ちゃん、あれは!精霊樹だよ。精霊樹の近くには白銀狐がいるから危険だよ」
私は雪だるまを作るために雪を転がしていたら、大雪山の麓付近まで来ていたのである。大きな木を見つけて喜んでいる私の耳には、プリンツの警告など聞こえていない。私は猛ダッシュで精霊樹の元へ走って行った。
精霊樹は人間には反応しない。それは、人間を守るために存在するからではなく、人間には魔石がないからであり、樹液の効果がないからである。
「ごめんなさい大木ちゃん。申し訳ないけど雪だるまちゃんの腕になってね」
精霊樹は高さ50mほどあり、見上げても頭頂部は見ることができない。そして、一面は銀世界なのに、精霊樹には雪が全く積もっておらず、緑の葉がキラキラと輝いている。私はピョンとジャンプして水平チョップをして精霊樹を半分に切った。そして、手の形をジャンケンのチョキの形にして、枝切りバサミのように枝をきれいに切り落とす。
「こんな感じでいいかな」
私は半分に切り落とした精霊樹から10mほどの2本のきれいな丸太を作ったのである。
「アイツは何者なのですか・・・私たちを苦しめていた精霊樹を、いとも簡単に切り落としてしまったわ」
大雪山の頂で精霊樹を監視していた白銀狐がボソリとつぶやいた。
1
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
『定年聖女ジェシカの第二の人生 〜冒険者はじめました〜』
夢窓(ゆめまど)
ファンタジー
「聖女の定年は25歳です」
――え、定年!? まだ働けるのに!?
神殿を離れた聖女ジェシカが出会ったのは、
落ちこぼれ魔術師、ならず者の戦士、訳あり美少年、気難しい錬金術師。
クセ者ぞろいの仲間と共に送る第二の人生は、冒険・事件・ドタバタの連続で!?
「定年だからって、まだまだ頑張れます!」
笑って泣けてちょっぴり恋もある、
元聖女の“家族”と“冒険”の物語。
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる