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第一話 第一側妃の暗殺未遂と侍女の死(1)
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「おい!ミサキ、しっかりしろ!!」
「大丈夫だ、絶対に助かるからな!」
私は、救急病院の廊下をストレッチャーで運ばれていた。
同僚たちが必死に呼びかけてくれている。
みんな、ありがとう。
でも、私はもうダメみたい。
意識がどんどん薄れていく。
その時、頭の中で声が聞こえた。
『あなたに次の人生を選ばせてあげましょう』
誰?
『あなたがこれから生まれ変わる世界を統べる者。人々からは女神と呼ばれています』
そうだな、今度の人生は平凡がいい。誰かに恨まれたりしない人生。
『わかりました。しかし、完全に望みどおりになるかは私でも保証できません。ただ、あなた自身を助けるスキルを一つ授けましょう。必要な時が来たら、前世の記憶とともにスキルも目覚めるでしょう』
そうして私は平凡な夫婦の平凡な娘として生まれ変わった。
父は斜陽貴族に仕える執事、母は侍女長。
お屋敷の一人娘ソフィアお嬢様とは二歳違いで、幼いころから遊び相手として姉妹のように育った。
野山を駆けまわったり、読み書きを習ったり、馬や鶏の世話をしたり、野菜を育てたり。
お嬢様が王太子に見初められ、第二側妃として王家に嫁ぐことになったときは、お付きの侍女として一緒に連れて行ってもらえることになった。
田舎とは全然違う華やかな世界にときめきながら毎日を過ごしていた。
そう、ほんの少し前までは。
女神の言う「必要な時」が来てしまったらしい。
18歳の誕生日に、私はすべてを思い出した。
前世での記憶が必要になるなんて、この穏やかな日々も終わるのだろうか。
夕暮れ時、私は同僚のハンナと主であるソフィア様の夕食を厨房から運んでいた。
「いやあああああ!誰かぁ!誰か、助けて!!!」
絹を裂くような女性の悲鳴と助けを呼ぶ声が聞こえた。
第一側妃のグレース様の部屋からだ。
食事をハンナに任せて走る。
「どうしたのですか?」
ドアの外で震えている侍女長が部屋の中を指さした。
毒見役の侍女リンダが仰向けに倒れていた。
「リンダ!?どうしたの?」
急いで駆け寄るが、すでに目に光はなかった。
首を触り、脈を診る。
もう、事切れていた。
「なんてこと……」
のどには搔きむしった跡があり、口の周りは吐瀉物で汚れていた。
皿は落ちて割れ破片が飛び散り、ナフキンやカトラリーが散らばっている。
遺体のそばでガタガタ震える年若い侍女に尋ねた。
「食べてどのくらいでこうなりましたか?」
「ひ、一口食べてすぐに吐き出して、倒れました」
「苦しそうにしていました?」
「は、はい。息が吸えないみたいで」
「痙攣は?」
「ええと、していました」
毒物が混入されていたのはスープのようだが、見た感じ変な色ではないし、においもしなかった。
この症状で考えられる毒は……。
「そこで何をしている!遺体に触るな!」
紺色の騎士服の男性に大声で咎められた。
前に一度、凱旋パレードで見たことがある。たしか、陸軍の騎士だ。
戦場で多大な武功を立てたというだけでなく、容姿も素晴らしく良いことから、宮中の女性たちに大変人気らしい。
鋭い目で睨みつけられて、仕方なく私は部屋を出た。
騎士は連れてきた部下と一緒に現場を調べ始めた。
「大丈夫だ、絶対に助かるからな!」
私は、救急病院の廊下をストレッチャーで運ばれていた。
同僚たちが必死に呼びかけてくれている。
みんな、ありがとう。
でも、私はもうダメみたい。
意識がどんどん薄れていく。
その時、頭の中で声が聞こえた。
『あなたに次の人生を選ばせてあげましょう』
誰?
『あなたがこれから生まれ変わる世界を統べる者。人々からは女神と呼ばれています』
そうだな、今度の人生は平凡がいい。誰かに恨まれたりしない人生。
『わかりました。しかし、完全に望みどおりになるかは私でも保証できません。ただ、あなた自身を助けるスキルを一つ授けましょう。必要な時が来たら、前世の記憶とともにスキルも目覚めるでしょう』
そうして私は平凡な夫婦の平凡な娘として生まれ変わった。
父は斜陽貴族に仕える執事、母は侍女長。
お屋敷の一人娘ソフィアお嬢様とは二歳違いで、幼いころから遊び相手として姉妹のように育った。
野山を駆けまわったり、読み書きを習ったり、馬や鶏の世話をしたり、野菜を育てたり。
お嬢様が王太子に見初められ、第二側妃として王家に嫁ぐことになったときは、お付きの侍女として一緒に連れて行ってもらえることになった。
田舎とは全然違う華やかな世界にときめきながら毎日を過ごしていた。
そう、ほんの少し前までは。
女神の言う「必要な時」が来てしまったらしい。
18歳の誕生日に、私はすべてを思い出した。
前世での記憶が必要になるなんて、この穏やかな日々も終わるのだろうか。
夕暮れ時、私は同僚のハンナと主であるソフィア様の夕食を厨房から運んでいた。
「いやあああああ!誰かぁ!誰か、助けて!!!」
絹を裂くような女性の悲鳴と助けを呼ぶ声が聞こえた。
第一側妃のグレース様の部屋からだ。
食事をハンナに任せて走る。
「どうしたのですか?」
ドアの外で震えている侍女長が部屋の中を指さした。
毒見役の侍女リンダが仰向けに倒れていた。
「リンダ!?どうしたの?」
急いで駆け寄るが、すでに目に光はなかった。
首を触り、脈を診る。
もう、事切れていた。
「なんてこと……」
のどには搔きむしった跡があり、口の周りは吐瀉物で汚れていた。
皿は落ちて割れ破片が飛び散り、ナフキンやカトラリーが散らばっている。
遺体のそばでガタガタ震える年若い侍女に尋ねた。
「食べてどのくらいでこうなりましたか?」
「ひ、一口食べてすぐに吐き出して、倒れました」
「苦しそうにしていました?」
「は、はい。息が吸えないみたいで」
「痙攣は?」
「ええと、していました」
毒物が混入されていたのはスープのようだが、見た感じ変な色ではないし、においもしなかった。
この症状で考えられる毒は……。
「そこで何をしている!遺体に触るな!」
紺色の騎士服の男性に大声で咎められた。
前に一度、凱旋パレードで見たことがある。たしか、陸軍の騎士だ。
戦場で多大な武功を立てたというだけでなく、容姿も素晴らしく良いことから、宮中の女性たちに大変人気らしい。
鋭い目で睨みつけられて、仕方なく私は部屋を出た。
騎士は連れてきた部下と一緒に現場を調べ始めた。
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