石の庭

満月の石

もう数日で満月です。

なんかザワザワしますね。。



そう、数ヶ月前の話。

渡り鳥のように来て渡り鳥のように去った男はいったんです。

満月の日の前後は、女のあの日のように気が立つんだ。気を悪くしたらごめんね。

彼は狐の様にわらうし、狐のように跳ねた。長い髪を左右に揺らしながら。


音を出さずに近づいては真後ろに立ち、皆んなを驚かせては、跳ねて、コロコロと笑った。


そして別れの日、皆んなに皮付きの鹿肉をつかった、とてもスパイシーな香辛料が沢山入ったカレーを御馳走してくれた。

そんなお肉、どこで手に入るの？。。。

笑って、ある時には手に入るんだ。高級だよと小さく囁いて、また笑う。


変なやつだと思った。


私の周りには居ない人間だとおもったから。ただそれだけで、変なやつだとおもった。


私もしっかり型枠人間だったわけ。


本来、月に一度訪れる満月だけれど、今月は二回来るのかな？ほんと、女のあの日みたいだね。


いろんな月の名前を調べながら、ふと思い出したんだ。。。


でもね。


私は知っているよ、君の車の座席にあった赤い布の中身を。

少しだけ見えていたんだ、白狐の面が。


だれも君の住んでいる場所をしらない。


知っているのは、君のシャツは野草で染められていて、嗅いだことのない甘い鼻腔をつく匂いがすること。


ねぇ、満月が嫌いな話を聞いたときに、狼男みたいだと笑ったの訂正していいかな？


月の名前を調べて気づいた事があるんだ。


毎月、訪れる満月には一つずつ名前があるんだって。


10月はハンターズムーンというんだよ。


夏に肥えたキツネやシカを捕らえるのに適した月だといわれているんだ。

特に満月の日には草陰に隠れにくいから見つかり易いらしいよ。。



満月が近づいてきているよ。

なんだかザワザワするんだ。




また元気に会える日を願っているよ。


そして、月に光る石を一つ握って、そっと迷石の一部につむのでした。