「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの

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第4章 モンスター襲来

第30話「ベルンハルトと偽物」

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「おはようございます、いい天気ですよ……ああ、眩しかったですか?」

 朝日よりお前が眩しいよ……。


 いつもきっちりと服を着込んでいるグレンにしては珍しく、上半身裸だ。ベッドに腰掛けカーテンを引きながら、オレに笑いかけてきてる。

 ……なんだこの稀によく見るシチュエーション。いわゆる朝チュン的な……。

「いや、大丈夫……っ」

 起きあがろうとしたら腰に鈍痛が走った。この痛みは……あーあー……なんか思い出してきた。

 
 ――オレの物になれ。
 ――いいなその顔……そそるぜ?

 とても自分の口から出たとは思えない、思いたくない攻め語録をな……!
 

「ああ……無理しないで。痛いでしょう? 昨日は……少し、激しかったので」

 まごうことなき朝チュンだわ。これ。
 ただし、攻められたのはオレ!!!

「グレン。昨日のこと忘れて」

「嫌です」

 即答すんな。頼むからもうちょっと考えてくれ。

「あのさ……どこまで、覚えてんの?」

「むしろ俺が訊きたいんですが……ベルは、どこまで覚えてるんですか?」

 質問を質問で返すな……。疑問文には疑問文で答えろと学校で……いや、もういいや。

「どこまで……」

 風呂に入った(泡風呂が楽しかった)。
 ジュースが美味しかった(いちご味)。
 セックスした(気持ちよかった)。

 あと、それから……。

 
 ――グレン……好き……。
 
 
「……っ、なにも! なにも覚えてない」

「へぇ……本当に?」

「うる、さい」

 身体中の熱が集まって燃えそうに熱い顔を見られたくなくて、腕で隠す。

「ほんとに、その……ん……っ!」

 その腕はすぐに剥がされて、上手いごまかしの言葉を紡げない唇は封じられてしまった。

「あ、グ……レン……」

「――俺は、嬉しかった」

 グレンは言葉とは裏腹に、酷く悲しそうにオレを見つめる。

「ベルが……俺を、好きだって。ねぇ……あの言葉は、嘘?」
 

 ――嘘じゃない。嘘じゃないよ。

 でもオレは、偽物だ。本物じゃない。お前がずっと好きだったベルンハルトじゃない。

 それでも、お前は。


「グレ――」

 考えなしに告げかけた言葉を飲み込むように、屋敷が大きな衝撃に包まれる。

「っ、これは……?」

 前に川で、バリアがダメージを受けたときと同じだ。

「……間が悪い。どうやら敵のお出ましのようです」

 グレンはオレを抱き寄せると、空を睨みつけた。

 いいなー……オレもそのセリフ言ってみたい。かっこいい。
 

「ああ……獲物が罠にかかったみたいだな」

 これも言ってみたかったからとりあえず言っとこ。
 いいよねぇ……敵のこと獲物って呼ぶの、“狩る側“って感じでさ。
 

 まあ……。

「この揺れいつ治まんの!!!??? バリア破るならさっさとしろよ!!!!」

 人の腕の中でぶるぶる震えながら言うもんじゃないんですけどね……!!
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