無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

文字の大きさ
62 / 75
第二章・アイゼンリウト騒乱編

第59話 冒険者、反撃の狼煙をあげる。その頃城の入り口では

しおりを挟む
 王は苦々しい表情を浮かべながら息を整える。今は王が自分で選んだ通り城の上は曇っていても世界は朝。夜のような回復力は望めない。イーリスもアリスもそれがあるからこそ無理をさせたくなかった。だがこのまま行ければ押しきれるのではないか? 

俺はそう考え確実に倒すべく、アリスに支えられながら目を閉じ深呼吸して短時間により回復するよう集中する。
 
 王の誤算は色々あるだろう。王自身の問題としては慢心が一番大きい。こちらに対する値踏みが甘かったと思う。

俺の誤算としては、思ったほど俺の体力が上がっていなかった。嬉しい誤算はダンディスさんとリードルシュさんの戦果だ。以前の光景が目に焼き付いていて自分で背負い過ぎてしまったが、二人の経歴を考えれば俺に劣る筈は無い。二人が目覚めてくれたお陰でじわりじわりと王には響いていった。

 俺は体力が無いとは言え、力と魔力は一般人よりも僅かに高い。王の太刀筋やクセを見抜く為に完全に受けに徹し、自らの体力を削りながら王を消耗させ魔族へ変身させるまでに至った。
 そして魔族へ変身すれば全てが総合的に上がる代わりに、エネルギーを消費した筈だ。幾ら生贄を吸収したとは言え、無尽蔵では無いからこそ蓄えるべく吸収した訳で。

王はそれに気付いているかどうか解らない。恐らく初めて変身したんじゃないかな。加減も解らずただ大きな力やスピードを使っているように思えたから。

持て余し悪戯に体力を消耗し、ダンディスさんとリードルシュさんの早さによる攪乱と攻撃により更にそれは加速度的になっていった。まさに効果的な戦い方だ。

「クソォ雑魚共め……」

 王はついにダンディスさんとリードルシュさんを見失い始める。確かに一撃喰らえば終わりだが、当たらなければ良いだけの話。二人はそれを可能にしていた。
 だがそんな素晴らしい二人にも限界が近付いている。俺は戦況を冷静に把握しながら自分の体の確認をする。内臓の痛みは取れないものの息は整った。二人から貰った魔力で体は動く。
 
「アリス、イーリス有難う。そろそろ」
「いってらっしゃい!」

「ご武運を」

 二人は俺に肩を貸して立たせるとそう言って送り出してくれた。恐らくこれがラストの攻撃になる。消滅させてしまえば蘇りはしないだろう。切り札を使うタイミングを計る為に、もう少し掻きまわす必要がある。そう決めて黒隕剣を握りしめ、王の前へ進む。

                       ・


「くぉらぁあああ!」

 その頃城の入口では、ビッドとビルゴそしてリムンが骸骨兵や魔族相手に戦い、三人のコンビネーションはなんとか完成していた。今はビッドが奮戦しており、魔族や骸骨兵を粉砕している。

「お父、元気だった?」
「ああ……いや元気では無かったな」

 ビッドからみて親子は少しずつ会話が出来るようになっていた。ぎこちなさは残っているものの。ビルゴはお前が居なかったから元気では無かった、と言いたかっただろう。だが置いて行った自分が、そんな言葉を口にする権利はないと自重しているようだった。

 ビルゴは思う。恐らくあの冒険者の言う通りだろう。自分は死にかけては居たが死んではいなかった。王や魔族の良い様に利用されたにすぎない。それでも妻が蘇ると言われれば、それにすがる他なかった。貧しくとも幸せだったあの頃に戻れると、可能性が少しでもあればと。

 だが現実は当たり前のようにそれを否定した。今ある幸せを、娘を置き去りにするのではなく父親として娘を幸せにしてやる、それこそが大事だと気付かせてくれた。

「アタチならもう大丈夫だから。おっちゃん良い人だのよ」
「そうか」

 ビルゴとしてはそう言われると、少し悲しくなった。置き去りにした父としては当たり前の罰だろうとも思った。リムンの姿をみるとあの冒険者の影がちらつく。その影響で今の娘がある。娘も手助けを経て一人で歩いている。それは父がいなくても大丈夫だと言われた気がして何とも言えない気持ちにまたなる。

 だがそれでも少しくらい取り返したくて、挽回の機会と考え戦いに馳せ参じた。娘を守り通す、そうビルゴは自らに気合を入れ直した。

「では行ってくる」
「いってらっしゃい! お父!」

 明るい声が背中を強く押してくれる。この言葉だけで万騎に値する。例えキリが無くとも、その果てまで潰しつくす。覚悟がビルゴをより強くした。

「ビッド交代だ」
「あ、兄者」

「娘を頼む」

 ビッドからハンマーを貰い、ビルゴは魔族と骸骨兵を駆逐する。その様を見ると一体どちらが悪役なのか分からなくなるほど凄まじい暴れようで、ビッドは唖然としてしまう。

「ビッドのおっちゃん、少し休んでも良いだのよ?」

 ビッドは恐怖からではない、少しずつ心を開いてくれた小さな姪のもじもじした姿と声に、感激した。こんな情けない自分を認めてくれた。許してくれた。少しでも。それだけで涙が出る。

ビッドは振り向かずにいた。涙を見せなくない。だが肩が震えていたのでばれやすい。

「だ、大丈夫だ。それより魔力と体力をしっかりと回復してくれ」
「うん、もう大丈夫だのよ。二人とも無理しないでね」

 ビッドはその言葉だけで十分だった。今までの借りを、罪を償うのにその言葉があれば例え地獄の王ですら叩きつぶして見せる。そう誓えるほどに。

 ビッドとビルゴの連携により、リムンは一度結界を張ったきり出番が無かった。本当はコウの元へ駆け付けたいが、そうもいかない。父と叔父が自分の為に戦ってくれているのが解るから、いつでも二人をフォローできるようにしつつミレーユに渡された本を読む。

まだ使えない魔術も、いつか冒険の旅に出た時に使えるようになりたい。そう、この戦いが終われば、私達は旅に出る。冒険の旅に。

 そうリムンが期待に胸を膨らませながら、本を読んでいると轟音と共に凄まじい爆風が起こる。少し吹き飛ばされたが、影に護られる。父と叔父が護ってくれたのだ。

「何が起こったんだ!?」
「気を付けろ……!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...