恋愛感情がわからない私がお飾りの皇妃になって幸せになる話

あさひるよる(書くし読む小説好き)

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恋愛感情がわからない私がお飾りの皇妃になって幸せになる話

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わたくし、マリエルが皇妃になったのは、ご友人であり皇妃様でもあるトレシア様の希望があったからです。


トレシア様が病に倒れて半年。
別の妃を迎えるべきだという声も出てきました。
お世継ぎの問題もあるので仕方ないと言えばそうなのですが...まだ婚約者のいない十代前半の娘を近づけようと画策してる者や婚約を破棄してでも皇室にと考えている者がいると知った時は呆れました。


そしてある日、トレシア様のお見舞いに行くと部屋には皇帝陛下がいらっしゃいました。それ自体はよくあることなのですが、この日はお二人から第二皇妃になってくれないかと打診されました。
私はその頃、公爵令息との婚約が解消となって今後について悩んでいたところでした。

私の頭にはたくさんのことがよぎりました。

(年が近くて婚約者がいない高位貴族の令嬢は私しかいない。もし他の方が皇妃になったらこの方の立場が危うくなるかもしれない。陛下が愛していようと。私も一緒に守らせていただきたい。
それにそもそも私は傷物だわ。たとえ私が悪くなくとも世間はそう言うの。家族もね。
トレシア様に気軽に会えると考えればそれは幸せなことだわ。)

答えはすぐに決まりました。

快諾したらトレシア様は寝ながら私の手をぎゅっと握ってブンブンと振り喜んでくださいました。これはトレシア様のうれしい時の癖です。しかし、いつもより弱々しい...。私はここで己の心に誓いました、この病気治すぞと。
続いて陛下にも感謝されたので感謝し返しました。光栄なことです。

 ◇

なぜトレシア様を敬愛しているか、ですか。

ぜひ魅力を聞いてください。

幼い頃からとっても有名だったのですけどね?

国の研究者を圧倒するほどの知識や才能を持っていて伝染病をふせいだり、お小遣いを孤児院や町の病院に寄付したり、困っている人がいたら必ず助けたり...幼いとは思えないほど慈愛に満ちていて行動力があるといい意味で噂されていました。公爵令嬢としてはかなり変わり者だったのですが、悪く言う方はほとんどいませんでした。

実際パーティーでトレシア様とお話しすると私とは正反対で心の底から人間が好きなのだと感じました。

トレシア様は様々なことに熱中して取り組んでいらっしゃったので参加必須の皇室主催のパーティーくらいしか社交はしていなかったのですが、たまに会うだけでもその人格に惹かれていきました。

皇太子殿下に惚れられて求婚されたと聞いて、(殿下、見る目ありますねー!)なんてうれしく思ったりもしました。

私はあの方に話しかける数多い令嬢の一人に過ぎなかったのですがひっそりとファンでした。

学園に入学してからすぐ、トレシア様に話しかけていただき時々一緒にお茶を飲むようになりました。
それから少しして「なにか困ってることない?」と真剣な顔をして言われ、誰にも相談したことはなかったのですがなんだか話してみたくなりました。
もちろん言えないこともあったのですが、とにかく婚約者との関係改善したいことと、家族に冷遇されて辛いことを話しました。私は話しているうちにわんわんと泣いてしまいました。
トレシア様は丁寧に聞いて慰めてくれて、姉ができたような気がしてうれしく感じました。おこがましいかもしれませんが、普通の家族はこんな感じなのかしら?なんて想像もしていました。
そのおかげで私は婚約者やその恋人に悪さをせずに済みました。頭に血が昇りすぎていたと反省しました。

トレシア様は皇太子殿下と一位を争うほど優秀で一つ下の私の学年でもとっても人気がありました。《次はどちらが勝つか》なんて話で盛り上がる方も結構いましてね。私は仲がいいからと羨ましがられて秘訣も聞かれましたが、私自身よくわからず答えられませんでした。家に帰ってそのことを考えていると、他の方の相談に乗って励ましているトレシア様のお姿が思い浮かびました。私も婚約者に悩んでいる同じような立場だからかたまにではありますが同席していたのです。そして、困っている人を放っておけないから私にも優しくしてくださるのだと予想しました。

もっと語りたいけれど...ひとまず素晴らしいってことは伝わったでしょう。

 ◇

それからしばらくして。
トレシア様は卒業後すぐに、代理である叔父から皇帝位を受け継いだ婚約者と正式に結婚して皇妃になりました。皇妃としてのが活躍も評判で、なかなか会えない日々の中ますます尊敬していました。しかし、トレシア様は半年ほどで倒れてしまいました。私はそれから半年ほど、お見舞いに行ってはさらに弱ったトレシア様を見るのは辛くて仕方ありませんでした。

皇妃としての仕事やお世継ぎ問題、周囲のプレッシャーなど悩みは尽きなかったようで、トレシア様に一途な陛下もそれを見かねて第二皇妃の許可くださったということでした。そして陛下がトレシア様に選定を任せた結果、私が選ばれたわけです。

基本お飾りで、お世継ぎは産むかもしれない。そんな感じに解釈しました。

提案されたのは私が学園を卒業し婚約を解消した直後でもあり気を遣ってくださいました。最近ではかなり薄れてはいたのですが、何年か前の印象が強いのか、私が元婚約者が好きすぎて執着しているのは有名でしたから...。

私はお二人の心が少しでも軽くなればと思い、【恋愛感情が持てないこと】を告白しました。
トレシア様は、てっきり婚約者が好きだと思っていたようで、相談聞いてたのに気づかなかったのを何やら反省しているようでした。現在は法で禁止されてるものの、人と少しでも違うと《人間に化けた魔物だ》などと言われて狩られた歴史もあるため偏見が怖かったと素直に伝えました。(トレシア様を疑っていたわけではないのですが、恋愛感情がなく独り身というだけで怪しまれ殺された男性の記録を見つけた時は震え上がり、それ以降以前にも増して必死に隠してきたのです。もう150年ほど前のことで当時の価値観はかなり薄れていますがね...)

すると、トレシア様は言いました。

「恋愛感情がない人だっているはずよ。だって私達、人間だもの。みんな一緒だなんてことないわ。私、恋愛脳だから勘違いしてしまったけれど、あなたがおかしいなんてことは絶対にない。人それぞれってやつね。そもそも差別禁止法があるのに悪いこと言う人がいたらそれは相手が間違っているのだわ。」 その横で陛下もうんうんと、大きく頷いていました。

トレシア様だけを愛したいから好都合ではあるが、決して冷遇しないとおっしゃった陛下は素直で、トレシア様の夫なだけあって似ているような気がしました。


陛下が部屋を出た後、「何か話してほしいな」と言われ、思ってることをポツポツと話すことにしました。

トレシア様が病気になって悲しいこと。病気を治すために力を尽くしたいこと。
幼い頃から両親や歳の離れた兄、その妻に虐げられてきたこと。ずっと家族愛を渇望してたこと。トレシア様を姉のように慕っていること。
婚約者に執着したり、その恋人に嫉妬したのは相手の穏やかな家族に憧れその一員になりたかったからであること。

話終わると、トレシア様は「まず、あなたが力になってくれるなんて頼もしいわ。常に努力していてすごいと思ってたのよ。それから、家族のこと、大変だったわね。前に聞いた時も言ったようにあなたのこと、私は大好きだわ。だから姉だと言ってくれてうれしいし、私もあなたのことを妹のように可愛いと思ってるわ」と言いました。
私がうれしくて涙を浮かべていると、「そうだわ、家族出禁にする?」とふわっとした笑顔でさらっと言われ、お願いしました。

初めは少しだけ、何かが心に引っ掛かっていました。
本当に少しだけだったのですが、トレシア様にはすぐにバレてしまいました。
そしてトレシア様はまた素敵なお言葉をくださいました。
「別に少しも負担に思わなくていいのよ?こういう時こそ権力の使いどころじゃない。マリエルは皇妃で陛下の妻よ。もちろん、権力は濫用してはならないものだけれどこれくらい気にしなくていいわ。もし気にかかるなら私のためだと思ってちょうだい。マリエルにはいつも笑っていてほしいもの!」
私はそこで吹っ切れました。
段々と少なくなってきていたモヤが完全になくなり、心が晴れていくのを感じました。


父は要職についてないので皇宮に来れなくても仕事に支障はないでしょうし、もしもの場合は家臣が来ることになるようです。
私の目に触れなければ大きな復讐をするつもりはありません。
しかし、権力目当てに来られたり、罵倒されたりしたくはありません。当然もう会うこともないでしょうがもしもの場合に備えて護衛には大まかな事情を伝えてあります。
皇室が主催するパーティーも出禁なので、実質社交会締め出しでしょうね。誰だって皇室に目をつけられた人には近づきません。
プライドが高い彼らは憤慨するでしょうが、貴族ですから領地さえまともに経営すれば贅沢な生活はできます。有能ではないものの無能でもないので充分可能でしょう。幼い頃の私のように、狭く暗いところに閉じ込められることもないのです。
時間の無駄なのでそれ以上の復讐をする予定はありません。

 ◇

それから一年後。
トレシア様の不調は病気ではなく呪いのことがわかりました。トレシア様は以前から疑っていたそうで、陛下からその情報を聞いた私は陛下と共に徹底的に調査しました。すると、トレシア様が倒れた後に娘を差し出そうとしていた者の一部が協力して呪いをかけていたことがわかりました。
彼らを疑ってはいたのですがなかなか証拠を掴むことができずに苦労しました。しかし、私や陛下、影、トレシア様ファンクラブの一部、全員が全力を出しました。陛下は身内も疑わなければならなかったので少し辛かったようです。「皇帝はこういうものだから覚悟はしていた」とは言っていましたが...。

首謀者である貴族達は[皇妃に呪いをかけた]と公表された後に公開処刑されました。また、協力していたその他の者達にも処罰が下されました。

それから三月みつきの休みを経てトレシア様は皇后陛下になり、それから約一年後には無事双子を出産しました。両陛下の「シルヴァン」「トレシア」からとり、第一皇子様は「トレヴァン」、第一皇女様は「シルシア」と名付けられました。
その妊娠中私は執務を手伝いつつ、またベットに逆戻りしてしまったトレシア様のお話し相手も務めました。
生まれてからはトレヴァンとシルシアの子育てに参加してみました。
時に、トレシア様と陛下と三人でお茶を飲みながら政策について話しつつ、途中子供の話をしたり雑談をしたりもしました。

お二人は私を本当に大切に思ってくださっているようです。それからトレヴァンとシルシアには「マリエルしゃま」と呼ばれいます。とってもかわいいです。
料理もスイーツもとってもおいしいです。
たまに皇宮でトレシア様とお揃いや色違いのドレスを着ているのですよ。《双子こおで》と言うらしいです。トレヴァンとシルシアが色違いの服を着ているのをみて、トレシア様が「私達もしましょ!」と言い出した時にはびっくりしましたがなんだか楽しいです。
私はトレシア様と陛下に加え、トレヴァンとシルシアにも親愛と信頼の籠った瞳で見られます。それが幸せで仕方ないのです。

お飾りの皇妃だと揶揄される方も極たまにいますがそれがどうしたというのでしょうか。お二人のように情熱的に愛すことも愛されることもないのかもしれませんが、私は確かにじんわりと温かい愛で満たされているのです。



【sideトレシア マリエルが知らない裏事情】

私には前世の記憶がある。
思い出したのは学園に入って一年が過ぎ、次の学年が入ってくる十日前。
特別何かあったわけじゃないと思う。
長期休み中で孤児院に訪問して遊んだ帰りに馬車で居眠りしてハッと起きたら思い出した。

妙に大人顔負けの知識があったのも納得した。私は前世で十六年生きていたし、この世界と比べものにならないほどの教育水準だったから。

思い出せてすっきりしたが問題は他にある。
前世の記憶と共に、ここが乙女ゲームの世界であることも気付いてしまった。
ついでに言うと私は難易度最高峰の悪役令嬢だ。しかし前世の人格の影響があったのか、悪いことはしておらず評判はよかった。すっごく安心したのだけれど、今度は他の悪役令嬢達が心配になってしまった。

「悪役令嬢「達」ってなんだ?」って思うかもしれないけど、そのゲームには合計十人の悪役令嬢が登場する。
ゲームのタイトルは【ヒロインと10人の悪役令嬢~心優しきヒロインは逆境を乗り越える~】
ヒロインが十人の人気の高い令息達に愛されるゲームだ。
十人の悪役令嬢達はそれぞれ攻略対象達の婚約者だ。

ちょうど読書にも映画にも飽きて病気より先に暇で死にそうなくらい病んでた時に同じ病室の子に勧めてもらった。
私はうーん、ヒロインほんとに心優しい?そうでもなくないか?だってみんな婚約者いるじゃん?と思いつつも、ヒロインも悪役令嬢も攻略対象もビジュと声がいいので結局はハマっていた。特に誰が推しとか、好きな声優が~とかでもなく、みんななんか好き、みたいなゆる~い感じだったから勧めてくれた子の熱意には勝てなかったけどこれのおかげでかなり楽しめた。死ぬ直前までやってた記憶。

思い出してからは奔走した。
でも攻略対象達は既にヒロインに魅了されていた。もう一年早ければよかったのにと何度も後悔したわ。まだ学園に来ていない人達(年齢違い)はどうにかなるけど、この人達はどうしようか悩んだの。

さすがに皇太子の婚約者が攻略対象達に近づくわけにはいかず、まずはその婚約者達に話しかけることにした。
みんな意外にもすんなり受け入れてくれた。
弱みってなかなか話せないからとありがたがられた。
その後、攻略対象とその婚約者、私、の三人で話し合いをしたりもした。

結果、仲を戻したり、またうまくいかずとも悪事に手を染めずにそこそこ円満に婚約解消していった。彼女たちをみてほっと胸を撫で下ろしたわ。熱烈なファンになられたのは少しびっくりしたけれど。彼女たち割と闇堕ちしてたからキラキラした目で見られたらそりゃうれしかったわ。

しかし、マリエルは少し難しかった。
当然といえば当然ね。
攻略二番目に難しいキャラの婚約者だもの。
なぜ難しいかって、悪役令嬢(婚約者)がより悪どいから、邪魔されまくってうまくいかないって設定だった。
(ちなみに一番は私なんだけど、前世持ちだから省く。)
でも、マリエルは私のアドバイスには納得してくれたようだった。
子犬みたいに懐いて、「マリエルって呼び捨てしてください!」なんて言われて可愛くて仕方なかった。大切な存在だからこそ厳しく注意しているところを見るとハラハラした。でも犯罪は絶対にしなかったし、注意くらいならむしろ婚約者として必要だろうと見守っていた。
乙女ゲームの強制力とかも少し頭によぎったりして、いざとなったら私が証言しようとか色々考えつつ、介入しすぎるのはなるべく控えた。

結果、婚約は破棄ではなく解消になった。
向こう側からの願い出。何年も縛り続け、既に適齢期。不貞。
これらが重なりしっかりと慰謝料ももらえたと言っていた。
婚約者のこと、恋愛的な意味で好きなのかと思ってたけどスッキリした顔で解消のことを報告してきたの。その後に家族愛に飢えていただけだと知って、あ~!って納得したわ。

マリエルを皇妃にしたのはあの家族から守りたかったのもあるし、単純に彼女の能力を評価したのもある。(実はたくさん会いたかったというのもある。卒業後なかなか会えなかったから。)

マリエルは私の呪いを解くのに奔走してくれた。私が起き上がるのを見て号泣してくれた。もちろん陛下も。それから知らせを受けて登城したご友人の皆様も。

私は前はみんなのことをキャラクターとして見てしまうこともあった。悪役令嬢阻止にはなるべく設定を思い出すことが必要だった。しかし、もう学園も卒業してゲームからも外れた。
やっぱりみんなは生きてるのだ。温かい気持ちで胸がいっぱいになった。

 ◇

前世や乙女ゲームのことは誰かに言う予定はない。
しかし、前世の知識を使って国を発展させられるといいな、と思う。

【追記】8.27(また気分でたまに追加するかも)

[呪いが解けたが大事をとって三月の休みを終えたあと(sideトレシア)]

さて、ひとまずはマリエルと陛下にたっぷり恩返しをしたいわ。  
休みの間、二人には随分気にかけてもらって甘やかしてもらった。

けれど二人は私がいつも通りいてくれるのが一番嬉しいんだって言うから、少し考えた後、料理長が作った私のお気に入りのお菓子をつまみつつ政務に取り組むことにした。

二人には、私が倒れてから長い間私の穴を埋めてもらっていたから、なるべく早く完全に復帰しなければと言う気持ちもあってやる気が燃えたわ。

それだけではなくて、前世は成人まで生きられないと薄々わかっていたから働くことなんて考えなかったけど、私本当はバリバリ働くのが好きみたいなの。

私と、陛下とマリエル、それから信頼している臣下全員でこの国をもっと素敵にするのって息巻いたりもしてね。
私にはそれだけの力がある。
身分も、知識も、影響力も、使える費用も。
自己肯定感がやや低かった前世では絶対言わなかった自意識過剰のようなセリフだけれど、それに見合う努力をしてきたわ。
生まれてきた時からずっと、この身分に釣り合うように、この国を引っ張るために。

前世があるからこそ危機回避できて今幸せだけれど、私自身も変化していて全然違う人生を歩んでいるんだと少し感慨深いわね。



少し、政務に熱中しすぎたようで、侍女に休むよう進められたわ。
本当はそのまま続けたかったけれど、確かにもう午前が過ぎていた。

「昼食は部屋に運ばせましょうか?」

「いいえ、下で食べるわ」

少し歩きたい気分になり、下にある皆で食事するところに行くことにした。

下といっても、皇宮は広く15分はかかるから程よい運動になるのよ。

歩いていると、そういえばマリエルも食事がまだなのではないかと思って部屋に寄ることにした。

私が言えることではないが、マリエルも熱中すると時を忘れがちだ。

ちなみに陛下は視察中なので皇宮にはいない。

部屋の前の使用人に訪問を告げてもらう。

「皇妃殿下、皇后陛下がいらっしゃりました」

「まあ、トレシア様が?通してちょうだい」

許可が出て中に入ると、椅子から立ち上がったマリエルがこちらに小走りで向かってくる。

「トレシア様、いかがなさいましたか?」
マリエルは子犬のような純粋な目で私を見た。

「ふふ、あなたったら、本当にかわいいわ」
そう言うと、マリエルは面食らったような顔をした後、ふわっと笑って言った。

「トレシア様はいつも嬉しいお言葉をかけてくださいますね」

「本音よ。ああ、それでね、お昼まだだったら共に食べたいと思って声をかけにきたのよ」

「そういえばまだでしたわ。是非ご一緒したいです。私ったら、ついつい一気にやりたくなってしまって・・」

「いつもありがとう。皇后になってからやることが増えているけれど、マリエルのおかげで助かってるわ」
私への呪いのせいで国全体が動揺して、さらに貴族たちの粛清もあって空気が良くなかった。
話し合いを重ね、皇妃が回復したと言う知らせだけでは不十分だと考えた結果、私が皇后になるという報告で民の動揺を収めつつ明るい雰囲気に変えていくことになったのだ。
(私が早すぎると懸念していただけで、元々陛下が皇后の冠を被せたがっていたのもあるのだが。)

「ふふ、トレシア様のお役に立てて嬉しいです。私もなんだかやり甲斐を感じていて楽しいのです。
前は怒られないようにって考えて頭が支配されていましたが、ここにいると皆が優しくて前向きにがんばれています」

「そう、よかったわ。はっ、そうだわ、そろそろ下に向かいましょうか」

「そうですね、続きは歩きながらにしましょう」

私達はそのまま向かった。
食事は今ごろ私達が好きなものが用意されているだろう。
いつでもある程度は準備はされているものの、先程話している間にハンドサインで頼んでおいたから完璧だわ。
一つの仕草だけで持っている情報を組み合わせてこちらの望み通りになるのたまから・・まるで一を聞いて十を知る・・ね。

そんなことを考えつつも、マリエルとお話をしているとあっという間に城内食堂に着いたわ。

そこで私は日本食に近い東洋の料理を、マリエルは色とりどりのサラダとステーキを堪能した。
そうして、二人でスイーツも食べた。
おいしすぎていつも感動するのよね。

その後はマリエルと、衛生に関する政策への意見を交換したりもした。

流行病など一刻を争う事態でない限り、大臣に承認され予算を割り当てられる過程が必要なため、すぐに実現できるわけではないが少しずつ細かいところを詰めているところだ。


 ◇


ゲームでは全くと言っていいほど描かれなかった私の日常がここにある。
そう考えると、この日々を守りたいと改めて強く思った。

これからもゲームのことを忘れることはないだろうし、違いを見つけると考えてしまうかもしれない。
比べているようで少し嫌だって思っていた時もあるけれど、考えたっていいと思うの。
前世も大切な思い出で、その記憶のおかげで今もあるのだからね。

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