無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

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第二章・アイゼンリウト騒乱編

第22話 おっさん、初依頼を終えて温かな食卓を囲む

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「あら、おかえりなさい」

 町に戻り冒険者ギルドのウェスタンドアを開けると、直ぐにミレーユさんの声が耳に届き安心する。帰ってこれたんだと。
振り返るとゴブリンよりは怖くは無かったが、下手をすれば溶かされたかもしれないスライムと戦っていたと思うと急に身震いがした。

「あらあら、新しいお仲間かしら」
「あ、え、ええ。リムンです。リムン、ミレーユさんにご挨拶を」

「……アタチはリムン……」

「宜しくねリムンちゃん。……コウ、新しく冒険者ギルドに登録しても良いかしら?」
「あ、はい。宜しくお願いします」

 ミレーユさんに依頼の紙を渡し、内容をジッと見た後ミレーユさんは
リムンに優しく声を掛けてくれた。ある程度はお見通しの上で気を遣ってくれ感謝しかない。

「リムンちゃんは凄いわね……他種族に対して抵抗がすば抜けて高いわ。魔力も。キチンと学べばモンスターを従える事も出来るかもしれない」
「これはゴブリンシャーマンとドラフト族のハーフだそうだ」
「これっていうな! へんてこ女!」

「これはこれだ」
「何だのよ!」

「はいはいストーーーップ。同じことを二度もしない。ミレーユさんも困るだろ?」

「ふん!」
「……あい」

 ファニーは腕を組んでそっぽを向き、リムンはしゅんとした。
中々大変ではあるが、引きこもり集団だしこれくらいはコミュニケーションの一つだろう。

「取り敢えずドラフト族のハーフとして登録しておくわね」
「ありがとう」

「後、これは言っておかないとダメだから言うけど」
「依頼の件ですね」

 言われるだろうなと思っていたし組織として不味いからお叱りは当然だろう。俺の責任なので二人が嫌な思いをなるべくしないよう的になるべく俺が言うと、ミレーユさんは真顔で頷く。

「そう。冒険者ギルドは無料奉仕団体ではないわ。報酬を無料にしてしまうと、他の冒険者より無料で依頼を受けてくれる冒険者に、となってしまって問題になる。依頼に問題があった場合、依頼主にペナルティを科さなければ他の冒険者が被害を受ける可能性があるの。冒険者が勝手に依頼内容を変更するのも、仲介している冒険者ギルドの信用にかかわるのよ」
「個人で請け負っている訳じゃないのだからその通りです、申し訳ない」

「解ってくれてありがとう。今回の件はこちらの調査不足もあったようだし、お互い様ってことでペナルティ無しにしましょう」
「こちらこそありがとうございます」
「いいえ、今後無いように気を付けてね。あまりにも度が過ぎると、冒険者ギルドから追放せざるを得ないから」

「肝に銘じておきます」
「我らに二階を提供したのは監視が目的なのだから、ある程度はすませてくれるのだろう?」

 俺とミレーユさんの間に急にファニーが入ってきた。リムンの時から不機嫌全開である。

「そうね。貴方達の力は控えめに見ても異質だわ。ここに居れば、他の冒険者たちから危険視される可能性が低くなる。冒険者ギルド公認という風に捉えてくれるから。これは貴方達にも利益があるのだからお互い様よね」

 その言葉に何か言いたそうなファニーの頭を撫でて落ち着かせる。これは中々効果がある。

「ミレーユさん申し訳ない。俺たち何と言うか、その、あまり上手く交流できないもんで……」
「良いのよ。不器用なだけで悪い人達では無い、というのは会って話して解っているし、ファニーが今とても機嫌が悪いのも解っているから」

「ありがとうございます」

 俺は心の底から感謝した。ミレーユさんの心の広さは、これまで曲者の冒険者を幾人も相手にして来たことで得たのかもしれないと思う。
もし生まれつきなら神様なのかもしれない。そう言えばあの世界で逢った人ってミレーユさんに少し似てる気がする。

ミレーユさんを見ながら考えているとファニーとリムンに両側からベストを強く引っ張られ、後ろに倒れてしまう。何なんだ一体。

「まぁ硬い話は抜きにして、少し早めの夕食にする?」
「そうだねお願いしようかな。ファニー何が食べたい? 何でも好きなものを言って良いぞ。まだこの前のお金もあるし」

「ふ、ふん。我はモノでは釣られん」
「そっかじゃあリムンは……」

「あ! 待て待て。今考えるから」

 そう言うとファニーは腕を組んで考え込む。俺はそれを微笑みながら待つ。恐らくファニーは、リムンばかり気に掛けている俺に対して不満があったのだろう。ファニーを先にして正解だった。少し雰囲気が和らいでいる気がする。

「じゃあ肉を食いたい! 腹いっぱい!」
「じゃあそうしよう。ミレーユさんそれでお願いします」

「解ったわ。とは言ってもファニーの胃袋を全て満たすほど、うちにお肉の在庫が
あるかどうか……」
「よい。昨日の夕飯の二倍くらいあれば、この体には十分だ!」

「それなら助かったわ。コウとリムンは同じメニューで良いかしら」
「リムンは沢山食べるのか?」

「……わからないだのよ。こういう食事したことないだのよ」
「ならおかわりしたくなったら言ってくれ。遠慮するな。まだ蓄えがある!」

「そう多くは無いがな」
「そうだね。明日以降頑張る為に先ずは腹ごしらえだ!」

「うむ!」

 ファニーと笑いあうと、リムンをカウンターの前の椅子に座らせ、ファニーにも椅子を引いて促すと、照れくさそうに前に出て俺はそれに合わせて椅子を押して座らせ自分も隣に座った。そこからは大分賑やかになった。
ファニーは肉にがっつきながら、リムンは最初はおっかなびっくり食事をし始める。
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