ホーボー・ホーボー魔導具を巡る冒険

アトアン・グリューゼン

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花弁の蜜

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「……魔道は蛇の道、毒を喰らい地を蛇行し知の大海へ至らん、エキドナの抱擁」

 魔女エシャールが闇の中で詠唱する。地面から無数の金色の蛇が現れ、二人のオークの女の身体に絡みつく。

「あたし達はまだ戦え……」

「無駄よ無駄、もう勝ち目がなしでしょ……貴女達の綺麗な身体、壊れる前に有効利用させてもらうわ」

 魔女エシャールが放った金色の蛇がオークの女の身体を締め上げる。女の握力が失われ握られた鉈が地面に落ちる。蛇が魔力をため込み膨らんだ胸に食らいつく。

「うっ、離れ……魔力が吸い取られていく……身体が動か……」

 金のブレスレットの魔力が女の身体の自由を奪い、金色の蛇の鱗模様が二人の女の全身に刻みつけられる。

「あなたたち、邪魔しちゃだめよ……」

「なんだ!?」

 魔女エシャールが放った無数の蛇がアンリ達にも襲いかかる。ルーネは魔力を辿り術式を発動させた者がいるらしき方向へ牽制の為にダートを投擲する。アンリは無数の蛇を氷の短刀で切り払いながら、倒れているヴィルジニーを回収し後退する。

「離せ!……わたしは……こんな……嫌!」

 金色の蛇によって魔獣使いの女の身体が魔女が居る闇の方へ引きずられていく。

「……さあ、いただきましょうか」

 緑の魔女エシャールが坑道の奥から姿を現した。

「初めて会う方もいらっしゃるようね」

「ルークスジャベリン!」

 ハイディが光術と魔法銃の火球を放つが魔女の結界を破ることは出来なかった。

「……わたくしは緑の魔女エシャール……アムブロシアの魔女の高弟が一人」

 ……地面から出現した巨大な白い花が二人のオークの女を包み込んでいく。

「貴女の目的は何?ここで何をしてるの?」

 アルラウネの騎士レダが槍を向けながら魔女に問いかける。

「……我らの師、復活の為の準備……筈だったんだけど、少し予定が変わったの、ウルスラが面白いおもちゃを見つけたみたいだしね」

「魔剣の疾走!」

 ルーネが金色の蛇をポールアックスで捌きながら巨大な白い花を淵術で攻撃する。

「くっ!硬くてびくともしない!」

「無駄よ、その程度の攻撃ではね」

 巨大な白い花が妖しく蠢き、花弁の蜜の中で蛇に絡めとられた二人のオークの女の身体が絡み合う。

「貴女達、綺麗だったから手駒にして可愛がってあげようと思ったんだけど……」

 魔女エシャールが纏った美しい黒いドレスがはじけ飛び、魔力に変換される。魔力に包まれたエシャールの細身の裸体が発光する。

「見せてあげるわ……」

 魔女は巨大な花の上に飛び乗る。

「わたくしの本気に耐えられるかしら?」

 魔女エシャールが巨大な花弁の蜜の中に飛び込んだ。
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