無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

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第二章・アイゼンリウト騒乱編

第66話 全ては結末の為に

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「無理もない。お母様が危険を感じて逃がしてくれなければ、僕は生贄になっていた」
「…え!?」

 やはり母親が逃がしたのか、とイーリスは思う。こちらに来て王に聞いた話や養母の話では出産の際最初に一人生まれて少し時間が経ってから双子が出て来たと言う。

その双子の取り上げが大変で、掛かりきりになっている間に先に生まれた一人は死んでいたと聞いた。ただこちらで王に聞いた時に違和感が生まれる。”私の子は男女の双子だ”と言われたからだ。

だとすれば私のところに来たあの子は誰なんだ? あの子と自分が召喚されたのはあの子が王とつながりがあるからだ。何の繋がりもなしに触媒も無く自分たちが呼ばれる筈は無い。

疑念が生まれ暇潰しに調べ始めると、調べても調べても最初に生まれた子の痕跡も双子が両方女の子だった痕跡も無い。

最初の子は荼毘に付され粉になったものからは調べようがなかったし、確かに跡継ぎは男でなければならないだろうがそれを細工した者も分からないとは。

奇妙だとは思いながらも仕事が多く召喚主に対して忠実な振りをしなければならない為、そちらを優先して放置してしまっていたのが悔やまれる、とイーリスは後悔する。

「イーリス、貴女何も話して無いの? 調べた筈なのに」
「……私も死んだと思っていたわ」

 イーリスは不快感を表す様に眉をひそめて答えた。まるで何もかも見透かしたように言うその姿にあの養母の影がチラつく。

「ふーん、凄いねお母様は。魔族の目も欺くなんて」
「イーリス姉さま!?」

「……あれは、貴女と姫の姉よ。生まれたのがほんの少し早かっただけのね」
「どう言う事ですか!?」

「改めて自己紹介するよ。村娘Aことロリーナです。宜しくね」
「ロリーナ!?」

 一同はその怪しさから警戒を解かない。あのアーサーの仲間かもしれないという
疑念をぬぐえないからだ。一応ビルゴが彼女が現れた状況を説明する。門でアグニスと戦っていて死にかけた時に、不意に町からロリーナが現れアグニスを退けたと言う。

アグニスはその存在を訝しみながらも”まぁ良い。今は先を急ぐ。勝てる見込みがあるなら来ると良い”とビルゴに言い残し去って行ったと言う。

一同はその話を聞いても安心はしなかった。それを見てロリーナはやれやれと言った感じで苦笑いしながら肩を竦める。

「確かに警戒されるのも無理無いね。まぁでも今はそれどころじゃないでしょ? リムンちゃん力を貸してね」
「うん、良いだのよお姉ちゃん」

 リムンは笑顔でロリーナと名乗る村娘にしか見えない人物に頷いた。彼女は直感でロリーナが悪い人ではないと思ったからだ。

これまで様々な悪意や憎しみを向けられ殺されかけた彼女は、自分の命を護る為にそう言う人物に対して敏感だった。

コウに対して心を開いたのも、彼が悪意や憎しみそして殺意を持って居なかったからこそだ。コウに出会う前も寂しさのあまり町へ近付いた時もあったが、住民から悪意や憎しみを向けられ石をぶつけられた。

リムンは生きる為、生き残る為にそう言ったものを敏感に感じ取れる。それをしてロリーナはそう言う人物ではないし、どちらかと言えばコウに近い、と言うかコウの匂いを感じたので素直に協力の要請を受け入れた。

「さぁ皆、コウの居る所へ行こうか」
「何故貴女がコウ殿を知っている!?」

「だから言ったじゃない村娘Aだって。僕はコウが来るのをあの村で待っていたんだ。彼が村に現れた時に道端で座り込んでいたから保護したかったけど、なるべく運命を妨げないよう遠くから見守った」

 そして彼に秘伝のレシピを使って作った料理を与えていたと言う。乳母から母の復讐をしたいなら自分を鍛えて待ち、その男が来た時にそうしておけば必ず願いは叶うと教えられて育ったようだ。

コウが現れ去った後、アイゼンリウト城の上にのみ黒雲が掛かった時が復讐の時だとも教えられていたと言う。だからこのタイミングでロリーナが現れたのかとその点に関しては納得を得た。

だがその乳母の読みが素晴らしくて皆は呆れた。イーリスが皮肉交じりにその乳母が国を救えばよかったのにと言うと、ロリーナも同じ思いで聞いたようだ。すると乳母は”私自身は運命には逆らわない”と答えたと聞き、イーリスは直接手を下さない理由を考えようとしたが、馬鹿らしくてやめてしまう。

天使を堕とされた者が偶然この国に来て魔族とのハーフと結婚し、この国の元凶を倒す為の鍵になる娘を生む。更には妙な男が妙な剣を持って現れ元凶を打ち倒す。こんな筋書きを書き実行出来る存在など数えた方が早いからだ。

「で、どうやって何処に行こうと言うの?」
「アーサーがコウを隔離した空間へ。リムンちゃんの結界の技術と、私の力、そしてアリスが居ればアーサーの物語は完全になる」
「それはアイツが強くなるってことじゃないの!?」

「いいや違う。アーサーは忘れてしまっている。自分が焦がれた物語を。そして自分が描いた結末を」
「意味が解らん」

 リードルシュが一同の代弁する一言を放つ。

「あの男が焦がれた物語は異世界へ紛れ込むアリスという主人公の話。ならアリスがそこへ行けるのは道理」
「それで」

「あの男が参考にして作った物語は、別の世界のある国に竜が来てそれを自分を映した主人公がそこへ行って倒し、平和を取り戻し元の世界へ帰るっていうもの。あの男は自分が転生出来た喜びで浮かれ、途中で物語そのものを忘れてしまっている。でも物語は忘れない。あの男が自分の物語だと言うなら世界は修正する為の存在をこの世に送り込んだ」
「お前達が居て何故完成する」

「アリス、姫、そして僕ロリーナの三姉妹が居ないとその空間へ渡る穴を作れないんだよ。コウは意図してアリスを温存してたわけじゃ無いけど」

 一同は静まり返る。突然現れた人物が語る話に困惑しているのだ。

「俺が知る限りは、男と女の双子だったはずだが?」

 リードルシュが疑問をぶつける。

「お母様は出産前に堕天使から元の力を少し取り戻した。何せ生命を誕生させる母という存在は、昔から神秘的な存在とされてきたからね。それで宰相の存在が変だと気付いた。そして男の子の人形に魂を分けてそれらしく仕立て上げ、アリスと僕は乳母に託され村へ逃れていたんだ」

 その後、アグニスに生贄にされるまでに偶然母親が死産してしまった子供を見つけ祝福を与えて蘇らせ、人形と取り換えたとロリーナは言う。

流石に全員を逃がせないと泣く泣くイリア姫のみ残した。だがその姫にありったけの加護を授けた結果、力を取り戻したにも拘らずアグニスの思い通りになってしまったようだ。

アリスはその後乳母によると行方知れずになってしまった、と聞いてイーリスは乳母は今何処に居るかと尋ねると、自分が一人で生きて行けるようになると出て行ったと言う。

 イーリスは一人大きな溜息を吐く。何処まで暗躍しているのかと考えると呆れてものも言えない。そして自分の逆転の目ももう無いと悟り、この上はある程度知る自分が喋るだろうと思っているに違いない養母に対し、黙って魔界に帰るのがささやかな復讐だろうと考え黙った。

「流石元天使と言ったところか」
「そうだね。さぁアリス、姫、中央へ三角形になるように並んで」
「……しょうがないですね」
「釈然としないけど仕方ないわね」

 アリスと姫は王座の前に向かい合うように、離れて立つ。そしてロリーナは王座の正面に立ち手を突き出した。

「リムンちゃん、私達の丁度真ん中に結界を王座を頂点にして三角形に立ててくれる?」
「あい!」

 リムンはたたっと素早く移動すると、結界を素早く三枚三角形になるように展開する。連戦で結界を張るのに慣れたのかスムーズだった。

「オッケー。アリス、姫、手を前へ突き出して」
「はい!」

「フン!」

 アリスと姫は言われた通りにする。今他に取るべき手段が無く従うしかないので素直だった。

「念じて魔力を放出して。他の人たちは穴が開いたら直ぐ飛び込んで」
「良かろう」

「それしか方法はなさそうだしな」
「うっし行くぜ!」

「リムン、俺につかまっていろ」
「お父お願い」

「鬼が出るか蛇が出るか……」

 ダンディス達は様子をジッと窺う。ロリーナとアリス、姫の魔力がリムンの結界に当たるとそれを包みこみ空間を歪ませる。そしてガラスが壊れるような音と同時に黒い渦が現れる。

「さ、行くわよ! お先に!」

 ロリーナは一番にその渦の中へと飛び込んだ。自分が飛びこまなければ誰もこないだろうと考えてそうしたのだ。

「気に食わないわ」

 アリスは文句を言いつつも、勢い良く飛びこむ。

「私達も参りましょう」
「当然!」

「だな」
「あい!」

「ならば行くぞ!」
「おう!」

 全員が渦の中へと飛び込んだ。その先にどんな空間が広がるのか。コウは無事なのか。それぞれが思いを抱き決戦の場へと赴く。

「ここで私一人行かない訳にはいかないわよね。良いわ、最後まで見届けようじゃないの」

 イーリスは皆に後れて飛び込み、渦は消滅した。そして静まり返る王座の間に、黒いローブを着た人物と緑のローブを着て樫の杖を持った人物が現れる。そして渦のあった場所に掌を向け光を放った後、消えて行った。



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