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恥
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「アルバトロス、いい面がまえをしているじゃないか。良い事でもあったのか?」
「うるさい。お前こそまだここでのんびりしていたのか」
俺は無我夢中で逃げて来て、ミーランが足を凍らされて動けなくなっている場所まで戻っていた。
「さすがメーヴェの魔法だ。強引に足を引っこ抜いたらちぎれてしまうぜ。おとなしくここで説教をされるのを待つしかないのだ」
ミーランは逃げるのを諦めていた。
「いい気味だ。俺は一人でも逃げるぜ」
「ちょっと待て!これだけは教えろ。ちゃんと覗けたのか?」
ミーランはいつになく真剣な面持ちである。
「遠くからだったので、良く見えなかったがとても美しい景色だった。まさに桃源郷と呼べる場所だった」
本当に美しい光景だった。今でも俺の瞼の裏には美しい白い柔肌と大きく揺れる二つの球体が焼き付いている。以前俺がスライムだと思っていた物体の正体はメーヴェの美しくて妖艶な体の一部だと知ってしまった。
「ガハハハハ、そうだな。あそこはまさに桃源郷と呼ぶに値する場所だ。なぜ、メーヴェたちが森の奥の川で水浴びをしていたかわかったか?」
「わかったような気がする。あれほど美しく心地よい景色だったが、人の心を惑わす神秘的で魅惑的な魅力を感じた。あの桃源郷は人を狂わす精神魔法に匹敵する効果があるのだろう。だから、メーヴェたちは俺たちを精神魔法から遠ざけるために森の奥で水浴びをしたのだと思う」
俺の導き出した答えは間違っているかもしれない。しかし、これだけは言えるだろう。許されるのならばもう一度だけ桃源郷を覗きたい・・・
「ガハハハハ、アルバトロス。お前も面白いことを言うようになったな。たしかに精神魔法に近い効果がありそうだな。ガハハハハ、ガハハハハ」
ミーランの笑いが止まらない。
「ミーラン、アル。見つけたわよ!」
しばらくすると、メーヴェとクレーエが俺たちのもとへやって来た。
「ミーラン、どうして私たちの水浴びを覗き見したのでしょうか?」
クレーエの静かなる恐怖がミーランを襲う。
「聞いてくれ、これはアルバトロスの疑問の答えを教えるためにしかたなくやったことなのだ。決して俺の本意ではないのだ」
「何をバカなことを言っているの!潔く自分の非を認めるのよ」
メーヴェがミーランを怒鳴りつける。
「本当なんだ。アルバトロスはお前達がなぜすぐ近くの川に入らずに森の奥まで行って水浴びをしたのか知りたかったのだ」
「言い訳をするなんて男らしくありません」
クレーエの冷酷な瞳がミーランに突き刺さる。
「アルバトロス、お前から説明してくれ」
ミーランは俺に助けを求める。
「メーヴェ、クレーエ、本当に申し訳ない。俺には理解できなかったのだ。すぐ近くに川があるのに、わざわざ森の奥まで水浴びをする理由が・・・。でも、なぜそうしたのか少しわかった気がする。あの美しくて魅惑的な姿を人前にさらすことは、あまりにも危険であり人の心を狂わしてしまう。俺も体が熱くなり自分を制御できなくなりそうだった。お前達は俺たちを守るためにあえて森の奥まで行ってくれたのだろう。その気遣いに気付けなかった俺は愚か者だ」
俺は正直に自分の感じたままの答えをメーヴェたちに伝えた。すると、メーヴェたちは顔を手で隠してしゃがみ込んだ。
「ガハハハハ、ガハハハハハ」
一方、ミーランの笑いは止まらない。
「本当なんだ。信じてくれ!あの大きな二つのやわらかそうな球体、そしてこぶりで小さな美しい二つの球体、今でも思い出すと俺の心を、体を、脳を刺激して変な気分にさせるんだ」
俺は三人の想定外の反応に焦りが募り必死に説明をする。
「アル、恥ずかしいからもういいわ。ねぇ、クレーエもいいでしょ」
「許しますので、もう何も言わないで下さい」
「ガハハハハハ、ガハハハハハ、お前の言い訳は一級品だぜ」
ミーランは空を見上げながら大笑いを続けた。
「本当に申し訳ない」
俺たちは馬車に乗り込み再びフリューリングに向けて出発する。キャリッジは6人乗りで前後に3人座ることができる。俺は後ろ側に座り対面する形でメーヴェとクレーエが前側に座る。今回は馬車の運転はミーランが担当する。あれから、メーヴェたちは俺に目を合わせることなくじっと下を向いている。俺がアルバトロスの体に入れ替わってからはほとんど会話を交わすことなく、俺がずっと下を向いたり窓から外の風景を眺めていたが、立場が逆転したようだ。こうなってしまったのは俺が原因だと理解することができるが、原因が何なのか理解できない。
「もういいの!アル」
いつも元気いっぱいの大声を出すメーヴェだが、恥ずかしそうに呟いた。しかし、はにかみながら答えるメーヴェの姿がとても可愛く感じたのはなぜだろう。
「もう二度とあのような過ちをおこさない。でも・・・あの美しい姿は余りにも幻想的で魅惑的だった」
「お願いだからやめてください。もう、その話はしないでください」
クレーエの単調で強弱のない心地よい声が少し震えているように感じた。しかし、その震えはとてもなまめかしく俺の体を刺激する。
「わかった」
俯いたメーヴェたちのなまめかしい姿を見て、さらなる刺激が体を襲い心臓が激しく鼓動する。メーヴェたちは拒絶感を示すというよりも恥じらいを感じているようだ。しかし、その理由に俺は気付くことはなかった。
「うるさい。お前こそまだここでのんびりしていたのか」
俺は無我夢中で逃げて来て、ミーランが足を凍らされて動けなくなっている場所まで戻っていた。
「さすがメーヴェの魔法だ。強引に足を引っこ抜いたらちぎれてしまうぜ。おとなしくここで説教をされるのを待つしかないのだ」
ミーランは逃げるのを諦めていた。
「いい気味だ。俺は一人でも逃げるぜ」
「ちょっと待て!これだけは教えろ。ちゃんと覗けたのか?」
ミーランはいつになく真剣な面持ちである。
「遠くからだったので、良く見えなかったがとても美しい景色だった。まさに桃源郷と呼べる場所だった」
本当に美しい光景だった。今でも俺の瞼の裏には美しい白い柔肌と大きく揺れる二つの球体が焼き付いている。以前俺がスライムだと思っていた物体の正体はメーヴェの美しくて妖艶な体の一部だと知ってしまった。
「ガハハハハ、そうだな。あそこはまさに桃源郷と呼ぶに値する場所だ。なぜ、メーヴェたちが森の奥の川で水浴びをしていたかわかったか?」
「わかったような気がする。あれほど美しく心地よい景色だったが、人の心を惑わす神秘的で魅惑的な魅力を感じた。あの桃源郷は人を狂わす精神魔法に匹敵する効果があるのだろう。だから、メーヴェたちは俺たちを精神魔法から遠ざけるために森の奥で水浴びをしたのだと思う」
俺の導き出した答えは間違っているかもしれない。しかし、これだけは言えるだろう。許されるのならばもう一度だけ桃源郷を覗きたい・・・
「ガハハハハ、アルバトロス。お前も面白いことを言うようになったな。たしかに精神魔法に近い効果がありそうだな。ガハハハハ、ガハハハハ」
ミーランの笑いが止まらない。
「ミーラン、アル。見つけたわよ!」
しばらくすると、メーヴェとクレーエが俺たちのもとへやって来た。
「ミーラン、どうして私たちの水浴びを覗き見したのでしょうか?」
クレーエの静かなる恐怖がミーランを襲う。
「聞いてくれ、これはアルバトロスの疑問の答えを教えるためにしかたなくやったことなのだ。決して俺の本意ではないのだ」
「何をバカなことを言っているの!潔く自分の非を認めるのよ」
メーヴェがミーランを怒鳴りつける。
「本当なんだ。アルバトロスはお前達がなぜすぐ近くの川に入らずに森の奥まで行って水浴びをしたのか知りたかったのだ」
「言い訳をするなんて男らしくありません」
クレーエの冷酷な瞳がミーランに突き刺さる。
「アルバトロス、お前から説明してくれ」
ミーランは俺に助けを求める。
「メーヴェ、クレーエ、本当に申し訳ない。俺には理解できなかったのだ。すぐ近くに川があるのに、わざわざ森の奥まで水浴びをする理由が・・・。でも、なぜそうしたのか少しわかった気がする。あの美しくて魅惑的な姿を人前にさらすことは、あまりにも危険であり人の心を狂わしてしまう。俺も体が熱くなり自分を制御できなくなりそうだった。お前達は俺たちを守るためにあえて森の奥まで行ってくれたのだろう。その気遣いに気付けなかった俺は愚か者だ」
俺は正直に自分の感じたままの答えをメーヴェたちに伝えた。すると、メーヴェたちは顔を手で隠してしゃがみ込んだ。
「ガハハハハ、ガハハハハハ」
一方、ミーランの笑いは止まらない。
「本当なんだ。信じてくれ!あの大きな二つのやわらかそうな球体、そしてこぶりで小さな美しい二つの球体、今でも思い出すと俺の心を、体を、脳を刺激して変な気分にさせるんだ」
俺は三人の想定外の反応に焦りが募り必死に説明をする。
「アル、恥ずかしいからもういいわ。ねぇ、クレーエもいいでしょ」
「許しますので、もう何も言わないで下さい」
「ガハハハハハ、ガハハハハハ、お前の言い訳は一級品だぜ」
ミーランは空を見上げながら大笑いを続けた。
「本当に申し訳ない」
俺たちは馬車に乗り込み再びフリューリングに向けて出発する。キャリッジは6人乗りで前後に3人座ることができる。俺は後ろ側に座り対面する形でメーヴェとクレーエが前側に座る。今回は馬車の運転はミーランが担当する。あれから、メーヴェたちは俺に目を合わせることなくじっと下を向いている。俺がアルバトロスの体に入れ替わってからはほとんど会話を交わすことなく、俺がずっと下を向いたり窓から外の風景を眺めていたが、立場が逆転したようだ。こうなってしまったのは俺が原因だと理解することができるが、原因が何なのか理解できない。
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いつも元気いっぱいの大声を出すメーヴェだが、恥ずかしそうに呟いた。しかし、はにかみながら答えるメーヴェの姿がとても可愛く感じたのはなぜだろう。
「もう二度とあのような過ちをおこさない。でも・・・あの美しい姿は余りにも幻想的で魅惑的だった」
「お願いだからやめてください。もう、その話はしないでください」
クレーエの単調で強弱のない心地よい声が少し震えているように感じた。しかし、その震えはとてもなまめかしく俺の体を刺激する。
「わかった」
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