双子じゃないけど双子国生まれですっ!

荒行 美緒

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集まる魔力の強さを寒さとして受け取ったフィムの身体がブルリ、と震えた。
ウンディルが作り上げた障壁は守護者の魔力に触れただけで大きく脈打ち、弾け消えてしまいそうに震えていた。
「これって、もしかしてやる気満々かな?」
フィムの問いかけに対し、そうだろうな、とウィーブラは返し、鈍く発光する杖の先を細かく振るう。
「マスター、衝撃に備えろ」
ビアの言葉に足へと力を込めるが、ブワ、と建物の隙間を縫う突風の様に荒れた魔力風にフィムの身体は耐える術なく転び、後ろへと滑った足にバランスは崩れ、顔から倒れ込んだ。赤く擦り剥いた両手と鼻先をエルが治そうと手を伸ばしたが大丈夫、とフィムは現れた守護者から目を反らさずに直ぐ立ち上がる。
グオォォ、と嵐の様な音が魔力の塊から響き、加護を受けている耳は音を言葉として届ける。
「違うよ!」
上半身だけを起こした状態で叫び、起き上がる。膝も擦り剥いており僅かに傷んだがそれよりもウンディルの障壁越しに感じる魔力の方が突き刺さった。
「違うったら!」
否定の言葉を繰り返すフィムの横に立ち、ビアは魔力へと眼を向けた。
「ほう。随分と大きな虎だ」
「見えたのか!」
振り返らずに問いを投げたウィーブラに無論、と返しフィムの肩へと手を置き魔力を流し込む。フィムの目にもビアが捕えた姿へと変わり、渦巻く魔力さえもハッキリとビアの眼は捕えていた。
「守護者様! 僕はあなたと契約をするつもりはありません!」
グォウ、と強さを増した魔力に障壁が一層揺れた。
「本当です。皆と契約してるけど、でも、守護者様は待ってる人がいるんでしょう?」
ゴォォウ、と風が吹き、地へへばり付く様に体を支える。
『フィム!』
エルがフィムの手を掴もうとしたがいつもの様にすり抜けてしまった。それでもフィムの前に立ち、吹き荒れる魔力の風を軽減すべく大きく両手を広げた。
「守護者様! 僕は、ーー!」
フィムは一度、言葉を切った。ぱく、と口が動くだけで音は出ない。
ふ、と周りを見渡す。何もなくともこの風が強風であると、今まで体験したどの台風よりも激しいという事はわかった。薄い、水の膜が激しく揺れている。こんな物、あちらではけして存在しない。
異国の様な建物も、見慣れ始めた外見も、同じ風と水の匂いと食べ慣れた、質素な味と変わりない食事。
いつか、醒めると思い込んだ。
戻れると思い込んだ。
けどーー、とフィムは漸くフィム・ラプティアを受け止めた。戻れない事を受け入れ、しがみついていた私を手放す事を決めた。
「私は、杵鞭夕香。こことは違う世界から来ました。」
フィムの突然の告白に、彼と契約を結んだ糸の様な繋がりが揺れた。
流れ込む決意ーーそう言い切れる程確固ではない覚悟に、彼らはフィムを見た。
「守護者様! 私はもう、元の世界へ帰れない! もう誰にも会えない! でも、守護者様は違うんでしょ? 待つ事が出来るんでしょ? もう一度会いたいって気持ち、わかるから、だから僕は契約なんかしない!」
パシ、と契約が漸く正しくなされた事にまずウィーブラが守護者へと向けた杖を動かした。次にビアが飛ぶと何かが守護者へと飛んだ。
「マスター!」
ウィーブラが叫んだ。ビュッ、と同時に流れて来るのが何かを考えるより先に、口から音が出た。
「トライアの守りて、国の守護者、フェルエルに僕、フィム・ラプティアは誓う!」
守護者の動きを封じる様に巻きつく魔力は鎖の様な形で巻きつき、固定する様に鎖を地へ繋ぐ楔はビアの魔力だった。
「僕、フィム・ラプティアはフェルエルを守る! ずっと、再会出来るまで再会出来る様に協力する!」
グルゥ、と国の守護者は鳴いた。一方的に結ばれた、フィムに不利な口約束はまとわりつく鎖が契約へと変えた。これに了承すればこの子供は契約に縛られる。
『承諾しよう』
守護者が声を出す。魔力を落ち着けると鎖も楔も消え失せる。
『私を使役しない事。それを生涯守れば良い』
「うん!」
任せて! と笑った顔は鼻先と頬に擦り傷を作っていた。傍に寄り添う守護者は力の割に幼く、何で爆発するかわからない危険さを含んでいる。
まぁ、いい。そ、とフェルエルは同胞を見て、消えた。
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