勘違いされるハイエルフ姫

桔梗

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始まり

エンテイ視点

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 涼やかな音を聞き、空を見上げた私は美しい女神を見た。
 
 彼女にはどんな言葉を並べても、その美しさを表現することはできない。私の知っている最上級の言葉も意味はない。ただ、心が全霊で美しいと彼女を称える。

 ハイエルフ族のユナ様

 穢れを知らない白い肌。女性らしさのある腰の曲線美に華奢な肢体。エルフを表す縦長の尖った大きな耳。月の光を紡いだような長髪は風に流れて、星の川を見ているかのよう。その瞳には純白の真珠を思わせる白い瞳が煌めいている。

 薄紅のドレスを纏った彼女が透明の羽根を羽ばたかせ、地上に降り立った時、本当に女神だと思った。ユナ様を御守りするのは私しかいない。その悲し気で儚い彼女を守らなければ。大切に囲って、近い内に私の妻にするのだ。ユナ様に家族を作って差し上げられるのは私しかいない。お慰めできるのも、このエンテイだけなのだ。

 なのに。

「お待ちください!!」

 ああ。彼女がいなくなってしまった。

「王子!」

 煩い奴等だ。そんなに怒鳴らなくても聞こえている。

「ユナ様はご自身の国に帰られたのだろう。南大陸にあるアルテミア国へ。」

 建国して間もないと聞いたユナ様の国。南大陸には恐ろしく強いモンスターと亞人どもが住み着いている。

「ユナ様を南大陸からお連れするには、この中央大陸を制圧しなければなるまいな」

「では、戦争をなさるのですか」

 そうしなければ、恐らく最後の神であるユナ様を得られないだろう。
 周辺諸国も絶対に考えることは同じに違いない。


「各国に先触れの使者を送れ。従うならよし。逆らうなら叩き潰すと伝えろ。この炎馬王国の力、思い知らせてやる。我が父、タケルの力を見せてやろうぞ。」


 待っていてください。必ず、我が国が勝利をつかんでみせます。

 愛するユナ様。

 ユナ。

 永久の愛を君に捧ぐ。
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