「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの

文字の大きさ
29 / 93
第4章 モンスター襲来

第29話「ベルンハルトと泡風呂」

しおりを挟む
 正義の味方になる気なんぞは更々ないが……オレはオレの安寧を守るため、ついでに伯爵領も守る。

 そんな決意を固めたものの、オレのやることは変わらない。

 グレンを生かす。死なせない。
 それだけだ。

 ……だって実際に色々やってくれるのはグレンだし。


 そんなわけで、オレは。


「まじで一緒に入んの?」

「いつ敵が襲ってくるかわからないんですよ? しかも裸で、一番無防備な状態で襲われたら……」

「あーわかった。わかったから離せって!」


 風呂に入ります!!!!



 ◇



「あー……生き返る……」

 広い風呂ってサイコー……。なんでこんな癒されるんだろうね。しかも泡風呂~foooo!!


 予想通り、伯爵家の浴槽は広かった。

 本邸ならもっと豪華だったのかな~。
 風呂入ってからこっちくればよかった。もったいないことしたなー。

「グレン。もしオレが死んだら風呂に沈めてくれ……多分生き返るから……」

 泡を手ですくってみる。薔薇の香りがした。

 食堂から適当に持ってきたジュースも飲んで、気分は完全にセレブだ。いや伯爵家のベルンハルト様なんで、正真正銘のお貴族様なんだけどね。

 優雅……もうオレここで暮らす……。
 
「生き返るわけないでしょう」

「あ? 冗談だし比喩だろ」

「……」

 そんな上機嫌なオレとは対照的に、グレンくんは機嫌が悪い。
 オレから距離をとってすみっこでじっとしている。
 
 いやまあ、銭湯並みに広い浴槽でくっついてるのも変なんだけどさ。一緒に入るって聞かなかった割になんなんだよ。

「……お前って、結構めんどくさいよな」

「貴方に言われたくない……」

 うわ、反論された。
 まじで機嫌悪いな。なんか怖……。

 でもこのままだともっとめんどそうだし、歩み寄ってやるか。
 
「オレは素直で純真だろうが」

「違いますけど?? ベルは素直じゃなくて歪んでるのが可愛いんです。……というか、近寄らないでもらえませんか」

 近づくと、グレンは更に壁際に身を寄せて、オレから離れようとする。

「いつもはお前からベタベタしてくるくせに。なに……やっぱ、嫌になったわけ?」

 苛立ちは途中から哀しみに変わって。彼の腕に伸ばそうとした手は空をきってお湯の中に沈む。

「そりゃ、そうだよな……」

「ちょ、ベル……? なんで泣いて……」

「役立たずだし、弱いし、ひねくれてるし、性格悪いし、それに、それに……」

 ああ。なんか涙が止まらない。
 さっきまであんなに楽しかったのに。

「ベル……」

「グレン、オレを抱けよ。それで……オレの物になれ」

 こんなオレからいつか絶対にグレンは離れていくんだ。それなら繋ぎ止めるために身体でもなんでも使ってやる。

 NTR寝取りったって、寝てから言えって話だもんな!!
 本物のベルンハルトが戻ってきても、グレンとセックスした回数でマウント取れるぐらいヤりまくろ!!!

 よーし。なんか一周まわって楽しい!!!

「ベル……っ、まって」

「なに、やなの?」

「嫌じゃないですけど……ベル、貴方なんでジュースで酔ってるんですか」

「はぁ? ジュースで酔うわけないだろ」

 手に持ったままのガラス瓶の中身を全て飲み干す。
 いちご味。甘い。うん、美味しい。

「あー……まあ確かに見た目はアルコールっぽいですけど……すごいな。雰囲気で酔ったのか。貴方、成人してもぜったいにお酒は飲まないでくださいね」

「ふーん……よくわかんないけど、ヤろうぜ……ほら、お前も勃ってる」

 グレンの下半身に手を伸ばせば、そのチンコはもう軽く……どころか結構大きくなってる。なんだ、やる気満々じゃんか。

「ああ、もう……っ後悔しても知りませんからね!」

「しねーよ。いいなその顔……そそるぜ?」


 
 ◇◇◇



 ――ん?

「ベル……っ、ベルンハルト……」

「あ、っ……な、なんではいって……」

 
 え、オレ風呂入ってただけなはずなのに――なんで尻にチンコ入ってんの???


「やっ……あ、だ……グレン……っ」

「はは、もう……やっぱり覚えてない。」

 グレンは突き上げるように腰を動かす。

「……っ、いっかい、いっかいやめ、あ……っ」

「さっきまで自分で腰振ってたのに? 大体、貴方のほうから襲ってきたんですよ」

 そんなことしてない、と反論したかったが……体勢的にそうかも。

 だってなんか、オレがグレンの上乗って、肩に手置いてるし。え、ほんとにオレが襲ったの??

「覚えてな、あっ……」

「なら思い出して。ほら、ここ……いっぱい、いじめたでしょう?」

「ひ、う……ッ……あ、やだ……そこ」

 肩に縋り付いて、下から奥を思いっきり貫かれる刺激に耐える。
 痛くない……痛くないんだけど……え、なんでなんで……気持ちいの??

 いつナカも開発されたんだ……!!??
 
 一回目の時はもうちょっと痛かったはず、なのに、なんでこんな乱暴にされても、感じれるように……っ!

「ば、まじで……いっか、い……ぬけ、ぬけって……あっ、う」

 必死に訴えても、内壁を擦り上げる動きは止まらない。それどころか、オレの身体もそれに応えるみたいにぎゅうぎゅうチンコを締め付ける始末だ。

 なんだこれ、なんだこれ……!!

「やだ、やだって……イく、お湯……汚れ……」

「もう散々イったあとです。それに、泡に紛れてわかりませんよ」

 そういう問題じゃねぇよばか!!!

 
「ん、う……」

「ベル……声、抑えないで」

「だ、って……響く……」

 広い風呂の中でお湯の跳ねる音と、オレの声とが反響して。恥ずかしい。
 もうやだ……なんでこうなってんの?

「俺以外、誰も聞いてませんよ」

「ン……っあ、お前、に……聞かれんのが」

 一番、恥ずかしい。だって……好きだし。

 いいよ。もう認めるよ。好きだよ!!!
 オレ、グレンくんのことだーいすき!!!!

 
「グレン……好き……」

 うわごとのように呟いた言葉は、彼の耳に届いたのだろうか。――できれば、聞かなかったことにしといてほしい。
 

 熱さに負けて意識が遠のいていく中、そんなことを考えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中

油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。 背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。 魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。 魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。 少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。 異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。 今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。 激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。 完結済みです。 7回BL大賞エントリーします。 表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

処理中です...