透明少女症候群

塔野とぢる

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透明少女症候群・3

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詳しい因果関係はわからないらしいけれど、その研究結果が世間に知れ渡り騒がれた頃、思春期のーーいまの私と同年齢の少女たちが「徐々に透明になり、消えてしまう」現象が発生したという。

「現在の社会制度は、18歳の誕生日を二次出生として登録しーー」

社会は大混乱。集団誘拐だの、ウイルスだの、神隠しだの、さまざま検証が行われたが、科学的な研究はもうお手上げ状態。そして有力になったのは「恋をすると、少女は消えてしまう」という妄言のような仮説。しかしその仮説は、圧倒的な実例の数により信憑性を増していった。

そのうち、もう少し詳しいことがわかった。「18歳を超えれば、恋をしても消えない」こと。そしてほとんどの事例で「消える」のは18歳の誕生日の直前であること。

「無事18歳を迎えた女性には、手厚い社会制度ーー」

わたしたちには戸籍がない。
異性との出会いはない。学園には女しかいない。
恋愛にかかわる文化は「R18」で、
創作物のキャラクターにすら規制が掛かっている。

男を見たことがないわけじゃない。
でも、迂闊うかつな意思疎通は厳禁だし、
男の側は、最悪の場合、殺人罪に問われるという。
消える少女には、戸籍もないのに。
ただ、幸せだった、だけかもしれないのにね。

「刹那的に楽しむことをもあえて是とし、多様なーー」

学校に通っている女の子は、半分もいないらしい。
刹那的に、最大17年364日の生活を楽しむ。
そんな生き方も、広く認められている。

(だいたい、さ)
(女の子だけで集めたって、恋をしないとも限らないよ)
(恋したら消えちゃう。めちゃくちゃエモくない?)
(恋させたら人殺しになっちゃうなんて、男の方が哀れ)

さて。さっき、鉛筆が掴めなくなったので、
気づかないフリをしていたある予感が、いよいよ確信に変わった。

(みんな気を遣って言わないもんなんだなー)

両親の態度は、いまの時代では珍しいことじゃない。
社会は、乙女が恋に死ぬことを、悲しまなくなった。

(消える前から子作りされるのはちょっとひどいけどなあ)
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