無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

文字の大きさ
37 / 75
第二章・アイゼンリウト騒乱編

第34話 冒険者、愛用の剣が目覚める。一方冒険者少女たちは

しおりを挟む
 ビルドの魔剣による連撃を避けていると、黒隕剣の鼓動が強くなってきた。何が起こっているんだ? 何かを求めているのか?

「止まるとは愚かな」

 一瞬動きが止まってしまい、俺の頭上目掛けて魔剣が振り下ろされた。……これは避けられない!

何とか直撃を免れようと黒隕剣を掲げ剣腹に腕を押しあてたその時、意識がブラックアウトする。

                   ・

まさかここで死ぬとは……あまりに唐突、だけど俺の未熟さ故の死だからどうしようもない。リムンには父親を引き摺ってでも連れて行き謝らせて一からやり直させたかった。

……何よりファニーには謝っても謝り切れない。折角俺と共に旅をする為洞窟を出たと言うのに相棒の俺が情けない。

無念と後悔の念を抱いていると急に一筋の光が瞼に映り、目を開けるとそこは真っ暗な空間で俺の体が浮いている。

地に足が付いていない不思議な感覚に驚いていると、光の正体が目の前に寄って来た。それは黒隕剣だった。

    ――我は聖剣に有らず――
 ああ。
    ――我は魔剣に有らず――
 そうだ。
    ――怠惰の眠りより覚めた――
 俺と同じ。
    ――この世でただ一振りの剣――
 俺愛用の剣だ。
    ――持つ者に聖者を求めず――
 有り難い。
    ――持つ者に悪しき者を認めず――
 だろう。
    ――ただ変わりたいと願い――
 うん。
 ――ただ護りたいと願う者と共にありたい――
 行こう。
    ――ならば我も変わろう――
 共に。
    ――我は一振りの――
 最後まで。
    ――汝の剣――

「我に斬れぬもの無し」

 俺が口にすると、黒隕剣は光を放ち剣身を変化させる。鍔から三つ又に分かれその中央はレイピアの様に細く先がダイヤのような形になっていた。その剣身を包むように光が出てロングソードのようになる。光の刃で出来た、黒隕剣の新しい姿。
俺が少しずつ変わってきたように、黒隕剣も俺の手を通して変わりたがっていたのか。持ち主と同じような口下手だが、持ち主より余程気遣いの出来る剣だ。

「ふん。手品の類か。だがそれでお前が有利になった訳ではあるまい」
「いいや終わりだ」

 俺は離れた距離から黒隕剣を薙ぐ。その太刀筋は光の弧を描き、ビルゴに向かって
飛んでいく。ビルゴはそれを剣で叩き落そうと振り下ろしたが、魔剣は砕かれ黒い霧を上げながら粉々になる。

「まだ終わったわけではない」
「見苦しい」

 俺は一言で片づけて黒隕剣を鞘に納める。黒隕剣は形状を鞘に収まる前に光の部分だけを消して納まった。

「貴様ごときに!」

 殴りかかって来たビルゴを避け、拳を腹にねじ込む。この世界に来て得たアドバンテージであり、絶世の美女からのお墨付きの力。ビルゴは腹を抑えながら悶絶する。

「言っただろう? もう終わったんだ。俺の場合、特に力比べでは早々負けはしないのさ」

 ビルゴは地面を叩き、悔しさを露わにした。まぁ普通に俺とビルゴの体格差を考えれば、誰が考えてもこの結末にはならない。ビルゴもそう思って大きく振りかぶり、隙だらけで殴り掛かって来たんだろう。
 
 もっとも、元々斬れないものが無くこの世界のどの剣よりも強いという黒隕剣なのだから、変化前に片付いてるはずだ。しかしそれは黒隕剣の変化したいという気持ちによって、斬れなかっただけだった。

 何にしても命拾いした……。俺は大きく息を吐いてから空を見上げ、ファニーと
リムンを想う。早くこの面倒事を終わらせて、この世界を旅したい。三人でのんびりと。
そう遠くないであろう結末へ向けて、俺はもう一度気合いを入れ直した。

「あれ……」

 立ち上がり皆のところへ行こうとするとふらつきそのまま仰向けに倒れ込み、空を見上げながらまたしても意識が遠のいてく……。

                   ・


「どういう事だ!」
「そうだのよ!」

 その頃、冒険者ギルドのカウンターで、ファニーとリムンは怒りをミレーユにぶつけていた。

「どういう事だも何も、コウは刺客に追われて出て行ったのよ」

 ミレーユは笑顔を浮かべて、そう優しく諭すように言う。あの騒ぎの中でもぐっすり眠っており、目が覚めた時にはギルドも平穏を取り戻していて、少し場違いな空気を物ともせず二人は抗議を続ける。

「何故我らに声を掛けてくれなかったのだ!」
「そうだのよ!」

 ファニーとリムンの怒りは収まらない。置いて行かれた事が納得いかないのだ。

ファニーもリムンもコウが共に旅をしようと誘ったのだから起こっても無理はない。コウ自身も怒られるのは覚悟の上での出発だ。

ミレーユはそれを口にするのは野暮だと思い、当たり障りのない感じで言う。

「急だったから仕方ないわね」

 ミレーユは笑顔を崩さずそう言い、それを聞いたファニーたちはカウンターのテーブルを掌でぺちぺちと叩く。バンバン叩かないのはミレーユには今後もお世話になるし、コウが後で困ると思ってそうした。

「だが我らは仲間だ!」
「そうだのよ! おかしいだのよ!」

「はいはい、ミルクでも飲んで落ち着きなさい」
「落ち着いていられるか! 我らも後を追わねば!」

「うん! そうだのよ! 行くだのよ!」
「待ちなさい」

 ミレーユはミルクを二人に出しつつ制止した。今この二人が行ったところで恐らくまだ何も分かっていない。

相手は国そのものを動かせる存在だと言うのをファニーは理解していない……いや忘れてしまっているんだな、とミレーユは想い軽挙妄動は慎むよう諭すべきだろうと考えた。

「待たん!」
「だのよ!」

「貴女達はここから出る事は出来ない」

 ミレーユは笑顔から急に真顔になりそう言う。ファニーとリムンは動こうとするも体が動かない。もがいてみたものの数十分何も出来ず。

魔法のある世界だからある程度誤魔化しも聞くだろうから良かったとミレーユは思う。

ファニーが冷静であれば気付いたかもしれないが、今なら大丈夫だと言う確信があってミレーユは己の力を行使し二人を止めた。

「気がすんだらミルクを飲んで落ち着きましょう」

 ミレーユはその様子を眺めて暫く経ってから、ミルクを再度勧めて笑顔に戻る。

「お主……何者だ」
「おかしいだのよ。アタチはお母から受け継いだ力があるから、束縛術なんて効かないはずだのよ」

「まぁまぁ。取り合えずミルクを飲みましょう」

 ミレーユは取り合わない。そして何よりそれ以上追及はさせない。コウですら自分の正体を語れていないのだから、語れるはずも無いのだ。

自分は出来る範囲内で力になるしかない存在。そんな自分を笑う様に目を瞑り小さく微笑む。

二人は観念したのか仕方なくミルクを飲みながら確認した。今は腕と口だけが動き、飲む事以外出来ない。

これ以上追及したところで答えないだろうと考え切り替える。ファニーがリムンを見ると頷いた。

ミレーユがどう言う技を使って居るかなんかより、もっと大事な問題があるのだ、と。

「コウを追うにしても、今の貴女達には何もできないわ」
「我が本来の姿になれば!」

「それがダメだから連れて行かなかったのよ。解らないの?」

 ミレーユは少し強めに言う。その言葉に二人はビクリとした。今まで感じた事のない威圧感をミレーユから感じる。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...