ー情報屋ー絶対中立は虹に染まる

とっくん

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第9話:気を取り直すのには意外と時間がかかる

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物音が鮮明に聞こえるかのごとく、静寂が我と中年の男、否、灰かぶりの情報屋の周囲を侵食している。

我も莫迦ではない。変装がバレた意味と、それを隠しもしなかったこと。

(……情報が筒抜けておるわ…。それに、それを知ってなおこの場に留まると言うことは、依頼の内容まで全てお見通しか……)

「…フッ、この狸め」

自然と笑みが溢れてしまった。本来なら警戒をしなければならないところを、我は気でも触れたか?

このまま思惑通りに事が進むのも面白くない、一つ仕掛けてみるか。

「正体がバレているのであれば仕方ない。なに、依頼内容は至ってシンプルでな、我の弱点を探ってほしいのだ」

「…弱点、ですか」

困っておる、困っておる!余裕の表情を崩せただけでも、冗談を言った甲斐があるというもの!

「いや、さっきの「分かりました」…」 

……今、なんと?我の言葉を遮ってなんと言ったのだ?

「では2日後、魔王城付近にて、私の攻撃をもって調査の開始としましょう」

待て待て待て!なぜそうなる!冗談であることは百も承知のはず!この者は魔王と死合おうとでも言うのか!いかん!当初の目的通り、ことを進めなければ!

「い、いや情報屋どの!無理にとは言わなんだ!我は本来別の用件でだな……」

客観的に見てもアタフタしていたが、まさかこんな形で煽られるとは思わなんだ。

「まずは、百面相な所が弱点ですね。もしかして、戦うのが怖いとか?」

あやつは笑ってはいない、嘲笑っておるのだ。我の中で、何かが音を立てて切れた気がした。

「上等じゃボケェェ!2日後だか知らんが、剣でも魔法でもかかって来いやぁぁぁぁ!」 

あぁ、我、何やってんだろ………
―その翌日―


シャルアにとって、魔王様は絶対の存在。そんな当たり前なことを、毎朝起きるたびに考ている。そんな魔王様が、王都にある情報屋から帰ってきてはや1日。

「......はぁ」

事あるごとにため息をついておられる。

「どうしたッスか、魔王様?」

いつもの軽口で魔王様を安心させなければ。忠誠心ダダ漏れでは、重い女になってしまう。悟られるわけにはいかない。

「昨日、情報屋に行ってきた」

「みたいッスね、毒沼とか瘴気の対策方を聞きに行ったんでしたっけ」

そう尋ねた瞬間、魔王様はワナワナと震えだして耳を塞いだ。

「明日、戦うことになった。......情報屋と」

何がどうしてそうなったのか、それは分からない。でも、失敗に震える魔王様を見ていると、なんだか心の底で疼くものがある。

「そ......それは大変なことをしたッスね♡」

「な、なぜ笑うのだシャルアよ!」

ダメだ、ニヤけた顔が収まらない。忠誠心だ、忠誠心!心を落ち着かせるんだシャルア!
深く息を吸い、それをすべて吐き出すことで、心の安寧を取り戻すことに成功した。

「冗談抜きで、何でそんな事態に陥ったんスか?」

「うむ、情報屋は我が赴いた理由を知っていてな、故に悪戯心で我の弱点を知りたいといったのだ」

「それで?」

「......真に受けた情報屋と今日戦うことになった」

この魔王様は、見た目はゴツいおっさんなのに、そんな子供みたいな....最っ高っっっ!

「というか今日って、大丈夫なんスか?」

「心配はいらん、不意打ちからの開戦だと聞いているが、我に死角はない!」
魔王様はドンッと胸を打ちましたが、そもそも死角がないのであれば、こんな状況にならないんじゃ......。私はこの思いをそっと胸にしまった。

そんな会話の最中だった。

粘りつくほどに濃い殺気、どこから、発せられているのかは分からない。それほどまでに濃厚。一刻も早く、この場を去らなければ!

「魔王様......!」

叫んだ瞬間、魔王様は矢を掴んでいた。こめかみに向かっての一撃、その矢にはドロついた殺気が乗せられていた。

「そこか!」

矢が来た方角へ一直線に矢を返す。こうして、開戦の火ぶたは切って落とされた。
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