11 / 93
第2章 スキル覚醒
第11話「勇者は進路を考えます」
しおりを挟む
この楽しい旅のイカれたメンバーを紹介するぜ!
「ベル、足は疲れていませんか?」
“主人公“のグレン・アルナイル!
いずれチートスキルに目覚める予定の、細マッチョ&イケメン&イケボ&高身長の好青年!
だが隙あらば人をお姫様抱っこしたがる変人だ!
「疲れてない……あと手離せ」
そして“無能勇者“のベルンハルト・ミルザム!
勇者を辞める予定なのでそうなるとただの無能!
お姫様抱っこから解放された代わりに何故かずっと手を繋がれてるぜ!!
……以上だ。
というか異常なんだけど……。
計画通り、オレとグレンは森を通って王都に向かっている。
なのに――歩いても歩いても、出会いイベントが発生しない……っ!
どうしよ~~!!
グレンが隣にいる以上、アイリちゃんがオレに惚れる可能性は無……低いけど……でも、せめて会いたい!!!
それでアプローチしたらサ……ほら、ネ?
作者サンの魅力でアイリチャンもイチコロ(笑)
ナンチャッテ(笑)
……メンバー紹介したりエセおじさん構文やってる場合じゃないよ、オレ。思い出そうね~。
えーっと……グレンとアイリちゃんが会うのは確か夜にさしかかる頃。
暗闇の中でモンスターに襲われてるアイリちゃんをグレンが助け、二人は一夜を(健全に)森の中の洞窟で過ごし小さな愛のつぼみを育む……という非常にベタ……いや様式美的な出会いだ。
――え、これってさ。もし仮にここでアイリちゃんと会えた場合、オレはどうすりゃいいの……??
「ベル? どうしました」
横目で見上げると、グレンは子猫でも見つめるような甘い視線をオレに送っている。
アイリちゃんと会ったら……バグってるこいつも正常に戻るだろう。
そうなったら、お邪魔虫はオレの方だ。
「いや……日が落ちてきたと、思って」
ごまかしついでに繋がれた手を振り払おうとしたが、逆に更に強く握られた。なんだこいつ……。
「そうですね。あ――向こうに洞窟がありますよ。少し早いですが、今日はあそこで休みましょうか」
グレンが指し示す先には、確かに小さな洞窟がある。
……ん? あの洞窟って……もしかしなくても、アイリちゃんイベ用のやつじゃ……???
「あ、ああ……」
え、イベント見逃した???
(セルフ)追放した後、寝たり……なんやかんやしてたから? アイリちゃんイベそんな時間シビアなんだ……レアキャラ?
◇
辿り着いた洞窟は小さく、スペース的には一人なら小さく丸まれば横たわることができるかな、という程度。男二人では無理がある。
そうそう……だからグレンは座ったまま、アイリちゃんを抱きかかえる感じの体勢で過ごすんだよなぁ。
密着して、お互いの鼓動が聞こえる距離で……話しかける度に目と目が合ってときめいて、でもそれを隠して会話する。
うん。非常に甘酸っぱく良いシーン(自画自賛)だ。
……これ、このままだとオレとグレンでそのシーンやることになる流れじゃないか……?
だってこの場にいるのはオレたちだけだし。
アイリちゃんいないし。
「グレン。オレ、あっちの茂みで寝るから……お前がここで寝ろ」
寒いけど仕方ない。グレンの腕に抱かれたまま一晩過ごすよりマシだ。
そう思い、岩の裏の茂みに向かおうとしたが――当然、止められた。うん、わかってました。
「だめです。貴方があんなところで寝たら……最悪の場合、凍死しますよ」
でしょうね~!
引き寄せられ、後ろからぎゅうぎゅう抱きしめられる。
「じゃあどうすんだ」
「ベルを」
「お前が抱きかかえて寝るって? お断りだ」
「……貴方をここで寝かせて、俺は外で見張りをしてるつもりだったんです。俺なら一晩ぐらい寝なくても平気ですし」
……またオレ何かやっちゃいました?
「でも……いいですね、それ……貴方を腕の中に閉じ込めて眠りにつけるなんて……夢みたいです」
ああ……グレンの中で決定事項になっちゃってるよ……。あと閉じ込めるって言い方怖いからね? 気をつけて??
◇◇◇
携帯食と水だけの簡単な夕食を終え、狭い穴の中に二人。
体格の都合上(オレはもうちょっと肩幅とかあったと思うけど、ベルンハルトはオレよりも細いのがなんか嫌。)当然のようにオレが抱きかかえられる側なわけだが……。
背中にはずっとグレンの体温があって……『物語』どおり、鼓動が聞こえてきそうだ。
ひぃ…………相手が男ってわかってても無理!!!
こんな経験ないんだもん……。前世でも母親にしか抱きしめられたことないし!!!
落ち着くんだ……『素数』を数えて落ち着くんだ……。
「ベル、寒くありませんか」
「……大丈夫」
よーし落ち着いた。落ち着いたぞ~。
ちなみに、グレンが魔法で保温的なものをしてくれてるので、洞窟内は広さ以外は案外快適だ。
……あれ?? その魔法あったらオレ、外で寝ても死ななかったよね?
こいつ本当にオレが言うまでは一人で寝かせてくれる気あったのか……? 疑わしくなってきたな。
◇◇◇
「なぁ……グレン。お前、この旅が終わったらどうする気だ」
保温魔法と人肌とで心地よくまどろみながら問いかける。
胸板に頭を預けて、手慰みにグレンの耳元で揺れるピアスを弾いた。
――グレンは、ずっとオレの傍にいると言ったが……きっとそれは、今だけの約束だ。
設定が変わって、『物語』が少しズレてはきているが――グレンは、近いうちに【皇帝】のスキルを覚醒させる。
何故だかわからないが、オレにはその確信があった。
そして、彼が皇帝になった後は……もう、今日みたいにオレの手を引いて歩くことはないだろう。
「どう、とは?」
「冒険者続けるのか?……お前なら、“元勇者パーティーのメンバー“なんて肩書きなしでも引く手数多だろ」
対して、オレはどうだろう。
このまま勇者を辞めれば、“無能勇者“になって死ぬ運命は避けられるかもしれない。
でも、その先は?
ベルンハルトの人生は本来、十八年で終わる。その後のことは作者にだってわからない。
あ~~!!!
こんなことなら「悪い勇者も改心して主人公に謝罪して、その後は平凡な冒険者として主人公を尊敬しながら暮らしましたとさ」チャンチャンッ♪
……みたいな設定にしとけばよかった。
ベルンハルトにももう少し温情を、と引いてた叔父さんの助言は正しい。
いつどこで誰に転生するかわからないんだから、悪役にだってハッピーエンドへの道は残しておくべきだったんだ。
「……ベルンハルトさん。貴方は、どうするつもりなんですか?」
「オレは……勇者の称号も失ったら、多分冒険者として生きていくのは難しいし……家に戻っても、もう後継者じゃないから……どこかの家の令嬢と政略結婚でもすることになるんじゃないか」
はぁ……。
転生前のオレは、もう大学も決まって(体育以外の成績は優秀だったから推薦入学で余裕だった)進路のことは深く考えずにすむターンに入ってたのに……。
なんで異世界転生してからの方が進路に悩まないといけないんだ……。
ベルンハルト~~お前さぁ……!
「後継者から外すね!」って父親に言われたからって、「はいそうですか」ってあっさり納得してんじゃねぇよ!!!
自分と彼とは今や同一の存在なのだから、こんな恨み言に意味はない。
それに、父親の言葉に逆らわなかった彼の気持ちは理解できる。――そういう設定(後継者から外される事に納得している)にしたのはオレだから当然なんだけど。
ベルンハルトの父、ブルーノ・ミルザム伯爵。ミルザム伯爵領を治める領主である彼は、ベルンハルト以上に傲慢で嫌な男なのだ。
オレの“父親“という生き物に対する偏見を煮詰めて固めたみたいな存在だ。
――オレの父親は、母を妊娠させた後、病弱な彼女を捨てて失踪した。
その結果オレは母の親族から忌み子として扱われていたのだ。
まあ、別にそれはいい。
お母さんが「蓮のこと悪く言う奴らとこれ以上関わる気ないし」と、オレのために叔父さん以外との縁を切ってくれたので、そこにはこだわってない。
ただ。オレにとって“父親“というものはずっと――無責任で、怖くて……そういう嫌悪の対象であり続けた。
例によって作者の知らないことは描写できないので、『追放皇帝』には子への愛情に溢れた素晴らしい父親なんぞは登場しない。
グレンの父も、ベルンハルトの父とは違う方向性の無関心系クズだ。
ともかく――。
ベルンハルトは、父という存在との対話を諦めていたので、彼の言葉に一切の反論なく従った。
家を出れてラッキーぐらいに思ってたはずだ(そこまでは細かく書いてないけど多分)。
「……いいんですか、それで」
眠い中、思考をぐるぐる回してたせいで一瞬なにを訊かれてるのかわからなかった。
ん? ああ、政略結婚の話か。
「うーん……まあ、相手によるかな……」
アイリちゃんほど完璧な女の子じゃないにしても……ああ、そうだ。
「エステル、とかなら……」
四話で登場する第二ヒロイン、エステル・シャウラ。彼女との結婚ならオレの方は大歓迎だ。
エステルはベルンハルトの従兄妹。
彼女の双子の弟、ロニーはベルンハルトの代わりに後継者になるべくミルザム家の養子になった。
……ブルーノが、もうじき昔、グレンとベルンハルトの交わした〈契約〉の影響で死ぬはずだから、もう実質ロニーが当主と言っても過言ではないな。
「エステル、って……エステル・シャウラ? 貴方のいとこですよね」
「うん」
グレンと結ばれるのはアイリちゃんだから、エステルは負けヒロインなんだけど……可愛いんだよねぇ……。
年齢は一つ下の十七歳で、アイリちゃんよりも更に小柄な妹系。
彼女はどちらかといえば故郷を助けてくれたグレンを慕って旅に同行する感じだから、負けヒロインと呼ぶには語弊があるか。
――なんか今、変な感じしたな。
えー……うーん……エステルとの出会いは……。
ベルンハルトの死を知ったグレンがミルザム領に行って……ロニーとエステルと会って……で、モンスターが襲ってきて……。
「……あ」
オレの故郷、モンスターに襲われるんだったわ。
「ベル、足は疲れていませんか?」
“主人公“のグレン・アルナイル!
いずれチートスキルに目覚める予定の、細マッチョ&イケメン&イケボ&高身長の好青年!
だが隙あらば人をお姫様抱っこしたがる変人だ!
「疲れてない……あと手離せ」
そして“無能勇者“のベルンハルト・ミルザム!
勇者を辞める予定なのでそうなるとただの無能!
お姫様抱っこから解放された代わりに何故かずっと手を繋がれてるぜ!!
……以上だ。
というか異常なんだけど……。
計画通り、オレとグレンは森を通って王都に向かっている。
なのに――歩いても歩いても、出会いイベントが発生しない……っ!
どうしよ~~!!
グレンが隣にいる以上、アイリちゃんがオレに惚れる可能性は無……低いけど……でも、せめて会いたい!!!
それでアプローチしたらサ……ほら、ネ?
作者サンの魅力でアイリチャンもイチコロ(笑)
ナンチャッテ(笑)
……メンバー紹介したりエセおじさん構文やってる場合じゃないよ、オレ。思い出そうね~。
えーっと……グレンとアイリちゃんが会うのは確か夜にさしかかる頃。
暗闇の中でモンスターに襲われてるアイリちゃんをグレンが助け、二人は一夜を(健全に)森の中の洞窟で過ごし小さな愛のつぼみを育む……という非常にベタ……いや様式美的な出会いだ。
――え、これってさ。もし仮にここでアイリちゃんと会えた場合、オレはどうすりゃいいの……??
「ベル? どうしました」
横目で見上げると、グレンは子猫でも見つめるような甘い視線をオレに送っている。
アイリちゃんと会ったら……バグってるこいつも正常に戻るだろう。
そうなったら、お邪魔虫はオレの方だ。
「いや……日が落ちてきたと、思って」
ごまかしついでに繋がれた手を振り払おうとしたが、逆に更に強く握られた。なんだこいつ……。
「そうですね。あ――向こうに洞窟がありますよ。少し早いですが、今日はあそこで休みましょうか」
グレンが指し示す先には、確かに小さな洞窟がある。
……ん? あの洞窟って……もしかしなくても、アイリちゃんイベ用のやつじゃ……???
「あ、ああ……」
え、イベント見逃した???
(セルフ)追放した後、寝たり……なんやかんやしてたから? アイリちゃんイベそんな時間シビアなんだ……レアキャラ?
◇
辿り着いた洞窟は小さく、スペース的には一人なら小さく丸まれば横たわることができるかな、という程度。男二人では無理がある。
そうそう……だからグレンは座ったまま、アイリちゃんを抱きかかえる感じの体勢で過ごすんだよなぁ。
密着して、お互いの鼓動が聞こえる距離で……話しかける度に目と目が合ってときめいて、でもそれを隠して会話する。
うん。非常に甘酸っぱく良いシーン(自画自賛)だ。
……これ、このままだとオレとグレンでそのシーンやることになる流れじゃないか……?
だってこの場にいるのはオレたちだけだし。
アイリちゃんいないし。
「グレン。オレ、あっちの茂みで寝るから……お前がここで寝ろ」
寒いけど仕方ない。グレンの腕に抱かれたまま一晩過ごすよりマシだ。
そう思い、岩の裏の茂みに向かおうとしたが――当然、止められた。うん、わかってました。
「だめです。貴方があんなところで寝たら……最悪の場合、凍死しますよ」
でしょうね~!
引き寄せられ、後ろからぎゅうぎゅう抱きしめられる。
「じゃあどうすんだ」
「ベルを」
「お前が抱きかかえて寝るって? お断りだ」
「……貴方をここで寝かせて、俺は外で見張りをしてるつもりだったんです。俺なら一晩ぐらい寝なくても平気ですし」
……またオレ何かやっちゃいました?
「でも……いいですね、それ……貴方を腕の中に閉じ込めて眠りにつけるなんて……夢みたいです」
ああ……グレンの中で決定事項になっちゃってるよ……。あと閉じ込めるって言い方怖いからね? 気をつけて??
◇◇◇
携帯食と水だけの簡単な夕食を終え、狭い穴の中に二人。
体格の都合上(オレはもうちょっと肩幅とかあったと思うけど、ベルンハルトはオレよりも細いのがなんか嫌。)当然のようにオレが抱きかかえられる側なわけだが……。
背中にはずっとグレンの体温があって……『物語』どおり、鼓動が聞こえてきそうだ。
ひぃ…………相手が男ってわかってても無理!!!
こんな経験ないんだもん……。前世でも母親にしか抱きしめられたことないし!!!
落ち着くんだ……『素数』を数えて落ち着くんだ……。
「ベル、寒くありませんか」
「……大丈夫」
よーし落ち着いた。落ち着いたぞ~。
ちなみに、グレンが魔法で保温的なものをしてくれてるので、洞窟内は広さ以外は案外快適だ。
……あれ?? その魔法あったらオレ、外で寝ても死ななかったよね?
こいつ本当にオレが言うまでは一人で寝かせてくれる気あったのか……? 疑わしくなってきたな。
◇◇◇
「なぁ……グレン。お前、この旅が終わったらどうする気だ」
保温魔法と人肌とで心地よくまどろみながら問いかける。
胸板に頭を預けて、手慰みにグレンの耳元で揺れるピアスを弾いた。
――グレンは、ずっとオレの傍にいると言ったが……きっとそれは、今だけの約束だ。
設定が変わって、『物語』が少しズレてはきているが――グレンは、近いうちに【皇帝】のスキルを覚醒させる。
何故だかわからないが、オレにはその確信があった。
そして、彼が皇帝になった後は……もう、今日みたいにオレの手を引いて歩くことはないだろう。
「どう、とは?」
「冒険者続けるのか?……お前なら、“元勇者パーティーのメンバー“なんて肩書きなしでも引く手数多だろ」
対して、オレはどうだろう。
このまま勇者を辞めれば、“無能勇者“になって死ぬ運命は避けられるかもしれない。
でも、その先は?
ベルンハルトの人生は本来、十八年で終わる。その後のことは作者にだってわからない。
あ~~!!!
こんなことなら「悪い勇者も改心して主人公に謝罪して、その後は平凡な冒険者として主人公を尊敬しながら暮らしましたとさ」チャンチャンッ♪
……みたいな設定にしとけばよかった。
ベルンハルトにももう少し温情を、と引いてた叔父さんの助言は正しい。
いつどこで誰に転生するかわからないんだから、悪役にだってハッピーエンドへの道は残しておくべきだったんだ。
「……ベルンハルトさん。貴方は、どうするつもりなんですか?」
「オレは……勇者の称号も失ったら、多分冒険者として生きていくのは難しいし……家に戻っても、もう後継者じゃないから……どこかの家の令嬢と政略結婚でもすることになるんじゃないか」
はぁ……。
転生前のオレは、もう大学も決まって(体育以外の成績は優秀だったから推薦入学で余裕だった)進路のことは深く考えずにすむターンに入ってたのに……。
なんで異世界転生してからの方が進路に悩まないといけないんだ……。
ベルンハルト~~お前さぁ……!
「後継者から外すね!」って父親に言われたからって、「はいそうですか」ってあっさり納得してんじゃねぇよ!!!
自分と彼とは今や同一の存在なのだから、こんな恨み言に意味はない。
それに、父親の言葉に逆らわなかった彼の気持ちは理解できる。――そういう設定(後継者から外される事に納得している)にしたのはオレだから当然なんだけど。
ベルンハルトの父、ブルーノ・ミルザム伯爵。ミルザム伯爵領を治める領主である彼は、ベルンハルト以上に傲慢で嫌な男なのだ。
オレの“父親“という生き物に対する偏見を煮詰めて固めたみたいな存在だ。
――オレの父親は、母を妊娠させた後、病弱な彼女を捨てて失踪した。
その結果オレは母の親族から忌み子として扱われていたのだ。
まあ、別にそれはいい。
お母さんが「蓮のこと悪く言う奴らとこれ以上関わる気ないし」と、オレのために叔父さん以外との縁を切ってくれたので、そこにはこだわってない。
ただ。オレにとって“父親“というものはずっと――無責任で、怖くて……そういう嫌悪の対象であり続けた。
例によって作者の知らないことは描写できないので、『追放皇帝』には子への愛情に溢れた素晴らしい父親なんぞは登場しない。
グレンの父も、ベルンハルトの父とは違う方向性の無関心系クズだ。
ともかく――。
ベルンハルトは、父という存在との対話を諦めていたので、彼の言葉に一切の反論なく従った。
家を出れてラッキーぐらいに思ってたはずだ(そこまでは細かく書いてないけど多分)。
「……いいんですか、それで」
眠い中、思考をぐるぐる回してたせいで一瞬なにを訊かれてるのかわからなかった。
ん? ああ、政略結婚の話か。
「うーん……まあ、相手によるかな……」
アイリちゃんほど完璧な女の子じゃないにしても……ああ、そうだ。
「エステル、とかなら……」
四話で登場する第二ヒロイン、エステル・シャウラ。彼女との結婚ならオレの方は大歓迎だ。
エステルはベルンハルトの従兄妹。
彼女の双子の弟、ロニーはベルンハルトの代わりに後継者になるべくミルザム家の養子になった。
……ブルーノが、もうじき昔、グレンとベルンハルトの交わした〈契約〉の影響で死ぬはずだから、もう実質ロニーが当主と言っても過言ではないな。
「エステル、って……エステル・シャウラ? 貴方のいとこですよね」
「うん」
グレンと結ばれるのはアイリちゃんだから、エステルは負けヒロインなんだけど……可愛いんだよねぇ……。
年齢は一つ下の十七歳で、アイリちゃんよりも更に小柄な妹系。
彼女はどちらかといえば故郷を助けてくれたグレンを慕って旅に同行する感じだから、負けヒロインと呼ぶには語弊があるか。
――なんか今、変な感じしたな。
えー……うーん……エステルとの出会いは……。
ベルンハルトの死を知ったグレンがミルザム領に行って……ロニーとエステルと会って……で、モンスターが襲ってきて……。
「……あ」
オレの故郷、モンスターに襲われるんだったわ。
178
あなたにおすすめの小説
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる